放送部員には放送部員の意地がありゅっ!?


<オープニング>


「いいか我が放送部のルーキーよ、よく聞け! 放送局員に必要なのは、一に練習二に活舌、三四がなくて五に技術だ!」
「はい、部長!」
「アメンボ赤いなあいうえお!」
「アメンボ赤いなあいうえお!」
「柿の木来たからかきくけこ!」
「柿の木来たかりゃっ……きゃきくけこ!」
 あ、噛んだ。
「いかんなルーキー! そんなことでは全国放送コンテストの大舞台、あのステージには立てんのだよ!」
『そうだそうだ、あの舞台に立てるのは、真の活舌猛者のみ!!』
「「……誰!?」」
 振り向いた二人の目に映ったのは、でかいアクセント辞典を持ったでかい学生。
 ぼか、ぐしゃ、と鈍い音。放送室が、血に染まる。
『私のたわしはわしわし沸かしてワシに渡した! 竹垣に竹立てかけたかったから竹立てかけた!』
 後には、活舌練習課題を叫ぶ地縛霊だけが残った。

「青い家に青々と相生の松、生麦生米生卵……」
 放送室の椅子に座り、一心に呟いていた長谷川・千春(高校生運命予報士・bn0018)が、ひょいと顔を上げた。
「あ、集まってくれたね! それじゃ、今回の事件の説明をするよ!」

 今回地縛霊が現れたのは、とある高校の放送室。
「なんでもずいぶん昔に放送部は廃部になったらしくて、職員室でも校内放送ができるから、ずっと使われていなかったらしくてね。けど、新しく放送部が作られたらしいんだ!」
 今のところ部員は二人のみ。けれど、放送活動を盛り上げていこうと意気込んでいるらしい。
「けど、放送室に地縛霊が現れちゃって、このままだと遠くないうちに殺されちゃうの。その前に、地縛霊を退治しちゃってほしいんだ!」
 地縛霊が出現するには条件があるため、今はまだ被害は出ていない。
「地縛霊は、言葉を『噛む』……つまり、言い損ねたり、言ってる途中に舌を噛んだりすると現れるよ。わざとやってもいいけど、早口言葉なんかをみんなで言ったりしたら、多分誰か噛むよね!」
 現れるのは、地縛霊が四体。
「一人はマイクを持った女の子。体力が結構高くて……呼び出し放送風のアナウンスで、呼ばれた人を怒らせて自分のところに呼び寄せるんだ」
 基本的には一人を呼び寄せるだけだが、たまに全員を一斉に呼び出すので注意が必要だ。
「二人目は、本を持った男の子。本を朗読して、同時に自分の味方の回復と、敵への攻撃をするんだよ!」
 範囲は広く、戦場となるであろう放送室全体に届く。
「三人目は、ミキサー盤っていう機材を持った女の子だよ」
 こんなのなんだけど、と千春が、放送室においてあった音量調節用らしき機械を指し示す。それなりに、でかい。
「狙ったところで大きな音を爆発させたり、わざと音をハウリングさせてみんなをマヒさせたり。耳に痛い攻撃をしてくるよ!」
 耳が聞こえなくなったりするわけではないが、地味に嫌だ。
「最後は、大柄でマッチョな男の子。大きなアクセント辞典を持っていて、それで近くにいるみんなを殴ったり、投げたり、戦場中に紙をばら撒いたり。ダメージも体力も大きめだよ!」
 文化系なのに、何だか肉弾派。
「それと全員、近づいてきた相手に、手に持ったもので殴りかかることもあるよ。あと、戦闘中に言葉を噛んだりしたら、全員すごい勢いでその人狙ってくるから、気をつけてね!」
 あとは、と千春は学校の制服を渡しながら付け加える。
「学校自体の警備は薄いらしいから、制服を着ていけば玄関は通れるんだけど……放課後だと放送部の二人がいるから、うまく連れ出してあげてほしいな。一度連れ出しちゃえば、戦闘の間は戻ってこないと思うから!」

「あ、それとこれはできればでいいんだけど……放送室に、あまり傷を付けないように戦ってほしいんだ。せっかくできた放送部、機材が壊れて潰れちゃうのはかわいそうだからね。地縛霊たちは放送室に傷をつけるようには戦わないから、みんなが気をつけてくれれば大丈夫だから!」
 お願いね、と千春は皆に手を合わせる。
「いろいろ考えることはあるけど、みんななら大丈夫。頑張って来てね!」
 そう言って、千春は能力者たちを送り出した。

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参加者
風見・莱花(高雅なる姫君・b00523)
藤咲・紘(過去の過ちを償い続けし声人・b21314)
舛花・深緋(ブルズアイ・b27553)
汐見・倭(霧は苦手・b48743)
デュオン・ウィンフォール(ガードポイント・b51310)
志水・みゆ(偽りを歌う光・b53832)
瀬場・直哉(セバスチャン・b57509)
御堂・常夜(剣の舞と籠の小鳥・b67735)



<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

風見・莱花(高雅なる姫君・b00523)
希望と夢で輝いている2人の為にも、頑張ってゴーストを退治するわ

●侵入

「久々に制服を着るわ。依頼の為だけど懐かしい気分になるわね」

制服着用で学校へ入り、まずは深緋ちゃんに放送部の2人を連れ出してもらう。その間、放送室近くの目立たない場所で待機

●準備

放送室へ入り、動かせそうな機材を戦闘の邪魔にならない場所へどかしておく。もし、放送室が2部屋に分かれている場合は仕切り扉もあけておく。準備が整ったらイグニッションし噛み役のデュオン君に言葉を噛んで貰い、ゴーストとの戦闘開始

●戦闘

回復役となる為、皆の後衛に立つ。BS回復手段がない為、なるべく短時間で決着付けられるように戦う。回復役に重点を置くが、攻撃をする場合は放送室の機材を巻き込んで攻撃しない様に、注意しながら狙いを定める

回復はゴーストの攻撃を食らった人を優先的に回復するが、噛んで集中攻撃を食らった人へは集中的に回復を行う

回復の必要性がない場合は光の槍攻で攻撃。優先順位は、BS攻撃を仕掛けてくる、ミキサー盤の女の子→マイクの女の子→課題本の男の子→アクセント辞典の男の子の順番。放送室はあまり広くないと予測し、混戦しないよう後衛から行動

●戦闘終了後

機材を元に戻して、戦闘で傷つけたりしてしまった部分があれば出来る限りなおしておく

「この放送室には、あの2人の夢が詰まっているのよ。でも、貴方達が生まれ変わったら、楽しく放送室で活動出来るといいわね」

藤咲・紘(過去の過ちを償い続けし声人・b21314)
【心情】
噛むのも愛嬌だと思うけどな
練習の内はたくさん噛んだ方が良いと思うし…
それに最初から噛まずに出来るなら苦労はないよ
【侵入】
千春ちゃんが用意してくれた制服を着用
卒業してから制服を着る事になるとは思わなかったなと思いつつ、怪しまれない様に行動する
深緋ちゃんが合図を出すまでは、近くの物陰にいる
それから放送室へ入り、皆で手分けして動かせそうな機材はどかす
準備が出来たら噛み役が噛む
【戦闘】
攻撃の優先順位は技術→アナウンス→朗読→指導
前衛で一応回復手としても動くつもり
噛んで地縛霊が発生後、直ぐ様二手に別れ戦闘開始
倒す優先度の高い地縛霊の側に配置する様にする
仮に2部屋に場合は間の扉を忘れずに開けて、どちらに出てきても良い様に二部屋に分かれる。一部屋にしか出てこなかったら出現した方に行き、扉は閉める
積極的にアビリティを使用し、出来るだけ短期で終わらせる様に頑張るよ
ギンギンパワーZは自己強化としては使用せず、周り・又は自分の防具HPを割ったら使用する
回復を使う際は過剰回復を避ける為に声を掛け合って行う
機材を傷つけない様に細心の注意を払う事も忘れずに
【撤退条件】
味方の3人以上の戦闘不能、若しくは回復アビの枯渇。ただし勝てそうな状況はそのまま押し切る
【戦闘後】
戦いが終わったら動かした機材を元の場所に戻す
少ない人数だからこそ、きっと大切に使って貰えるよ
また新しくやるのは勇気のいる事だから応援したいな

舛花・深緋(ブルズアイ・b27553)
心情>
噛むと怒る、地縛霊…
初依頼の緊張とか、それ以前に早口言葉、は苦手です…

えと、赤巻き紙青巻き紙黄ぎゃきっ…あ。


準備>
用意された制服を着用し、お二人を部室から呼び出す為放送部の部室へ


ドアをノックし、失礼します。
「職員室の放送の機材の方の調子が悪い様で、先生から放送部の2人を呼んでくる様に、と言われたのですが…」
前を通り掛った所を頼まれてしまいまして。などとそんな当たり障りのない会話を交えつつ…

お二人を見送ったら合図をして、皆さんと部室へ

動かせそうな機材等は隅に寄せるなどし場を広く、被害を広げない様に


戦闘>
部室を傷付けない様に細心の注意を払って戦う

攻撃の優先順位は、技術>アナ>朗読>指導
噛み役の方が噛み、敵の気がそちらに引き付けられたらその方に一番近い敵に攻撃に変更

配置は後衛でフレイムキャノン奥義を使用し、アビ切れで射撃に変更

敵が回復手の常夜さん、みゆさんに接近した場合はそちらの援護へ

怒りを受け前に出てしまった場合は解除され次第配置に戻る

菫は前衛で優先順位に従って攻撃・HPが半分を切った時点で骨を拾うで回復する様に指示


事後>
お二人が帰ってくる前にてきぱきと機材をなるべく元あった位置に戻し、退散。

地縛霊さん達の分まで、あのお二人にはこれからの活動、頑張って欲しい、ですね…♪



私も見習って、滑舌、良くなる様にちょっと練習、してみましょう…


口調・呼称補足>
、や…が多め
菫(使役)
名前+さん

汐見・倭(霧は苦手・b48743)
口調
どこか皮肉っぽい。

呼称
基本は〜さん

行動

まず貰った学生服を着て目立たない様に
放送室へ。放送部員については他の人にまかせて、
中の物を動かせそうな物を選んで他の教室等へ移動させる。
全員揃って準備が終わったらデュオンと
離れるように放送室の機材のある方へ移動。
放送室を仕切る扉があるなら開けておく。


戦闘

攻撃優先順位
ミキサー盤>朗読>アナウンス>筋肉
回復アビ
HPが6割切ったら虎紋覚醒。

戦闘時配置(特に記述ない人がいたら)
俺の方に藤咲さん
デュオンの方に、真骨侍、瀬場さん
中衛に志水さん。
後衛に御堂君、風見さん、舛花さん
放送室の構造によって
中衛・後衛は入口付近(部屋一つ)
仕切り扉付近(部屋二つ)

初手、ミキサー盤持ち目指しつつ
虎紋覚醒。
その後優先順に従い瞬断撃。
機材を壊さないように気をつける。

噛む

ゴーストの位置を見てミキサー盤持ち近いか、
他に噛んだ人のHPを見て厳しいか、
後衛に向かいそうな場合は噛む。

戦闘後移動させた物を戻し、機材が壊れてないか
チェック。壊れていたら直せる物は直す。

撤退条件
味方の3人の戦闘不能
もしくは回復アビの枯渇
ただし勝てそうな場合はそのまま押し切る

デュオン・ウィンフォール(ガードポイント・b51310)
放送部員の自縛霊か・・・どのような未練があるにせよ、生ける者を殺して良い理由にはならないな。人命守るため、その行く手、阻まさせてもらう。

俺達は用意された学生服を着て目立たないように放送室へ行く。放送部員を引き離す方法は他の者に任せる。その手段が失敗した場合、倭(b48743)にブロッケンの魔物を使って追い払ってもらう。

放送室に着いたら戦闘をやり易くするため、机や椅子、機材など邪魔になる物を近くの教室などに移動させる。予め工具も持参する。機材をどかすのに必要になるかもしれない。多少怪しまれるかもしれないが、命あっての物種だ。

戦闘前の配置は俺と藤咲紘(b21314)、瀬場直哉(b57509)は出来るだけ他の味方と倭から離れた位置に待機。戦い難い部屋の隅には拠ら無い。戦闘開始は俺が噛むことから始まる。・・・早口言葉はよく噛んでしまうので、問題ない。

戦闘は雪だるまアーマー、白燐奏甲による自己強化後、ミキサー盤>朗読>アナウンス>筋肉の倒す優先順位で前に出て戦う。
倭とは敵が最後の1体になるまで出来るだけ離れて戦う。
味方のHPが残り少ない場合、後衛に敵が接近しそうな場合、噛みながら、自身のHPが減っていた場合は回復を行う。
近くの味方の誰かが半分以上HPが削れてた場合は半分を超えるまで白燐奏甲、自分には雪だるまアーマー、切れたら白燐奏甲を掛ける。最悪後衛にも掛ける。
優先することは味方の命、そして味方を守るための自分の命。

志水・みゆ(偽りを歌う光・b53832)
【心情】
廃部になった放送部に想いを残しているのかもしれないですね。復活した放送部の部員さんに複雑な気持ちなのでしょうか。でも、新しい放送部の為にも退治させてもらいます。

【準備】
部員さんの連れ出しは舛花さんにお任せで。その後、放送部の機材を守る為にも、動かせる機材は片付けます。二部屋の場合スタジオと機材室の扉は開けておきます。

【配置】
回復役は一部屋の場合は入口前に、二部屋の場合は部屋の仕切り扉近くにポジションをとります。私はなるべく御堂君から離れない様に。

【戦闘】
戦闘開始直後にヒュプノヴォイス奥義で敵を眠らせます。
「滑舌も大切ですけれど、発声練習も大切なんですよ?」
その後はヒーリングヴォイス改で回復。回復タイミングは全体攻撃を受けた直後と、仲間の半数以上が80%以上HPを失っている状態で。
それ以外の時はヒュプノヴォイス奥義で敵を眠らせ、光の槍奥義、アビ切れの場合、近接した敵は通常神秘攻撃。
特にBS回復手の御堂君は、出来るだけ敵に接触させないよう注意して敵に応戦します。
とにかく全員の回復を優先に。

【戦闘後】
片付けた機材を戻したり、戦闘で壊れた機材がありましたら、直せるものはそれを直します。
「自縛霊さん達は、放送部が廃部になったのが悲しかったんでしょうね。でも、これで新しい放送部が安心して活動できますね」
昔の想いに祈りを、新しい活動に祝いを。

【補足】
呼び方は基本、名字+さん。御堂君のみ+君。

瀬場・直哉(セバスチャン・b57509)
◆心情
執事足る者、主人に正しい情報をお伝えする為に、発音は常に正確でなくてはなりませぬ。
そう言う意味では、放送の方々とも通じる所があるのかもしれませんな。

◆戦闘
呼び出しはお任せして、瀬場は出現したゴーストに対応致しますぞ。
まず先に、ミキサー盤の少女に近付いて、龍尾脚で攻撃致します。
「まずは、その危険な物をしまって頂きますぞ!」

その後、連携の有無に関わらずライカンスロープ(以降ライカン)で強化致します。
この際にデュオン様が発言を噛んでおらず敵を引きつけていなかったり、引きつけてはいても無抵抗なようでしたら、瀬場が噛んで引きつけましょう。
また、デュオン様や倭様が引きつけている場合に、回復が追いつかないようでしたら同様に瀬場が引きつけますぞ。
「むぅ…やむを得ませんな。皆様のお相手は瀬場が…(ちょっとためらいつつ)瀬場が致しましゅじょ!」

敵の攻撃を引きつける事になった場合は、ライカンでの回復を優先して行ないます。
余裕がある場合は龍尾脚>ライカンの連携を狙ってみましょう。

ミキサー盤の少女を倒したら、次はマイクの少女ですぞ。
優先順位はミキサー>マイク>朗読>指導の順で攻撃致します。
龍尾脚が尽きましたら、通常攻撃に切り替えます。
攻撃の際は、極力機材に傷などを付けぬように注意致します。

◆戦闘後
演技とはいえ、やはり発言を噛むのはよろしくありませんな。
今後ますます気をつける事に致しますぞ!

呼称:名前+様

御堂・常夜(剣の舞と籠の小鳥・b67735)
+下準備
銀誓館転入前の小学校の制服着用

+進入
他の仲間達と一緒に。
見咎められたら学校見学と伝える。
絶対一人で行動しない。

+連れ出し〜放送室迄
連れ出しに参加しない仲間の方と同行、余り目立たぬよう移動。
見咎められたら進入時と同じ理由で返答。
放送室に皆揃ったら動かせる機材はお片付け。
片付け終わって、後は噛むだけになったらイグニッション!
イグニッション中表地黒・裏地白、模様は蔦の狩衣、下は深緑

+戦闘
前衛…デュオン様 倭様 菫様 直哉様 紘様
回復手…志水様 風見様 僕
攻撃後衛…舛花様 風見様
僕は回復・後衛として、入口付近配置。万が一、二部屋に出たら仕切る扉を開けてその付近に配置。
怒りで移動した場合、解けたら戻る。

敵出現確認直後ダンシングワールド。
BS回復は僕だけ。
初依頼で凄くプレッシャーだけど、それだけ頑張らないといけないんだ…。
回復ボーダーは深緋様と僕は100、他は200の被ダメ。
優先は基本、重傷前衛(接敵)>BS有ボーダー越回復後衛>BS有ボーダー越前衛>ボーダー越(回復後衛>前衛>他)>BSのみ
BSは麻痺>怒り。
直哉様が噛み役をなされてるときは優先。
回復対象が無いときに接敵された時は通常で応戦。
ボーダー越えもBS持ちも接敵も無ければダンシングワールド。

「僕の想いを…力にして!」
「傷付けあいなんかより…一緒に踊ろう?」

口調はステシに準拠。
戦いが終わったら、機材は全部元に戻して帰ります。
撤退条件は他の仲間に準拠。




<リプレイ>

●地縛霊、あわせてぴょこぴょこ……?
「噛むと怒る、地縛霊……えと、赤巻紙青巻紙黄ぎゃきっ……あ」
 いきなり噛んだ舛花・深緋(ブルズアイ・b27553)に、皆が振り返る。
 思わず頬を赤らめる深緋。初依頼で緊張していることもあるけれど、それ以前に早口言葉はちょっと苦手。
「噛むのも愛嬌だと思うけどな。練習の内はたくさん噛んだほうが良いと思うし……それに最初から噛まずに出来るなら苦労はないよ」
 藤咲・紘(過去の過ちを償い続けし声人・b21314)がすかさずフォロー。隣で御堂・常夜(剣の舞と籠の小鳥・b67735)も、初依頼に緊張した面持ちを浮かべながらもうんうんと頷く。
「執事たるもの、主人に正しい情報をお伝えする為に、発音は常に正確でなくてはなりませぬ。そう言う意味では、放送の方々とも通じる所があるのかもしれませんな」
 瀬場・直哉(セバスチャン・b57509)が、誇らしげに言いながら放送室のドアを見やる。そこでは、彼にも負けぬ心意気を持った二人の少年が、練習を始めようとしているはずだ。
 二人が犠牲になる前に急がなければと、深緋が早足で放送室に向かう。
「失礼します」
 扉をそっと叩けば、すぐさま飛び出してくる二人の少年。
「あっ、はいっ!」
「何か御用ですか? 呼び出し放送ですか?」
 やる気満々といった様子で尋ねる二人に、深緋は「職員室の放送の機材の方の調子が悪い様で、先生から放送部の二人を呼んでくる様に、と言われたのですが……」と告げる。
「おおっ、仕事か!」
「仕事ですね、先輩! 伝えてくれてありがとうッス!」
 きらきらと瞳を輝かせて飛び出していく二人に、ちょっと申し訳なさそうに頭を下げて、深緋はさっと仲間たちに合図を送った。

「廃部になった放送部に想いを残しているのかもしれないですね。復活した放送部の部員さんに、複雑な気持ちなのでしょうか」
 パソコンやCDデッキをなるべく傷つかなさそうな場所によけながら、志水・みゆ(偽りを歌う光・b53832)がそっと呟く。
「放送部員の地縛霊か……どのような未練があるにせよ、生ける者を殺して良い理由にはならないな」
 固定されていたマイクスタンドを工具で外してよけながら、デュオン・ウィンフォール(ガードポイント・b51310)が言う。隣で山積みのビデオを片付けていた汐見・倭(霧は苦手・b48743)が、静かに頷いた。
「希望と夢で輝いている2人の為にも、頑張ってゴーストを退治しましょ」
 最年長らしい風見・莱花(高雅なる姫君・b00523)の言葉に、全員がしっかりと頷く。
 やがて、あまり広くない放送室にもかなりの空間が出来上がって。
「それでは、行くぞ」
 配置を整えた仲間たちが頷き、武器を握るのを確認して、デュオンは口を開く。
「カエルぴょきょぽっ……」
 いきなり噛んだ。
 早口言葉は良く噛むと言うだけあった。
 一瞬、放送室が静まる。
 次の瞬間、
『いかんなぁー、そんな活舌では放送の星にはなれん! カエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ、合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ!』
 素晴らしく流暢な早口言葉と同時に、巨大なアクセント辞典が唸りを上げて振り下ろされる!
「くっ……!」
 何とか武器で受け止めたデュオンに、右から大きなマイクが、左から文庫本が、さらにはミキサー盤からの轟音が襲い掛かる。
 かなりの傷を受けたデュオンを助けんと、能力者たちはいっせいに動き出した。

●隣の能力者は、よく噛む能力者?
「今治すわね!」
「デュオンさん、いくよっ!」
 莱花がヤドリギの祝福を、紘がギンギンパワーZを、デュオンへと投げかける。
「ふん、無茶しやがって……」
 倭が皮肉っぽくデュオンにささやき、虎紋を呼び覚ましながらミキサー盤の地縛霊へと向かう。
「まず先に、その危険な物をしまって頂きますぞ!」
 直哉の龍尾脚が、ミキサー盤の地縛霊へと振り下ろされる。次は魔狼の力を使おうと、直哉はそこで足を止めて地縛霊と対峙した。
「菫、行きましょ……!」
 深緋がフレイムキャノンを撃てば、真スカルサムライの菫も応えるかのように同じ地縛霊に近づき、素早い斬撃を放つ。
 デュオンが雪だるまアーマーを使いながら、倭たちがいる戦線から僅かに離れる。退治したのは、文庫本を持つ地縛霊。
「滑舌も大切ですけれど、発声練習も大切なんですよ?」
 高らかに奏でられるみゆのヒュプノヴォイスに、ミキサー盤とマイクの地縛霊が膝を折る。
「傷つけあいなんかより……一緒に踊ろう?」
 常夜がさらに地縛霊たちを踊りへと誘う。文庫本の地縛霊が、それに誘われてステップを踏む。
 けれど、巨体を誇るアクセント辞典の地縛霊は、歌と踊りの誘惑に耐えた。
『まだまだ行くぞ! いいアナウンスはアクセントの確認から!』
 鋭い紙が、能力者たちを激しく斬り裂く。
 さらにミキサー盤の地縛霊が目を覚まし、高音域の音量を最大まで上げる!
 キィィィィィン、と耳障りな高音が鳴り響き、能力者たちの動きを止めた。急いでみゆが、歌をヒーリングヴォイスに変える。
 能力者たちの半数ほどがマヒを食らった状況に、常夜が唇を噛む。
(「マヒや怒りの回復が出来るのは、僕だけ。それだけ頑張らないといけないんだ……」)
 湧き上がるプレッシャーを抑え、常夜は必死に情熱を高める。
「風見様、今回復するね!」
 解き放たれたヘブンズパッションは、莱花をマヒからしっかりと解き放っていた。
「このていろかっ?」
 倭が瞬断撃を放ち、ミキサー盤の地縛霊の注意を引く。噛んだのはわざと。疑いようもなくわざと。
『はっはっは、練習がなってないなあぁ!』
 けれど地縛霊はそんなことは気にしない。アクセント辞典が凄まじい勢いで倭の頭を直撃する。
『いずれの御時にか……』
 デュオンに道を阻まれた文庫本の地縛霊は、さっと文庫本を開いて読み始める。
 その上手すぎる朗読は、地縛霊たちを勢いづかせ、能力者たちの体力を奪う。
 常夜の回復を受けてマヒから立ち直った莱花が、急いで倭にヤドリギの祝福をかける。
 しばし龍尾脚やフレイムキャノン、瞬断撃、クレセントファングが飛び交い、白燐蟲やヤドリギの祝福、ヘブンズパッションやヒーリングヴォイスが傷を癒す。
 ついでに早口言葉も飛び交う。
「坊主が上手にびょうびゅに……っ!」
『甘い!』
「東京特許きょきゃきょきゅっ……!」
『あと百回!』
「生麦にゃまごめ……」
『ほらほら舌の回転がなってないぞおぉっ!!』
 何だかいい加減皆が悔しくなってきた頃。
「これで……最後っ!」
 紘の放ったクレセントファングが、ミキサー盤ごと地縛霊を断ち割り、消滅させた。

 マヒ攻撃を放つ地縛霊は倒したものの、何度となく噛んでいたデュオンと倭の傷は深い。
 それを確認し、直哉は少し考えて。
「むぅ……やむを得ませんな」
 布槍を握り締め、一つ深呼吸して、直哉は覚悟を決めた男の顔で口を開いた。
「皆様のお相手は瀬場が…………瀬場が致しましゅじょ!」
 噛んだ台詞が、こんなにも格好良く聞こえたことはかつてなかっただろう。仲間を守るためだからこそ。
『どんな台詞も噛んだら台無しだぁっ!』
 そこのところがわかってない地縛霊の攻撃を、直哉はしっかりとその身と布槍で受け止める。さらにもう一体の地縛霊が、マイクを強く叩きつける。
 直哉の心意気に応えるかのように、ヤドリギの祝福が、ギンギンパワーが、ヘブンズパッションが直哉の身へと飛ぶ。デュオンと倭も、白燐蟲の力と虎紋の力でそれぞれ傷を癒す。
『彼女は答えない。けれど、その目ははっきりとそれを認めていた。彼女は……』
「確かに上手いですけど、こっちの歌も負けません」
 負けじとばかりに朗読が響けば、みゆがヒーリングヴォイスですぐさま傷を癒していく。
 菫が骨を拾い、体勢を整える。その後ろから、深緋のフレイムキャノンがマイクの地縛霊を撃ち抜く。さらに紘のクレセントファングが、地縛霊を抉った。
 かなりの痛手を受けながらも、地縛霊の少女はマイクを握りなおす。その目が捕らえたのは、倭!
『お知らせいたします。……今すぐ、放送室まで来てください!』
「この……っ!」
 こみ上げる怒りに、倭が電光剣を振るい発勁手袋をかざす。アビリティを使っていないとはいえ、攻撃は確実に地縛霊にダメージを与える。
 すぐさま常夜がヘブンズパッションを投げかけ、倭の怒りを解いていく。
「菫、合わせてね……っ」
 深緋の指示に菫が頷き、斬撃を与えた後僅かに横にそれる。その場所を、フレイムキャノンが撃ち抜く!
 その一撃が、マイクの地縛霊を消し飛ばした。

●新春シャンソン歌手により新春早々……じゃないけど戦闘終了っ!
「スモモもモモもモモもも……あ」
 デュオンが白燐奏甲を掛けながら噛もうと試み……思わず言いすぎる。
『覚えてないのも練習の足りない証拠ーっ!』
 これも噛むにカウントされるらしく、アクセント辞典を素晴らしい手首のスナップで投げつける地縛霊。さらに文庫本の角が、デュオンに襲い掛かる。
 それでも、最初の集中攻撃に比べれば、だいぶ楽になっていた。
「僕の想いを……力にして!」
 常夜が、デュオンにヘブンズパッションを解き放つ。倭が見えぬほどの速さで文庫本の地縛霊に斬りかかり、紘がクレセントファングで華麗に斬り裂く。
「みゆさん、合わせましょ!」
「わかりました、莱花さん!」
 みゆと莱花が頷き合い、同時に手を伸ばす。
 二本の光の槍が同時に生まれ――文庫本の地縛霊は双方向から貫かれて消えていった。

『まだまだ、あと百回行くぞ! だが喉を嗄らしたら許さん!』
 無茶を言いながら、最後に残った巨体の地縛霊が紙をばら撒く。
 けれどそのダメージは、みゆの歌ですぐさま癒されていく。
「人命守るため、その行く手、阻ませてもらう」
「……行くぞ」
 倭とデュオンが目と目を見合わせ、息の合ったタイミングで攻撃を叩き込む。
「もう、そろそろ……!」
 深緋のフレイムキャノンが、地縛霊に魔炎を与える。燃え上がったその体に、莱花の放った光の槍が突き刺さる。
「これで……終わりにしましょう!」
 直哉が地を蹴る。回転と共に、鋭くつま先が叩き込まれる。
『むぅ……まだまだ……活舌が……』
 アクセント辞典が地に落ちかけ――持ち主と共に、虚空に消える。
「演技とはいえ、やはり発言を噛むのはよろしくありませんな。今後ますます気をつけるように致しますぞ!」
 爽やかな執事スマイルと共に、直哉はそれを見送った。

 能力者たちが極力傷をつけないようにと気をつけたため、放送室に損害はなかった。
 二人が戻ってくる前にと、能力者たちは素早く機材を元に戻そうと動き出す。
「少ない人数だからこそ、きっと大切に使って貰えるよ。また新しくやるのは勇気のいる事だから応援したいな」
 デッキ類を戻しながら、紘が優しい顔で呟く。
「地縛霊さん達は、放送部が廃部になったのが悲しかったんでしょうね。でも、これで新しい放送部が安心して活動できますね」
「地縛霊さん達の分まで、あのお二人にはこれからの活動、頑張って欲しい、ですね……♪ 私も見習って、滑舌、良くなる様にちょっと練習、してみましょう……」
 コードやCDを戻しながら、みゆと深緋が笑顔で頷き合う。
「この放送室には、あの2人の夢が詰まっているのよ。でも、貴方達が生まれ変わったら、楽しく放送室で活動出来るといいわね」
 莱花の言葉に、常夜も「そうだね」と頷いて。
 倭が皮肉っぽく何か呟いて、デュオンにそっとたしなめられる。そんな光景も、無事に惨劇を阻止できたからこそ。
 確かな充実感に包まれて、能力者たちはそっと放送室を後にした。


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楽しい 笑える 泣ける カッコいい 怖すぎ
知 的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/10/15
得票数:楽しい7  笑える1  カッコいい1  ハートフル7 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
   あなたが購入した「2、3、4人ピンナップ」あるいは「2、3、4バトルピンナップ」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 マスターより許可を得たピンナップ作品は、このページのトップに展示されます。
   シナリオの参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。