≪市之瀬≫薄暗き闇を、射抜くもの


<オープニング>


 ――心当たりがあるのがひたすらヤだなぁ。

「……」
 その日、市之瀬の団長たる今市・直人(イマイチな男・b36897)はそう考えていた。
「「……」」
 現在、彼等は――そう、今そこには、他の団員も居たのだ――特殊空間にいる。
 薄暗い空間だ。
 カウンタやソファもあることを勘案すれば――まるで、場末のバーのようでさえある。
「……状況を、整理しましょう」
 源・類(零下の埋み火・b51181)の言葉が、響く。
 何かに耐えるような――実際、彼女は耐えていたのだが――重い声で、冷静な言葉が。
「私たちは、部室でダーツをしていた筈です」
「はい、それは間違いないっす。みんな集まって、まさに始めたばかりだったっすよ!」
「……そーだよねー」
 返ってくる快活な肯定は黒瀬・朱夏(深い常緑から吹く風・b22809)のソレ。
 そして、それに便乗した蚊の啼くような声は直人のものだ。
「……」

 そう、自分達はダーツをしていた。
 団長の、直人の持ってきた、ひゃっほう安く買えたよラッキー、というダーツセットで。
 なんだか禍々しいオーラを放っている気もするけどそこは気合だよね、というソレで!

「あ、あはは、どーしてそれがこんなことになったのかなー」
「……確か、私がダーツの真ん中に命中させた瞬間にこの空間に取り込まれたような気が」
「ぎく」
「全く忌々しい。まるで……そのダーツセットが原因で取り込まれたかのようだな、ん?」
「ぎくぎく」
 事実の指摘、続くのは舛花・深緋(ブルズアイ・b27553) と伊集院・帝(貴族・b62329)のものである。ああ、先程、結社内でも随一の実力を持つ深緋が的の真ん中に矢を当てたことは記憶に新しく、否定しがたい事実だった……。
 彼女の前の手番、中央のギリギリ外に矢を命中させた帝は、とにかくダーツが続行できない状況が気に入らないらしい。軽く鼻を鳴らし、鮮やかな茶の瞳で直人を見た。
「「……」」

 まあ、正直なところ。
 何が原因でこうなったのかは、良く分からない!
 本当に本当に、良く分からないぞっ!

「ごめんな劉君。折角遊びに来てもらったのに……」
「気にしないで椋! ゴーストを倒すのは仕事だシ、キミ達は心強い存在なんだカラ!」
「うわあああああ、瞬成君の善人振りが俺の罪悪感を増幅させるよごめんねー!?」
「直人、落ち着くネ! 偶々運が悪かっただけデ、キミは何も悪くないアルよ!」
「(――実はそこそこ嫌な予感がしてたとか絶対言えないなコレー!?)」
 さてさて、丁寧に劉・瞬成(高校生除霊建築士・bn0175)に詫びる風波・椋(悠久の黒・b43193)の言葉が直人の胸にざくざくと突き刺さっているところだが――まあ、何が原因かは不明なのだからそれは仕方ない! 分からないものは潔く無視しよう。
 それに、
『コワイ……ネェ』
『『タワシシカモラエネェエエエエエエエエエ!!!!』』
『オジョーサン、オレトアソバナイー?』
『『クルマナンカカエヤシネエエエエエエエエエエ!!!』』
 雑談しているわけにも行かない。
 何故なら既に、目の前には壮年のマスター風な男性やバーテンダー風の優男、何故か悲しそうにタワシタワシと連呼する二人の青年達――つまりは敵のゴーストが出現していたからだ!

「ったく、まあ仕方無いな……」
 面倒そうに嘆息する柊・刹那(冥府の使者・b40917)が、カードを持ち構える。
「皆、団長を睨んでいても仕方ないだろ」
「刹那くん!」
「――告発式は戦闘の後だ」
「刹那くん!?」
 紡ぐ言葉は正論。
 ソレと、泣きながら崩れ落ちる直人の姿を以って、皆は戦闘開始を意識する!
「……とりあえず、面倒事を……終わらせ、ましょう。油断は……しないように、ですね?」
「「応!」」
「――ええ。それじゃ、始めると……しましょうか……!」
 柔らかく微笑む冷泉・香夜(水面に映る優しき銀蝶・b47140)が一歩を踏み出せば。
 強い強い言葉と共に、仲間が続く。
 矜持が、あるのだろう。
 絆が、あるのだろう。
 それは―――強さだ。

『『オマエモタワシニシテヤロウカァアァアアア!!!』』
「とにかく瞬成くんも皆も頑張ろうねー!」
「「黙れー!!」」
 こうして。
 今回も適度に賑やかに、【市之瀬】の戦闘は始まったのであった。

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参加者
黒瀬・朱夏(深い常緑から吹く風・b22809)
舛花・深緋(ブルズアイ・b27553)
今市・直人(イマイチな男・b36897)
柊・刹那(冥府の使者・b40917)
風波・椋(悠久の黒・b43193)
冷泉・香夜(水面に映る優しき銀蝶・b47140)
源・類(零下の埋み火・b51181)
伊集院・帝(貴族・b62329)
NPC:劉・瞬成(高校生除霊建築士・bn0175)




<プレイング>

プレイングは1週間だけ公開されます。

黒瀬・朱夏(深い常緑から吹く風・b22809)
★呼び方
女子は下の名前+「さん」
男子は名字+「くん」(今市くんだけ平仮名「いまいちくん」)
先輩後輩関係なしっす。

★はじまり
いわくつきのダーツセットってわけっすね、そりゃ安いはずだね。
ま、さいっこうにポジティブに考えれば、
これ以上の犠牲者が出る前に、能力者の手に渡って良かったんじゃない?
んじゃ、いくっすか!

★戦闘
わたしは前衛で接近戦っすね。

最初に【魔弾の射手奥義】を使ってから、
風波くんとのコンビネーションで素早く前に出て、
前衛のみんなで手分けして、
タワシ(リビングデッドのこと)2人に集中攻撃っす!
わたしの攻撃は【クレセントファング奥義】、蹴りにすべてを賭けるっす!
当たり:「これで休みなさいっ!」
外れ:「むう、意外と速いねえ…」

タワシを両方撃破したら、バーテンダー、マスターの順番で、
おんなじように集中攻撃っす。

HPに防具分以上のダメージを受けたら、後ろに下がって回復お願いね。
「いてて…ごめん、ありがとでっす!」

魔氷:「さ…むいっす…」

魅了を受けて味方に攻撃してから、我に返ったら
「うっ、わたし、やっちゃった? ごめんごめんごめん!」

★そのあと
舛花さんの居候先のお家にみんなで遊びに行くよ。
ダーツ、やったことないんだけど、
舛花さんと伊集院くんに教わりながら、やってみる!
「なんか、緊張するっすね…当たるかな?」

あと、いまいちくんが舛花さんにふらちなことをしようとしたら蹴るっす。

舛花・深緋(ブルズアイ・b27553)
始まり>
「ナイスダーツ…です」
前の番の帝さんに声を掛け、ラインへ
姿勢をぐっと伸ばして一投。

ダブルブルに入ったのを喜んだのも束の間

ここ、は…?


戦闘>
何かもう、慣れてきた気が…
じーっと団長さんを見るのもそこそこに、皆さんとイグニッション

攻撃順は相談の通りに

「先ずは、えっと…たわしさんから」

・私が魅了のBSを受けてしまったら、私の指示でも皆さんを攻撃する様な事はしない
・HPが半分を切ったら骨を拾うで自己回復

この2点を菫と約束して、いってらっしゃい、と前衛の方々と一緒に前へ送り出します

後方からフレイムキャノン奥義を使用
「ダーツは…人に向けちゃいけませんよ!」
ああ、思わず大声が…

マスター(たわしたわしって…このバー、はどんな営業を…?)の範囲射撃対策で適度に皆さんと距離をとって。

生前、大好きだったものが、死後、人を傷つけるものになってしまうなんて悲しいです
この場所で…おやすみしてもらいましょう

菫に指示を飛ばしつつ自身も積極的に攻撃

「ちょっと熱いかも、ですが…我慢して下さいね?」


終り>
「あ、あの、もしよろしかったら、うちのダーツバーに、遊びに来ませんか…?」
そこで先程の続きでも、と皆さんに提案してみます

ボードは回りませんし、パジェロもたわしも出ませんが、今度こそまったりダーツ出来る筈です…♪

それに、団長さんの告発式諸々もあるみたいですしね?

口調・呼称補足>
、や…が多め
菫(使役)
団長さん&名前+さん

今市・直人(イマイチな男・b36897)
・目的
交戦規定はただ一つ、生き残れ!
いやマジでね、俺が生き延びれるか心配!

・意気込
取り敢えず戦闘は真面目にやろう
せめてそれぐらいしないとこれはマズイ
皆の目が口ほどにモノを言っている。これはマズイ!

・戦闘
初手はパラライズファンガスでバーテンを狙うよ
バーテンが麻痺ったら次はマスターだね
他の皆が集中して戦えるようにサポートするよ
俺が出来るのはきっとこれぐらい……あ、戦えって?
んじゃ、パラライズ切れとか、麻痺させる必要がないならー
森羅呼吸法で強化して、獣撃拳で攻撃です
皆と同じ標的でいいよね、集中攻撃だ!
チームワークっていいね!

壮年のマスターってセクシーでおじゃる…
俺もあんな…なりたいな

そこのお二人さん!
見るんだ、この床に書いた……書かれた俺の名前を!
タワシすら貰えない俺の勇姿を!
視聴者にはサインでいいとか言われる情けなさを!
下には下がいるんスよ…今、泣きたいのは俺の方だッ!

・その他
瞬成くん頑張ろうね
俺は反省していますよぴこぴこ

このダーツボードを買ったのは運命なんスって!
世界結界に導かれて。うん、世界結界なら仕方ないな
や、安かったんだ…店の人も教えてくれなかった!
誰も教えてくれなかったんだ!俺は悪くない!俺は悪くない!

とにかく今は深緋ちゃんの家でダーツを楽しもう
そうだそれがいい
歯ブラシとパジャマと下着の替えを用意していこう
そうだそれがいい

罪を憎んで人を憎まずさ
さあ、夕日に向かってダッシュだ!

柊・刹那(冥府の使者・b40917)
【心情】
直人の奴…こうなる事に気付いてたな…。
まぁ…俺も薄々嫌な予感はしていたが……とにかく直人の事は後回しだ、まずこの状況をどうにかしよう…。

【陣形】
前衛:柊、源、黒瀬、劉
後衛:冷泉、舛花、風波、今市、伊集院

【戦闘】
まずは敵に接近して旋剣の構えを取る。
戦闘は基本黒影剣とダークハンドを使って攻撃だな。
アビリティが切れたら通常攻撃に切り替える。

まず最初はタワシ(リビングデッド)2体から仕留めよう…。
…どうでも良いが…こいつらさっきからタワシタワシと…五月蝿いんだよ。

前衛組の俺たちがタワシを相手にしてる間は足止め担当の奴らにバーテンの足止めを任せる感じだな。
それと、前衛組はできる限り狙う相手をを統一させるようにする。

次の相手はバーテンだな……関係無いが…この面子で何か事に巻き込まれると何でこう…ふざけた空気になるんだ…。

残るはマスターか…後ろでこそこそと厄介な奴だったが…それも時間の問題だな…さっさと終わらせてやる。

HPが半分を切ったら旋剣の構えで回復、もし回復が追いつかなければ一旦後ろに下がって立て直す。

【告発式】
こっちは片付いた事だし…直人、今回の件で少し話がある。なぁに、心配するな……すぐに終わる。(にっこりと笑いながら直人を手招く)

……さて、ダーツの続きは深緋の所のダーツバーで仕切り直すようだし、今度は気兼ね無く遊べそうだな…。

【口調】
基本名前呼び捨て。
冷静で落ち着いた口調。

風波・椋(悠久の黒・b43193)
全く今市くんは…。まぁ特殊空間入っちゃったのもは仕方ないか。
折角劉くんにも来てもらってるんだし、サクッと片付けてみんなでダーツ楽しみたいね。

【作戦】
犠牲者のリビングデッド(以下タワシA・B)→バーテンダー→マスター、の順で倒します。
マスターのアビは3種とも面倒なのでタワシA・B、
バーテンダーと交戦中はBSで足止めを狙います。

マスターのトリプルの被害を減らすために極力大人数で固まらないように。
あと今回の扇の要とも言える香夜へ攻撃が通るのも極力避けたいところ。

【戦闘】
僕は後衛だね。
まず初手は香夜にギンギンパワーZ。
「んじゃバックアップよろしくね?」

次はパラノイアペーパーか、必要ならその為の位置取りかな。
後衛とは言ったもののパラペの射程圏内に敵全員を捉えられる程度には前に出ないと。
ただし前衛より前に出ないと全員に届かないなら諦めて2〜3でも仕掛けます。

パラペが切れたら自分にギンギン。スピードスケッチに移行。
空中にナイフで、しかも二刀でスケッチ…。
きっとイマイチなイラストが出来るに違いない。

回復が追いつかない人には微量ながらギンギンを。

HP低いし禁癒もあるし防御や回避にも十分に気を配りたいところ。

【戦闘後】
告発式なんて話もあったけど舛花さんの居候先で
ダーツの仕切り直しかな?僕やったことないんだよねぇ。
今市くんはなんもやらかさないよね?(にこにこ)

【呼び方】
名字+くん、さん、先輩
例外:香夜

冷泉・香夜(水面に映る優しき銀蝶・b47140)
◆心情
何で…タワシさん、なんでしょう…か(きょと)?

それに、自縛霊さん…
ダーツの腕、すごいです…ね
魅了されるの…わかる気が、するです…
…Σっ皆が、魅了されたら、今市くん…
モテモテに…なりそう、です…

…あと、バーテンさんから、類さん…守らないと…(ぐっ
「おいたは、ダメです…よ?」

◆戦闘
僕は後衛組です
(なるべくマスターの射程範囲外+
赦しの舞・祖霊降臨が仲間に届く位置)

初手にバーテンへ茨奥義を使用し
拘束を試みます
「少しの間、じっと…していて、ください…ね」

BS状態の方がいる場合
優先的に赦しの舞を使用
「これで、大丈夫…です」

怪我人がいる場合は、祖霊降臨を使用
複数の場合、怪我が大きい人を優先して回復
「回復は、お任せ…ください、ね…」

怪我人がいない場合
バーテンかマスターがBS状態でない場合
茨の領域を使用
そうでない場合かアビが切れた場合は
ホーミングで射撃攻撃

類さん・刹那おにいちゃん。椋が魅了にかかった場合
赦しの舞を行使しながら名前を呼びかけます
「しっかり、目を…覚ま、して…。」

◆戦闘後
しゅんとしつつ
「確かに…ちょっと、妖しいダーツボード、だったけど…。
折角の、今市くんの…好意、残念…でした、ね。」

その後、舛花さんの家で仕切り直しダーツを遊びに行きます
折角だし劉さんとも楽しく遊べると嬉しいです

◆その他
柊先輩:刹那おにいちゃん
風波君:椋
源さん:類さん
年上:苗字+センパイ
年下・同級:苗字+さん
口調:、…を多様

源・類(零下の埋み火・b51181)
【呼称、口調】

先輩に対しては『苗字+先輩』
年下と同学年の方は『苗字+君orさん』。

恋人の冷泉・香夜君は『香夜君』…ね。

今市団長は『団長』。

何事にも真摯に臨むのが信条だけれど、軽口はけっこう叩く方かな。

【心情】

何と言うか…理不尽な事態に途方に暮れるしかないのだけれど。
「最近こういう状況に慣れてきてる自分が怖いわ…。」

…考えようによっては運が良いのかしらね。

一番信頼出来る人達と一緒に戦える私にとっても、
これ以上罪を重ねずに済む彼らにとっても。

【戦術】

たわしの二人(…)→バーテン→マスター、の順で攻撃を集中ね。 

まずは<旋剣の構え>で自己強化、
たわしズ二人と対峙して後衛への攻撃を阻みつつ戦闘。

「あなた達、何だか楽しそうに見えるのは気のせい?」

彼らを倒せたなら遠距離攻撃の二人へ接近して攻撃するわ。
足止め策が上手く行くといいのだけれど…。

「止まっている的は…狙い易いわね。」

間合いに応じて<黒影剣>、<ダークハンド>を使い分けて、
想定外の状況では、風波君と同じ相手を狙いましょう。

「合わせるわ…!」

危ない状況ならば自己回復するけれど、
なるべく回復は後衛の皆に任せるわ。

「ありがとう…香夜君」

【その後?】
何が悪い…とかは言わないわ。
「まあ…これで一般の人が被害に遭う事は、もう無いのだものね。」

ルールブックをめくりながらダーツを楽しみましょう。
…普段の運動神経が壊滅的な私の矢が何処に飛ぶか、少し不安だけれど。

伊集院・帝(貴族・b62329)
「死して尚ダーツに拘る心意気や天晴れ。されど、他者の幸福を奪って良い道理は……無いぞ」

前衛 柊、源、黒瀬、劉、真スカルサムライ(菫)
後衛 冷泉、舛花、伊集院、風波、今市
回復役には冷泉と今市が当る

自身の番になった時、マスターが超バッドステータスの影響下に無かった場合
タイマンチェーン(一騎打ちの鎖と強く主張するっ)をマスターに使用
それ以外の時はフレイムキャノンで前衛が攻撃を集中している対象に攻撃
基本的な攻撃優先順位はリビングデッドA→B→バーテン→マスターの順

【全体作戦】
冷泉、今市、私の三人で常にマスターが超バッドステータスによりアビリティが使えぬ状態であるようにする
その間に残るメンバーが、リビングデッドA、B、バーテン、マスターの順で倒す

劉には前衛を任せるぞ
防具はHP重視の物が望ましいので、現在の装備でも構わぬ
アビリティは龍尾脚奥義を×8、龍顎拳奥義×4
まず龍尾脚を仕掛け、成功したならば龍顎拳の奥義を繋ぐといった戦い方がよかろう
CPが余るので、他に良き防具があるのなら
龍尾脚奥義を×12にするも良し、HPをより上げても良し、貴様に任せる
石兵点穴等、バッドステータス狙いのアビリティは魅了された時が恐いので無しでお願いする
無論劉もまた、全体の作戦に乗っ取った形で攻撃をしてもらう
頼りにしておる、よろしく頼むぞ!

「見事な技前、この伊集院感服した……出来れば貴様が生きている間に、その技見たかったぞ」

劉・瞬成(高校生除霊建築士・bn0175)(NPC)
 このキャラクターはNPC(マスターのキャラクター)です。プレイングはありません。




<リプレイ>

●誰かと誰かと、そして誰かの憂鬱
 さて、そうして場所は引き続き異空間である。
 現在、市之瀬のメンバーの関心は、主に敵と――。
「交戦規定はただ一つ、生き残れ!」
「「……」」
「やっぱりね、大切な仲間に怪我なんてしてほしくないワケで……」
「「……」」
「まあ、まず俺が生き延びられるか心配だけどね!」
「「……」」
「……あとは、えーと……そうそう、構造主義って」
「……ネタが尽きましたね?」
「ごめんなさい」
 今市・直人(イマイチな男・b36897)だった。
 舛花・深緋(ブルズアイ・b27553)の小さな一言に、結構普通に謝ったぞ!
 まあ、原因はあくまで不明なのだが、なんとなく直人が悪い気も……しないでもない!
 だが――。
「最近こういう状況に慣れてきてる自分が怖いわ……」
「直人の奴が率先して何かをすると、大抵トラブルが起こるからな……」

 ――何より恐ろしいのは、皆がこうしたトラブルに慣れ始めていることだった!
 
 そう。
 源・類(零下の埋み火・b51181)と柊・刹那(冥府の使者・b40917)の台詞に皆が頷き、
「ま、これ以上の犠牲者が出る前に、能力者の手に渡って良かったんじゃない?」
「「……確かに」」
「さいっこうにポジティブに考えれば、だけど!」
 黒瀬・朱夏(深い常緑から吹く風・b22809)の笑顔に、更に肯定が続く。
 そして、
「まあ仕方ないか。さ、折角劉君も来てくれてるんだし、さっさと片付けてダーツやろう!」
「「了解ー」」
 ぺちぺちと手を叩く風波・椋(悠久の黒・b43193)の台詞で、あっさり敵へ向き直る。
 ……早い。
 凄まじく切り替えが早い。
 能力者的には非常に合格だが、きっと色々苦労しているに違いない――!


「死して尚ダーツに拘る心意気や天晴れ。されど他者の幸福を奪って良い道理は……無いぞ」
 やがて。
 吐息さえ鮮やかにこなす伊集院・帝(貴族・b62329)がカードを出せば……。
「「――イグニッション!」」
 起動の声が唱和する。
 そのタイミングは、敵の襲い掛かる瞬間を完全に読み切っていた。
『コワイネェ……』
『『チガイマスー! コワイノハタワシデスー!』』
 こうして、戦闘は遂に開始される。
「……ところで、何で……タワシさん、なんでしょう……か?」
「「ソレは言うな……!」」
 冷泉・香夜(水面に映る優しき銀蝶・b47140)の核心を突く台詞を、流しつつ。

●破裂の状況
 先手は、連携で勢いを得た能力者サイドが取得した。
「んじゃ、バックアップよろしくね?」
「了解……です、よ……!」
 初手は、呟き、香夜と笑いあう椋がギンギンパワーZを使うように、大半が強化行動。
『トバシテイコウゼ?』
『トバシテイコウカ?』
「いって!?」
 その隙にマスターとバーテンダーの攻撃で直人が弱っていたが、まあ生きている!
 状況が急転するのは――。
「――あなた達、何だか楽しそうに見えるのは気のせい?」
「――これでもう、休みなさいっ!」
 距離を詰めた前衛の行動から。
 すなわち、連携を実現した類と朱夏のニ連撃からだ。
 共に奥義級の黒影剣とクレセントファングが、片方のタワシ男を襲い――。
「――タワシタワシと煩い奴等だ。劉、いけるか?」
「――勿論ネ!」
 残る片方を、刹那と瞬成がきっちり抑える。
 こちらも質の高い黒影剣、龍尾脚の連携が男の脇腹に吸い込まれて――。
「ダーツは……人に向けちゃいけませんよ!」
『ウソ!?』
「う、嘘じゃありませんっ」
 いつになく大声な深緋の放つフレイムキャノンが退路を塞ぎ――全てが爆ぜる!
『ガアアアアア!?』
 効果は抜群だ。
『イテェヨ……アニキ……』
『アア……オマエライマ、オレトオトウトヲワラッタカ……?』
(「仲良いなこいつら……」)
 だが、そのコメディ属性故か基礎能力故か――多分両方だろう――男達はまだ余裕だ。
 少なくとも体力の点で、相手もまた前衛としては合格らしい。
 現時点では――能力者たちが押している。
 深緋の相棒、菫も前衛を厚くしていて、一見してすぐに突破される気配はなさそうだ。

 ――では、後衛は?

『若者はアツスギテイケナイ。ヌルマユノナカニモシンリハアルモノダ、ヨ?』
『『マスターフカイッス!』』
「と、良いこと言ってるけど、でもそれは通さないよ――!」
 とにかく、能力者達は敵後衛の破壊力と撹乱能力を危険視していた。
 ――自由に動かせてはならない。
 故に、まずは牽制とばかりに椋のパラノイアペーパーが敵視界を埋め尽くし、
「――敵を自由にさせぬは定石だ。悪く思うなよ」
「――少しの間、じっと……していて、ください……ね」
「――勿論戦闘は真面目にやるよ! 皆の視線が痛いからね!?」
 続く攻撃は、タイマンチェーンに茨の領域、パラライズファンガスの拘束スキル。
 帝、香夜、直人の目的を絞った三連撃は――見事、マスターの行動を封じる!
(「行ける……!」)
 悪くない。
 後衛のボスを封じて前衛を押し切る戦術の元――理想的な展開といえた。
 だが。
 敵もまた……。
 伊達や酔狂で、殺意を持っては居ないのだ。
『オレノオゴリダ!』
『イエッハー!』
 まず、バーテンダーのカクテルは、単体回復であるが故、かなり強力だ。
 その上――。
「回復は煩わしいわね!」
『タワシスペシャルゥ!』
「ッ」
「意外と……速いねぇ!?」
 たった二人で、四人と一体の攻勢を止めているタワシ男の粘りが異常でさえある。
 狙い済ました全力攻撃を回避する敵には、流石に類と朱夏も舌を巻いた……。
『オオオオオオオ!』
「しかし、どうしてダーツを投げないのでしょう……!」
「もしかして投げると外れる腕前だカラ」
『イウナァァァァァ!』
「アルー!?」
「きゃっ!?」
 ダーツは投げてこないが、攻撃も強い!
 深緋も瞬成も、なんだか釈然としないが大ダメージだー!
 そして、
『フゥ……オワカイノ、コレハワタシノオゴリダヨ』
「ち、凌いだか……!」
 帝の舌打ちとマスターの苦笑の響きは同時。
 ――数瞬後の、マスター自慢の『トリプル』による爆発は形成を一気に引き戻した。
 カッ、とグラスを叩いたかのような音の後、爆炎が薄暗い闇を煌く暴力として顕れる!
「い、て……なんだこの痛み、犯罪じゃない!?」
「回復は、お任せ……ください、ね……」
 訴えるぞ! と地面をごろごろする直人と、回復に努める香夜は対照的だ!
 こうして……戦闘は、危ういバランスの上で進んでいく。

「うぅ、俺が何をしたって言うんだ……」
「「お前が言うなー!?」」
『オイオイ、ナカマワレナンテカナシイゼ……』
「「お前が言うなー!!」」
「み、みんな落ち着くアル! これは敵の罠アルよー!?」
『ツマリ――オレモオマエモタワシッテコトダナ!』
「はっはっは、離せ劉。とりあえず奴等を始末してからだ」
「刹那ー!?」

 いやほんと。
 危ういバランスです。

●幻想の決着
 そうして暫し後。
 戦況の変化は、能力者たちに有利な形で訪れた。
『タ・ワ・シ……』
『セメテ、テ・レ・ビ……』
 煩い上に強いという、敵に回すにはかなり恐ろしかったタワシ男たちが果てたのだ。
 前衛が火力を集中させた効能は、やはり大きかった。
 これで――厄介な本命を攻めることが、出来る。
「ようやく、か……」
『タ・ワ・シ!』
『ク・ル・マ!』
「ああ。これで我等の勝利が見えてきたな?」
『タ・ワ・シ!』
『パ・ジェ』
「「黙れそしてそれ以上は決して口に出すなー!」」
『『ギャアアアアアアアア!?』』
 消えるまでの時間が無駄に長かったタワシ男も、ここでフェードアウト。
 怒る刹那と帝は本当に怖かったのか、涙目で消えていった……気がする。
 なんとなくふざけた雰囲気になってしまうのがこの空間の怖さか!
「次はマスター達か……渋いね。俺もあんな風になりたいでおじゃる」
「あら、この真面目な局面で戯言が……もう一度、ゆっくりと三回言ってくれる?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
 しかし、市之瀬にも素晴らしい常識人は何人も居る。
 直人の本音も、類がカバーして完璧です!
 ともあれ――。
「……うーん、とてもイマイチ。でも攻撃力は高いし良いよね!」
「……一気に決めましょう」
 次の標的はバーテンダーだ。
 苦笑しながらイマイチなスピードスケッチを送る椋と、菫に進撃を命じつつフレイムキャノンを連携とする深緋の攻撃が、涼しい顔の彼に襲い掛かる!
『……ク』
 バーテンは痛みに、一瞬顔をしかめ……。
『……コマッタコネコチャンタチダ』
「きゃーバーテンさーん!」
 それでも余裕は残っている!
 そして直人が反応する!
(「……これで行けるカ?」)
 既に、戦場は九対ニの様相を呈している。
 だが、瞬成は何かを懸念していた。
 無論彼が生真面目なせいでもあるが――そのときだ。
『オジョウサン……』
「え?」
『キノウハ……タベスギナカッタカイ?』
「言っている意味が――!?」

 マスターのカクテルが宙を走り、疑問符を浮かべる朱夏にすこーんと当たった!
 
「朱夏、大丈夫!?」
「……だーめーそーうーです?」
「「!?」」
 その特技は牛の目を射抜く魅力の一撃。
 強力な前衛の一角たる彼女が魅了状態にされ、戦場の天秤は再び傾く――!
「ち、」
 レベルの高いボスに拘束技は利き難い。
 逆に、老練な敵のバッドステータス付与は強力だった……。
「ごめんね?」
 くき、と小首を傾げる朱夏は可愛らしい。
 すごくすごく可愛い。
 並の男なら大抵魅了できるスマイルぶりだ。
 だが―――今はその笑顔こそが敵なのである。
 ……可愛いのに!
「仕方ないよね? ……よね?」
「まあ仕方ないねっていうかジャストアタックー!?」
「直人ー!?」
 可愛いのに強い。
 しかもどう判定されたのか、ジャストアタックのクレセントファングが直人を追い詰める!
 彼は、もう……いや、まだ動けるが結構ギリギリだ。
 ――だが。
「これで、大丈夫……です。黒瀬先輩?」
 それさえも、戦闘終結の引き伸ばしでしかなかった。
 仮にも一級の能力者たちが、敵の特殊攻撃を想定しないワケが無い。
 すぐに異変を察知した香夜が赦しの舞を行使し、朱夏を癒して事なきを得る。
 回復に専念する彼は、確かな戦線の要だった。
「うっ、わたし、やっちゃった? ごめんごめんごめん!」
「なに、問題は無いぞ。特に何も起こらなかったからな」
「まあ、誰も困ってはいないな」
「まあ、訂正も面倒ね……」
「アルー!?」
「ふ、ふふ……良いんだ瞬成君。あんなこと言って、皆俺が大好きなんだから……」
 特に問題は無い……らしい!
 少なくとも、多数決を取れば問題なしの判定が下りそうだった!
 誤解のないように言っておくと、ちゃんと戦況を計算した上でみんな言っています!

 ――そして。

「終わりに、しましょう……これで!」
 終止符を打つための攻撃は深緋の号令から始まる。
「――こそこそと厄介な奴だったが、な。終わりだ」
「――合わせるわ……当たり難い的じゃないものね!」
「――この戦い、ボク達の勝ちネ!」
「――タワシすら貰えない俺の雄姿を見ろ!」
「見事な技前、この伊集院感服した……出来れば貴様が生きている間に、その技見たかったぞ」
 刹那が。
 類が。
 瞬成が。
 直人が。
 帝が、続く。
 響く快音は―――二連や三連では無い。
 黒影剣やフレイムキャノン、獣撃拳や龍尾脚の入り混じる、見事な連携だ。
「「果てろ……!」」
『フ……』
 マスターは、もう抵抗する術を持たなかった。
 全てを食らい、そして静かに笑い……。
『……もう、否、漸く店仕舞いか……』
 頭を下げ、消えた。
「……強敵だったよ、本当にね」
 応じる椋は微笑に心情を乗せ、小さく呟く。
 それが、物語の終わり。
 次の瞬間には―――市之瀬のメンバーたちの視線を、眩い光が覆っていた。

●終わりのあと、日常で
「……なんとか、帰って来られたみたいだネ」
 光の後。
 市之瀬の部室に無事帰還したのを確認して、瞬成が一息。
 そう、自分達は任務を終えたのだ――。
 だが。
「うん、終わった終わった! 俺達は最強だね!」
「そうかそうか……まあソレはさておき直人、今回の件で少し話がある」
「え」
「なぁに、心配するな……すぐに終わる」
「いやそのなにかな予想できるけどやめて」
「煩い黙れ来い」
 直人の告発式が終わっていなかった。
 にっこりと微笑む刹那に、直人がずるずる引き摺られ……。
「このダーツボードを買ったのは運命なんスって! 世界結界に導かれて。うん、世界結界なら仕方ないな! や、安かったんだ……店の人も教えてくれなかった! 誰も教えてくれなかったんだ! 俺は悪くない! 間違ってるのは世界の方だー!」
「言いたいことはそれだけか?」
「あー!?」

 ――速やかに終了する!

「確かに……ちょっと、妖しいダーツボード、だったけど……折角の、今市くんの……好意、残念……でした、ね」
 そして、しゅんとする香夜が良い人過ぎるぞー!
 なんというか、非常にバランスの取れた結社である。
「まあ……これで一般の人が被害に遭う事は、もう無いのだものね。良しとしましょう」
「……うう、話が纏まったみたいで何よりです」
 嘆息する類の台詞に、よろよろと戻ってきた直人が頷く。
 確かにそうだ。
 これで、また一つ――人を襲う理不尽が消えた。
 きっとソレは、良い事なのだろう。
 ……そして、やがて。
「あ、あの、もしよろしかったら、うちのダーツバーに、遊びに来ませんか……?」
「ほう、ソレは良いな……賛成だ。ふふ、今度こそ私が首位を取るぞ!」
 深緋の提案に、皆の顔が綻んだ。
 上機嫌で帝が肯定すれば、他の皆も、笑いながら意気込みを語り出す。
「ボクも……良いのかイ?」
「勿論です。ボードも回りませんし、タワシも車も出ませんけど……」
 瞬成も、同行を許されて嬉しそうに笑う。
 ああ。
 これも一つの、幸いだろう――。
「深緋ちゃんの家でダーツか……」
 感慨深げに呟くのは、直人で。
「いいね、それはいい――なら歯ブラシとパジャマと下着の替えを用意していこう。そうだそれがいい」
「いまいちくん、舛花さんにふらちなことをしようとしたら蹴るっすよ?」
「あはは、まさかそんな……ね? 今市くんはなんもやらかさないよね?」
「ははははは当然ですよ。さあ皆、夕日に向かってダッシュだ!」
「「……」」
 にっこりと。
 釘を刺し、効果を上げるのは朱夏と椋である。
 笑顔で走り去る直人を横目に、まあそれはそれとして、ダーツが楽しみな二人なのだ。
「……行きますか」
「……ああ」
 そうして、場所を移して、市之瀬のダーツ大会は始まった。
 そこでは直人がまたトラブルを起こして怒られたり、初心者の面々が著しい成長を見せたり、上級者の面々が白熱した首位争いをしたりしたのだが――それはまた、別のお話。

 ただ一つ、言えるのは。
 彼等が今日もまた、貴重な、ありがたい想い出を作れたと、いうことだろう――。


マスター:緋翊 紹介ページ
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知 的 ハートフル ロマンティック せつない えっち
いまいち
参加者:8人
作成日:2009/10/13
得票数:楽しい7  笑える11 
冒険結果:成功!
重傷者:なし
死亡者:なし
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