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【ふくい地域】

人事尽くし天命待つ県内7病院 来たれ地域医療の担い手

2009年10月19日

電子カルテを見ながら、指導医(手前から3人目)の指示を受ける研修医たち=福井市の県立病院で

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研修医配属 29日に発表

定員17人増 膨らむ期待

 各都道府県の医療の行く末を占う研修医のマッチング結果が、二十九日に発表される。マッチングは卒業後の新人医師が、法律で義務付けられた二年間の臨床研修をどの病院で行うかを決める制度で、結果は各病院や自治体の将来の医師数に大きな影響を及ぼす。今年は都市圏の定員の一部が地方に割り振られ、福井でも県全体の定員が昨年から二割増えて約百人になった。発表を待つ関係者の思いとこれまでの取り組みを探った。 (小柳保志)

 ■悩み

 「多い年もあれば少ない年もある。どうなるか分からないので発表前は毎年ドキドキする」と、ある病院幹部は明かす。医師不足問題はどの医療機関も抱える悩みの種。もし医師不足に陥れば病院運営は土台から揺さぶられ、病棟や診療科の閉鎖、残された医師の過重労働などを引き起こしかねない。

 県内で研修医を募集している医療機関は、福井大付属(定員五十六人)、県立(同十人)、福井赤十字(同九人)、県済生会(同八人)、福井総合(同五人)、市立敦賀(同六人)、公立小浜(同四人)の七病院。各地域の医療拠点でもある。医師の偏在を軽減するため、国が都会の研修病院の定員の一部を地方に割り振った結果、今年は県内の五病院が定員を計十七人増やし、県全体で昨年度の八十一人から九十八人にすることができた。

 ■評判

 ただし、喜んでばかりはいられない。定員の充足率が低ければ「人気のない病院」と見られる。学生や新人医師がアンテナを伸ばす情報網に、憶測やおかしなうわさが広がれば翌年のマッチング結果にまで響く可能性もある。

 「学生たちは先輩の言葉やネット情報に敏感に反応する」。県立病院の高瀬恵一郎医師は、研修責任者として学生や若い医師たちの心理に迫ろうと腐心すしてきた。病院が対抗できる情報発信はホームページや合同説明会でのPR程度。うかつな言動は評判に直結するため、獲得した研修医はもちろん、事前の見学者の扱いもおろそかにはできない。

 評判以外に確かな「数字」でライバル病院に差をつけようと、研修中の給与にも開きがある。県内七病院でも、給料はボーナスなしの月給三十万円から、ボーナス四カ月付きの月給五十四万円まで幅広い。

 ■最終目標

 しかし各病院の最終目標は、研修医の獲得ではなく、二年間の研修を終えた後の「後期研修医」としての残留だ。後期は各分野の専門医の資格獲得を目指す期間で、ほぼ一人前の戦力として扱える。医局や個人のコネに頼らない、安定した自前の医師がここでようやく手に入るわけだ。

 今年で六年目を迎えたマッチング制度。県内でも自前の医師が次々に誕生し、県民の健康を支えている。今年は何人の学生が福井を選ぶのか。関係者の関心が集まっている。

 

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