新型インフル対策、不足は医療機器ではなく「人的な面」
新型インフルエンザの流行ピーク時に対応する人工呼吸器の台数は十分にあるものの、管理する医師などが不足していることが、日本臨床工学技師会が日本呼吸療法医学会の協力を得て9月に行った調査で分かった。医療従事者を対象に10月17日に開かれた「新型インフルエンザによる重症患者の治療に関する研修会」で、日本医科大集中治療室の竹田晋浩准教授(日本呼吸療法医学会新型インフルエンザ委員会委員長)が明らかにした。
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調査対象は200床以上の急性期型病院1373施設(全8818施設)で、348の2次医療圏ごとにデータを取りまとめた。10月5日現在の回収率は84.8%だった。
これによると、人工呼吸器数は全国で2万1025台で、約半数が使用されていなかったという。また、ECMO(体外式膜型人工肺)は987台で、これについて竹田准教授は「おそらく世界で一番(ECMOを)持っている国だと思う。信じられない数だ」としている。
また、国内の人工呼吸器販売メーカー10社に9月15日時点のレンタルの状況を問い合わせたところ、年内までに貸し出し可能な在庫が924台あったという。
竹田准教授は厚生労働省の流行シナリオと海外の報告を基に、人工呼吸器を使用する人数を最大で1万人と推計。「全体として(人工)呼吸器は十分に足りている」との認識を示した。
竹田准教授はさらに、「詳細まで完璧にできていた」という山形県のレポートを紹介。成人人口10万人当たりに必要な人工呼吸器台数を「10台」とした上で、4つの2次医療圏のうち足りないのは1地域だけで、「周辺の地域から借りれば十分県内で対応できる」との見方を示した。
一方で、同県内のICU(集中治療室)のベッド数と担当医師数は、診療報酬届け出をしているベッド数が102床、日本集中治療医学会の認定施設が2施設12床、専門医が4人だったと指摘。「医療機器としてはおそらく足りている」としながらも、「実際の重症患者の治療を誰がやるのか。誰でもECMOの管理ができるわけではない」とまとめた。
これに対して、山形県の医師が「人工呼吸器が20台、ECMOも3台あるが、庄内地区で人工呼吸器を管理できるのは5人しかいない。問題なのは機械の数より人の数だ」と指摘。竹田准教授も「おっしゃるとおりだ。人的な面などをこれから解決していかなければならない。将来的にはいろいろなことを変えられる可能性があるが、直近のインフルエンザに関してはあと3−4か月でできることを考えなければならない。そうなると、全国的な規模で考えるのも一つだが、県内くらいで考える必要があるのではないか」と応じた。また、沖縄県立南部医療センター・こども医療センター小児循環器科の仲矢代真美医長は、「人工呼吸器について知識のある医師やナースが使わないと、合併症を起こす危険性がある」とした上で、「半分しか使用していないということは、回っていないのではなく、回せないのではないか」と述べた。
更新:2009/10/19 10:15 キャリアブレイン
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