|
|
きょうの社説 2009年10月19日
◎ルビーロマン加工品 生産者の「安全網」になる
県産の高級ブドウ「ルビーロマン」の規格外品を使い、菓子などを試作する動きが見ら
れるようになってきた。農作物の出来は天候などに左右されやすく、どんなに栽培技術の向上に努めても、一定量の規格外品は出てしまう。生食用として売れない規格外品を加工用に回し、収益につなげる道筋が確立されれば、生産者にとっては何よりのセーフティーネット(安全網)になろう。さらに試行錯誤を重ね、多彩な加工品を商品化してほしい。ルビーロマンの出荷は、JA全農いしかわが一手に引き受けており、糖度や粒の大きさ 、房の形などが基準に満たないと評価されたものは市場に出回らない仕組みとなっている。ブランド価値を守るために不可欠なこととはいえ、生産者は少なからぬ量の規格外品を涙をのんで自家処分している。 県などは、市場デビュー2年目となる今年の出荷目標を4千房と設定していたものの、 実際は約2800房にとどまった。栽培が容易ではないことを物語る数字である。今後、県内だけでなく首都圏や関西圏などにも広く発信していくためには、出荷量をさらに増やさなければならないが、栽培の難しさが生産拡大の障壁になる可能性は十分にある。「規格外品=利益ゼロ」という状況を解消することによって生産者のリスクを多少なりとも軽減し、挑戦をためらっている農家の背中を押したい。 ブドウの加工品にはさまざまなものがあるが、ルビーロマンの場合、やはり「本命」は 菓子だろう。金沢には藩政期以来の和菓子作りの伝統が脈々と息づいており、最近は意欲的なパティシエによって魅力ある洋菓子も次々と開発されている。新しい素材をうまく生かし、菓子業界の活性化にもつなげたい。 ただ、規格外品をむやみやたらと出回らせて、全体的な価格低下を招いては本末転倒だ 。「高貴な宝石」というイメージとかけ離れた加工品が店頭に並ぶのも好ましくない。こうした問題を起こさないためには、規格外品についてもJA全農いしかわが集荷し、責任を持って業者に供給する態勢を整える必要があろう。
◎年金機構発足へ 軌道修正はあって当然
社会保険庁の年金業務を引き継ぐ「日本年金機構」が、自公連立政権時代に決まった方
針通り、来年1月に発足する運びとなった。社保庁と国税庁を統合する「歳入庁」構想を公約に掲げた民主党は、機構発足に反対してきたが、現実に合わなければ軌道修正するのは当然であり、特に今回の場合は混乱を避けるためにもやむをえない。年金記録の不備や年金記録ののぞき見といった不祥事が相次いだ社保庁は、年金の運営 を託す組織としてふさわしくなく、国民の信頼を失っている。厚労省からの出向者、本庁勤務者、地方採用者という三層構造が災いし、組織の体を成していない。社保庁を解体し、新組織をつくって出直す必要があり、非公務員型の年金機構への移行を遅らせる意味はない。 民主党は衆院選前まで日本年金機構について「看板の掛け替えにすぎない」と批判して きた。しかし、1千人以上の民間人に採用内定が出ている段階で、移行を中止すれば、雇用問題で大混乱に陥るのは目に見えている。また、不祥事で懲戒処分を受けた職員を機構の正規職員として採用しないという方針を貫くためにも、予定通り移行した方がよい。 日本年金機構を歳入庁創設までの時限的な組織と考える向きもあるようだが、非公務員 型の組織を国税庁と統合して歳入庁をつくるとなると、役所は肥大化する。民主党が掲げる公務員人件費の削減の大方針と矛盾するだろう。問題点を率直に認め、公約の見直しを図るべきではないか。 懲戒処分歴のある社保庁職員約790人は機構へ移行させず、再就職が決まらない場合 、「分限免職」になる。長妻昭厚生労働相は野党時代、懲戒処分を受けた職員の採用に批判的だったが、民主党の支持組織である自治労などは、こうした職員への配慮を求めている。支援は必要だが、度が過ぎれば国民の批判を浴びるだろう。 長妻厚労相は、年金記録問題解決のため、日本年金機構の人員増を予算要求していく。 分限免職となる職員を2年程度、有期で雇用するのも一案ではないか。
|