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きょうのコラム「時鐘」 2009年10月19日
警察への「家出人」捜索願の名称が「行方不明者」に変更されるという。単身世帯が増える社会に対応するものと警察庁は説明している
単なる事務的な変更に見えるが、現代の「家」や「家族」の崩壊をこれほど鮮明に示す事例もないだろう。核家族や独居老人などの言葉が生まれて久しい。日本の1世帯当たりの人数は既に20年も前から「1世帯1人」が最も多くなっているのである 70年代に「家出のすすめ」(寺山修司)などという刺激的な言葉が流行ったことがある。実際に家出はしないまでも、家出を考える若者は多かった。親元を離れ独り立ちしていく一種の通過儀礼のようなものだったからである が、若者に家出をけしかけた70年代は「1世帯4人」の時代だった。まだ家があり家族があった。それが今、気がつけば家も家族も危うくなるばかりである。ある日ふらっと旅にでて帰ってこなくても、だれも捜索願を出してくれない、そんな寂しい光景が迫っている 「家出人」という言葉には「行方不明」では説明しきれない、熱くて濃い親子兄弟関係が秘められていた。切ない時代になったものである。 |