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PILOT
(パイロット)

カスタム742 フォルカン

 

 パイロットの特殊ペン先、フォルカンです。モデルは定番のカスタム742です。「超ソフト調」との表現に食指が動いて、衝動買いしてみました。ペン先は軟らかくしなるよう、切り割りも深く、左右が大きくえぐれています。

パイロットの特殊ペン先
(PO)ポスティング ペン先を下向きにした硬めの極細字
(FA)フォルカン 超ソフト調。毛筆の筆跡
(WA)ウェーバリー ペン先を上向きにした柔らかめの中字
(SU)スタブ 縦の線は太字、横の線は中細字
(C )コース 特太字
(MS)ミュージック デザインにも使える楽譜用特太字

 実際に書いてみると、かなり癖のある書き味です。確かに「軟らかい」ですが、ペリカン1000のようなふわりとした当たりはありません。筆圧をかけずに紙の上を滑らせると、ペン先のタッチ自体には滑らかさはなく、ややざらついていることが分かります。しなりの度合いに段差があり、そのまま筆圧を加えていくと、あるところで一気にペン先がしなります。また一本調子で早書きすると、ペン先の戻りが遅いので引きずるような感覚があります。
 線は細くてシャープです。ぐっとしなってペン先が開いても、インクフローは節度を失いません。このあたりの精度の高さはさすが。
 独特のしなりに自分の筆さばきを合わせてコントロールすることが必要です。初めは戸惑いますが、長時間、大量に書くのでなければ、コツをつかめばいい線が書けます。書く動作に意識が奪われるので、書く内容に集中するような使い方は厳しいかもしれません。私の場合は、ペンをふだんより意識的に少し寝かせて、筆記速度を落として、筆圧にメリハリを付けて書くと、うまくタイミングが合い、整った楷書が書けます。清書向きというイメージですね。

kan 2004.07.21

HIROYUKIさんのコメント:
 インプレを読ませていただきました。カスタム742フォルカンの書き味ですが、もしかしたら私の70周年記念万年筆も似た書き味かもしれませんね。軟らかくてもふんわりしていない、ややざらついた感じ・・・・・そっくりですね。kanさんの742フォルカンも私の70周年記念も一般的な意味での軟らかいペンではなさそうですね。非常に個性的なペンのようで、使いこなすには時間がかかりそうですね。最近は似たような書き味のペンが多い中で、個性派のペンというのも面白いですね。(2004.07.23)

キャップレス

 

 言わずと知れた、パイロットが生み出したキャップの無い便利な万年筆です。

 写真は、漆塗り貝散らし螺鈿のモデル(FCN-5MP-RB)で、特別生産品になります。実際には、写真より貝がたくさん見えますが、それでも見た目は地味というか、落ち着いた感じで派手さがあまりありません。私としては、そこが気に入っていますが、遠目では黒の定価1万円(税抜き)の品物と違いは分かりにくいです。このため、妻には「この貝殻で値段がどうして5倍になるの!」と言われてしまいました。

 基本的には、現行のキャップレスで、重さは約32gと少し重めで落ち着いて書く場合に適したバランスだと感じます。ただ、漆塗りであるためにすべすべしていながら、しっとりと手に吸い付くような感触で、他の素材とは違うなと感じられます。
 この型になってから、コンバータはCON-20(容量約0.6cc)、CON-50(容量約0.4cc)とも使用できるようです。(容量は、水の密度を1としてコンバータ単体で水を吸い込み、その前後の重さを測り求めました。水1滴で0.05くらい値は違ってしまうので誤差は大きいですが。ちなみにカートリッジは約0.7ccでした。)

 ペンは、18Kでロジウムコートされていてとても滑らで、フローも良好です(インクはパイロットの黒)。ニプはB(太字)ですが、ペリカンのMより細く感じ、セーラー長刀研ぎの中字(NM)くらいの太さです。また、ペンの弾力は、最初の当たりが少し硬めに感じられますが、筆圧を掛けるとしなってくれます。キャップレスの18KのMを試筆した時にはもっと柔らかく感じたのものですが、これはペンポイントから2mm位の部分の幅がBではかなり太いのが理由ではないかと思います。

 キャップレスは、プッシュ式コンバータが使えないのでインク容量が少ない、出先でラフに使われる機会が多いといった点を考慮して選ぶと、おすすめモデルは廉価な合金ペン先の物で太さはMになるだろうと思います。しかし、紹介のモデルはパイロットが育ててきた、漆塗りとキャップレスメカニズムという2つの要素が組み合わされていて、私のお気に入りです。なので、あまり持ち歩かずに大事に使っていく予定です。

Sumi3 2004.07.02


飛翔天人

 

 昨年秋に発売されたパイロット創業85周年記念万年筆です。

 個人的に好きな万年筆は、以前に本広場に投稿させていただいた万年筆をはじめとし、いろいろありますが、多分この万年筆は目下手持ちの中のベスト5に入るものと思います。

 内外に万年筆を作っている会社が数ある中で、私の場合、パイロットが一番好きです。多様なペン先を用意している点にメーカーとしての姿勢が感じられるし、また、その多様なペン先の中でもやわらかめに味付けされたタイプのものの書き味の大ファンなのです。
 そのパイロットが技巧を凝らした記念万年筆を出すということを知り、パイロットの限定万年筆という点に大いに魅力を感じ、現物も見ないうちに迷わず予約してしまいした。

 納品まで少々待たされましたが、初めて手にした時は、きらきら輝く美しさにしばしの間眺めいってしまいました。螺鈿、研ぎ出し蒔絵、銀細工など技法の詳細はわかりませんが、なかなか手が込んでいることはよくわかります。万年筆という筆記用具としてだけでなく、工芸品を慈しむという楽しみも教えてくれるようです。

 書き味の方ですが、この飛天には柔らかいタイプのペン先がついており、私としては、またまた嬉しくなってしまいました。これはもう個人の感覚的なことなのでうまくは表現できませんが、弾力に富む感じの柔らかいペン先で筆圧を弱目にサラサラ書く気持ちのよさ。何に例えればよいかわかりませんが、やわらかな芝生の上を裸足で歩いた感じとでもとりあえず言っておきたいところです。私のはBニブですが、Mであればもっとそのタッチのソフトさを感じることができるはずです。

 筆記時の寸法は16.3cmほど、重さは金属軸なので40g弱と適度な量感があります。細かいところでは、先端がすぼまった形状のクリップ、なかなかレトロな感じがし、気に入っている部分です。

 今のところ、専ら自宅でのみ使用しています。万が一落下させたらという心配もありますが、やはり職場等で使うには人間の方が万年筆に負けているというひけ目があるからでしょうか(苦笑)。それで今は、冬のソナタの台詞による韓国語の勉強という全く私的な楽しみのためにだけ使っています。

 入れているインクはパイロットの青です。

Gimhae 2004.04.30

 Gimhaeさんのコメント
 インプレを書いた当の本人がコメントします。「弾力に富む感じの柔らかいペン先で筆圧を弱目にサラサラ書く気持ちのよさ」という表現について、誤解がないように説明します。この飛天のペン先は、確かに弾力には富んでいますが、私が筆圧を弱目にして書いているときに、常にペン先がフワフワとたわんだりしているわけではありません。むしろ、たわんでいない時間の方がずっと長いと思います。ただ、筆圧を弱目にといっても、ペン先が紙に接地するときに多少力が加わる瞬間があったり、書いているうちに自然と筆圧に力が入ったりする場面があったりしますが、そういうときにペン先がクッとたわんで衝撃を逃がしてくれる感じ、そこがクッションが効いていて気持ちいいという意味です。本当に個人の感覚的なことですね。(2004.05.05)
 HIROYUKIさんのコメント
 掲示板をお騒がせしましたが、私も幸運にも「飛翔天人」を入手できました。美しい万年筆です。金粉、青貝を使った蒔絵、3体の天人、非常に手が込んでいてPILOTの漆工芸技術の高さを窺い知ることができます。書いてみて、私が以前投稿したCUSTOMに似た書き味だなと感じました。2本のペン先を並べて比較してみましたが、大きな違いは見られません。軸の重さの違いで若干感覚が異なるのだと思います。現行品にはない優しい書き味です。(2005.04.20)

CUSTOM

 

 PILOTのCUSTOMです。前から気になっていて、ずっとオークションで狙っていたのですが、なぜかなかなか登場してくれませんでした。今回、やっと手に入れることができました。
 いつ頃の製品でしょうか?昭和60年発行の「文房具の魅力」という本に、この万年筆のことが詳しく掲載されていますからその頃の製品だと思います。当時はこのマーブル模様と黒の2種類ありました。
 形はベスト型で、マーブル模様の軸の素材はプロピオネートです。この軸は、棒状のものをくりぬき、内側から塗装するという手の込んだ方法で作られているそうです。ペン先は14K(M)で、10号ペンと同じ大きさです。全体の大きさはCUSTOM72、74と同じ位です。
 このペン先は、柔らかく滑りも良く、非常に書きやすいです。同じPILOTのCUSTOM74やペリカンM600・800より柔らかいペンです。
 インクの吸入方法はエアー利用のプッシュ式です。このCUSTOMはカートリッジは使えません。このエアー利用のプッシュ式は非常に気持ちよくインクを吸入します。
 キャップはねじ式ではなく、パチンとはめ込みます。全体として非常に渋く、風格・高級感のある仕上がりだと思います。当時の定価は30,000円。現在、この価格帯だと743でしょうか。それでも飾り帯の刻印方法などぜんぜん違います。
 このCUSTOM、お気に入りの1本になりそうです。大きさ、太さ、重さのバランスもよく、重すぎず軽すぎず、ペン先も滑らかで風格あるボディー。いい製品だと思います。手許で見比べてみると、ペリカン・ストックホルムM600と比較しても存在感は決してひけをとりません。この万年筆とも末永く仲良く付き合っていきたいと思っています。

ペン先は14K(M)で、10号ペンと同じ大きさ

HIROYUKI 2004.02.16


70周年記念万年筆

 

 ある方の紹介で幸運にも手に入れることができましたPILOTの70周年記念万年筆です。70周年ですから1988年の発売です。今年入手したものですが、15年前の記念万年筆がよく残っていたと思います。本当にラッキーでした。当時の価格は38,000円でした。
 大きさ、形ともに同じPILOTのCUSTOM72と良く似ています(と言うよりほとんど同じです)。ペン先は14Kで10号、FM(中細)です。ベスト型でクリップは日本古来の「剣」と「珠」をイメージ、表面模様は「波格子」柄、鞘には14Kのリングが入っています。AS樹脂製です。写真のように1本1本に製造番号が入っています。偶然にもNo.1918でPILOT創業の年と同じでした。
 写真ではわかりにくいのですが、ペン先は装飾などはなく、非常にシンプルなものです。このペンは、柔らかい上にペン先の先端部分が僅かに下がっているため、書き味は独特なものがあります。日本の文字の「止め」「はね」などを美しく書くためにこのような形になったそうです。CUSTOM72とは全く異なる書き味で、非常に個性的です。
 以前、PILOTの方にお話を伺ったところ、この万年筆はあまり売れなかったようです。特に独特のペン先が一般のユーザーには使いづらかったようで、後に普通の10号ペンに交換されて売られていたようです。と言うことは、同じ製品で2種類のペン先が存在したことになりますね。
 昨今の記念万年筆が満艦飾の装飾で非常に高価なのに対して、この潔いほどのシンプルさにはとても心惹かれます。私はまだ使いこなせるまでに至っていませんが、これから末永く付き合っていきたいと思っています。

HIROYUKI 2003.09.02


CUSTOM72

 

 PILOTのCUSTOM72です。現行のCUSTOMとは異なり、いわゆるベスト型の万年筆です。前々からこの形の万年筆が欲しかったのですが、NAMIKIブランドにはあってもPILOTでは廃番となっていました。昨年、東京のある店でデッドストックを半額で売っているのを見つけ、嬉々として購入しました。
 ペン先は10号14KでHM(硬めの中字)です。このHMはただのMとは異なり、ペン先はあまりしなりません。柔らかいペン先が苦手の方にはいいかもしれませんね。「しなやか・ソフト」と言うより「しっかり・ハード」という感じです。
 軸はプラスチック製で、現行製品の艶やかな樹脂製の軸に比べると高級感では劣ると思います。全体に波模様が施されているのと、透かしの飾り帯はコストがかかっており、軸の質感がイマイチなのが惜しいです。また、キャップ(天)と軸(地)にそれぞれ金色のリングが埋め込まれています。
 インクはカートリッジとプッシュ式のコンバーターのどちらも使えます。このプッシュ式コンバーターはなかなか良くできており、気持ちよくインクを吸い込んでくれます。
 この72は、1988年に発売された70周年記念万年筆と形、長さ、太さ、重さともにほとんど同じです。キャップも互換性(?)があります。70周年はもう残っていないでしょうが、この72は探せばまだどこかで眠っている可能性があります。デッドストックの万年筆を探し歩くのも楽しいかもしれませんね。

HIROYUKI 2003.08.31


カスタム845(エボナイトの胴軸に漆仕上げの特別生産品)

 

カスタム845は、エボナイトの胴軸表面に漆を塗って仕上げられた万年筆で、おそらくこれは同仕様のパイロット75周年記念万年筆を基本にして製造されたモデルだと思われます。型番の845にあるとおり、この万年筆はパイロット創業84年目(2002年)の終わりに製造され、5万円の定価で今年(2003年)の初めくらいから一部デパートなどの店頭に出回り始めました。しかしこれはカタログには掲載されない特別生産品で、需要が高ければ定番品としてカタログに掲載されるかも・・・という噂でしたが、結局は最後までカタログに掲載されることなく、200本を製造出荷して製造打ち切りとなった、まあ大げさに言えば幻のモデルです。

他のカスタムシリーズとの相違点ですが、エボナイトの胴軸に漆塗り仕上げという以外には、はっきり言って大きな相違点はありません。まず、軸の形やサイズですが、同じカスタムシリーズのレガンス(3万円のモデルの方)とほぼ同じで、天地が平らな円筒型をしています。ただしニブの大きさは、レガンスが10号ペン先であるのに対して845には初めから15号が付いています。18金のバイカラーで、カスタムの最高級品748のニブと同じ仕様ですが、748のニブとの互換性はないらしい(?)です。ペン先の字のサイズはF・M・Bの3種類。カートリッジ/コンバータの両用式です。あと違うのは、付属のプッシュ式のコンバータ70が黒く塗ってある(漆塗り?)点くらいかな?加えて、定価が5万円と他のカスタムシリーズに比べて割高だったというのもあるのでしょう。5万円と言えば輸入物のもっと見栄えのするカッコイイ万年筆が買える価格帯です。なのでこの845、いまいち人気は出なかったようです。書き味も、他の定番のカスタムシリーズと大差ありません。ペン先が14金よりも18金の方が軟らかいという噂もありますが、ニブの形状が同じなので違いは全くありません。わたしのニブはBですが、ペリカンのMよりも細く、筆跡もパイロット独特の線になります。

ただ、わたしとしては、1、天地が平らな円筒形の軸のカスタムが1本欲しかったこと、2、エボナイトの軸に漆塗り仕上げだったこと、3、14金や10号のペン先ではなく18金15号が付いていたこと、4、カートリッジ式のカスタムが1本欲しかったこと・・・などの理由により、ある意味わたしが当時求めていた理想の条件をそろえた万年筆であったので、少々高価でも迷わず選びました。逆に言えば、そういったことに価値を求めない方にとっては、黒の地味な色で、見かけエボナイトの漆塗りなどというのも外見からはほとんど判断つきませんから、他のカスタムシリーズで充分代用できるただの高価な万年筆でしかないと思われても全く不思議ではないです。このへんはもう好みの問題になります。

先のカスタム823との違いですが、金属製の中芯などもちろん入っていませんから軽いです。また、カートリッジ式ですから携帯に便利でインク補給がいつでも可能。それと、823の欠点であったキャップをお尻に差したときのグラグラはありません。あと、エボナイトの胴軸(軸や鞘の全部が全部エボナイト製ではないらしいですが)と表面の漆塗り仕上げの良さですが、これはもう趣味の範囲で、それが好きな人が自分で満足してニヤニヤ楽しむ以外の何ものでもありません。2003年8月現在ではまだデパートなどの店頭などには残っていますので、こういうのお好きな方がもしいらっしゃったら一度お手に取って眺めてみてください。なんか845の悪口ばっかり書いているように思われるかもしれませんが、わたしはこの万年筆にひとかたならぬ深い深い愛着を感じています。

ほしいも小僧 2003.08.08

山田風光さんのコメント
 はじめまして。おじゃまします。わたしも最近845Mニブ買いましたので。
 わたしのは、コンバーターは普通の70がついていました。まだパイロットのサイトにはないですが、販売店のカタログにも載ったようでして、パイロットもすこしたくさん作るのではないでしょうか。軸の真ん中あたりをすこし強く握って、丁寧に書いてみると、エボ漆なので微妙にクッションを感じますし、バランスもいいです。
 ただし、割高なところが難点で、量産してコストが下がるなら、定価4万ぐらいでもいいのでは。国内5万円だと、今のレートでは、450米ドルです。これは、海外正規ディーラーでは、装飾つき146とかオマス360の上級のものと同じぐらいかもっといいのが買える値段。
 ただ、ペン先は、わたしのものだけかもしれませんが、146よりいいんではないでしょうか。軽いんですが、紙のうえにくっつく感じとサラサラと動く感じが組み合わさったよい感触が手にきます。それに対して、モンブランは、紙の上にぴたっとくっついて、完璧にトレースしつづける感覚ですかね。紙をこする音が聞こえるような感覚をもたされるのがモンブラン。好みはそれぞれでしょうけど、845は、とてもいい万年筆です。気に入っています。
 普段ガンガン字を書くのには絶対いいですから、わたしはそんなふうに使う予定です。(2004.11.09)

カスタム823(新P式吸入機構万年筆)

 

カスタム823は、昭和8年に発売された大容量自吸式の万年筆、P式インキ止め自吸式万年筆を現代の技術を元に復活させたもので、P式とはいわゆるプランジャー吸入方式のことです。尻軸(尾栓)を緩めて万年筆内部を貫いている金属性の中芯を引き抜き、再び戻してやることで内部に真空状態を作り、中芯を戻し切ったところで真空が解放されインクが一気に吸入されるというものです。胴軸内部全体がインクタンクになっているので1回の操作で大容量のインク吸入が可能ですが、実際に入るインクの量は胴軸内の7割から8割くらいで満杯にはなりません。しかしそれでもかなりの量です。また、尻軸(尾栓)を完全に締めるとペン先にインクを流す穴をふさぐインキ止め機構も付いています。筆記時は尻軸(尾栓)を緩めてペン先にインクを流してやりますが、昔のインキ止めと違うところは、不用意に尻軸(尾栓)を引き過ぎないよう適度な位置でストップするストッパー機構が付いてます。

ペン先は14金で15号という大きさ。様々なペン先サイズを持つ同じカスタムシリーズの743ほど種類は多くなく、F・M・Bの三種類のサイズのみです。しかし、743のニブとも互換性はあるそうです。したがって書き味は743と同じではないかと思われます。見た目の形も743と同じです。わたしの823に付いていたのはBニブですが、適度な弾力性があり、その筆跡も日本語の文字によく合っている感じでした。今は743のBBニブに交換してありますが、これも適度な弾力性があって書きやすいです。軸の色は半透明のブラックスモークとブラウンスモークの2種類があり、中のインクの量が外からも見えるようになっています。特別生産品と言って、カタログに掲載されるような定番品にはならないけれど需要があれば作るという完全なスケルトンのモデルも存在します。ちなみに823とか743という数字ですが、最初の二桁がパイロット創業からの年数(82年目、74年目)を表わし、最後の一桁は定価(3万円)を表わします。

プランジャー式は胴軸内部に真空状態を作らなくてはならないため密閉性が高くなくてはなりません。その点この823はよくできていてかなり精密に作られていると思います。なので、いちおう首軸も自分で外せるようにはなっていますが、不用意に何度も外してそこに隙間を作ってしまうようなことになるとプランジャー機構が働かなくなるどころか首軸からのインク漏れを生じますので注意してください。やはり精密なだけに、部品を分解したりするのは極力避けた方がいいと思います。ただ、昔のヴィンテージ品のプランジャー機構の修理がなかなか難しいのに対して、この万年筆は部品レベルで分解もできるらしく、将来的な消耗部品などの交換には安心です。

難点を言えば2つあるかな?ひとつは、キャップをお尻に差したとき若干の緩みがあり、お尻に付けたキャップが少々グラグラすることです。しばらくキャップをグラグラさせているとそのうちに完全に抜けてしまいます。もうひとつは、プランジャー機構用の中芯が金属製であるため少々重量があるということ。といっても金属製の万年筆ほど重くはないですが。

あとこれはパイロットのペン先全般に言えることだと思うのですが、パイロットのペンポイントから導き出される筆跡には独特の線の形があります。よく分かる人なら字を見ただけでパイロットで書いたと分かるくらい大きな特徴を持っているのではないでしょうか。なので、これは好みにもよるでしょうが、そのパイロットの筆跡が好みでない人にはもしかしたら合わないかもしれません。これは購入時に購入される方が実際に試し書きをしながら充分吟味する必要がある点ではないかと思っています。

それと、これもパイロットの万年筆の特徴なのですが、あのペンポイントの形をしたクリップ。あれが少々固くてなかなか開いてくれません。なのであのクリップを利用してポケットやペンケースに差すのには少し力がいります。スッと刺さってくれません。まあ、一度差せば固いので落っこちる心配はないのですが、ペリカンのようにスッと軽く差せるのが理想です。

ほしいも小僧 2003.08.07

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