−高島屋(利益供与の関与者)−
訴 状
高島屋株主代表訴訟事件
請求の趣旨
一. 被告らは、訴外株式会社高島屋に対し、各自連帯して金1億6000万円並びにこれに対する本訴状送達 の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
ニ. 訴訟費用は被告らの負担とする。
との判決並びに第1項につき仮執行の宣言を求める。
請求の原因
一. 当事者
1.
訴外株式会社高島屋(以下「高島屋」という。)は、資本金268億3007万4331円で、百貨店業等を 業とする株式会社である。
2.
原告は、高島屋の株式1000株を6ヶ月以前より所有する株主である。
3. (1) 被告楠美宏は、昭和56年5月に取締役に選任され、同62年5月に常務取締役に、平成5年5 月に代表取締役専務(秘書室・総務部・人事部担当)となり、平成7年5月に退任した者である。
(2) 被告枝澤澄は、平成5年5月に取締役(総務部長)に選任され、平成7年5月に退任した者であ る。
4. 被告西浦勲は三代目互久楽会会長に昭和60年就任し、現在に至っているが、同会は昭和20年10 月、大阪西成地区で訴外加護敏雄を首領として18人のメンバーによって結成された暴力団で、大阪西成 を中心に勢力を有している者である。
ニ. 違法行為と違法支出
1. 総会屋に対する利益供与
被告楠美宏及び同枝澤澄は、高島屋代表取締役社長であった訴外日高啓、同財務部長訴外中谷正 司、同総務部副部長訴外上田勝康、同財務部副部長訴外中安純二と共謀のうえ三代目互久楽会会長 である被告西浦勲に対し、
(1) 平成6年5月に開催される第128回高島屋株主総会において総会屋の発言を封じ、平穏裡に総 会を終了させるため、総会屋対策の費用として平成5年11月頃、金3000万円を、同年12月頃、金10
00万円を、同6年3月頃、金3000万円及び金1000万円をそれぞれ供与し、都合4回に亘り、合計金 8000万円を交付し、平成7年5月に開催される第129回高島屋株主総会において総会屋の発言を
封じ平穏裡に総会を終了させるため、総会屋対策の費用として同6年11月頃、金3000万円及び金 1000万円を、同7年3月頃、金3000万円を、同年4月頃金1000万円をそれぞれ供与し、都合4回
に亘り、合計金8000万円交付し、もって商法294条の2に違反して利益の供与をなし、同金額の損 害を高島屋に与えたものである。
2. 本件不詳事件で引責辞任した前社長の訴外日高啓は約20年前に暴力団組長である被告西浦勲と 知り合い、今日に至るまで酒食を共にする等の黒い交際を続けるかたわら、10数年前より主として関東 の総会屋対策の費用として毎年6000万円を支払い続け、平成3年からはそれまで主として関西の総会 屋対策を担当していた別の総会屋が商法違反で検挙されるや、その後は毎年8000万円を高島屋として 利益供与し続けていたのである。
更に、高島屋は西浦勲の長男が代表者を務める訴外萬興産に対し段ボール箱等廃紙処理を発注した り、土木工事を発注したりし、更に系列ノンバンクが7億円を融資する等高島屋という巨大企業ぐるみで暴 力団組長と癒着していた構図が明らかとなってきている。
3. 昭和56年商法改正により商法294条の2が新設されたが、これは言う迄もなく総会屋、暴力団との癒 着を断ち切り、株主総会を民主、公開、平等の原則による運営に改善させ、企業経営の透明化、公正化を 図ろうとするためのもので、株主総会の活性化を図るためには総会屋の排除が不可欠と言える。にもかか わらず、百貨店業界の最大手である高島屋が総会屋対策のため10数年に亘り高額の利益供与をしてい たことは高島屋に対する消費者や社会の信頼、期待を裏切るばかり企業経営の基本的倫理にももとるも ので、その社会的責任は極めて重大と言わざるを得ない。
また、近時暴力排除意識が昴揚するなかで、暴力団が知能化、巧妙化しつつあり、暴力団の総会屋へ の進出が取り沙汰されているが、それだけに一般社会から企業が暴力団との決別を強く期待されている にもかかわらず業界に大手である巨大企業が、現役の暴力団組長に多額の金員を供与していたことは暴 力団排除運動に水を差すもので、厳しく指弾さえるべきである。
三. 被告らの責任
1.
被告楠美宏及び同枝澤澄は、共謀のうえ、被告西浦勲に対する利益供与に直接関与したものであるか ら、商法266条1項2号に該当し、同1項により高島屋に賠償責任を負担しているものである。
2.
被告西浦勲は利益供与を受けた者として商法294条の2、3項により高島屋に返還義務を負っているも のである。
四. 原告の訴外提起請求
原告は平成8年7月5日付通知書において、高島屋の監査役に対し、右について損害賠償請求をするよう に催告し、右書面は同月6日に高島屋に到達した。
また、高島屋の代表者に被告西浦勲に対し利得返還するよう同年7月12日付通告書で催告し同書面は 同月13日に高島屋に到達した。しかるに高島屋は、右通知書の到達後30日を経過するもいずれも訴訟を 提起しない。
五. よって、原告は、商法294条の2及び267条に基づく株主の代表訴訟として、被告西浦を除く被告らに対 し、同法266条1項2号及び5号による損害賠償金及び被告西浦に対し同法294条の2第3項による利得 返還金並びに請求の日の後である訴状到達の日の翌日から年5分の割合による損害賠償金を高島屋に支 払うよう求めて本状を提起した次第である。
平成8年8月16日
右原告訴訟代理人
弁護士 山田庸男
他別紙代理人目録記載の62名
大阪地方裁判所 御中
高島屋株主代表訴訟(利益供与の関与者)終わり
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