音楽家・加藤和彦さん(62)が17日午前、9時25分ごろ、長野県・軽井沢町のホテルで首をつって自殺しているのがみつかった。大ヒット映画「パッチギ!」などでコンビを組み、加藤さんと親交が深かった映画監督の井筒和幸監督(56)はデイリースポーツの取材に応じ、加藤さんが苦悩していた様子を明かした。10日前に加藤さんと会い、新作映画の音楽を依頼したが「(曲が)できへんねん…。『うつ』なんや」と語っていたという。
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「孤独な人やったんやな」。スタッフから知らせを受けた“盟友”の突然の死に、井筒監督は声を押し出すようにつぶやいた。
加藤さんに最後に会ったのは10日ほど前。すでに撮影が終了している新作映画の音楽監督を加藤さんが務めることになっており、その打ち合わせをした。「『(曲が)できへんねん。うつなんや』といっていた。冗談っぽく『冗談やないんや』とも」。井筒監督は「ゆっくりで大丈夫だから気にしないで下さい」と励ましたという。
親しい友人には手紙で「音楽でやるべきことがなくなった」と告白したとされるが、井筒監督は「そんなはずはない。新しいものを模索していた」と否定した。だが最近のメールでは、加藤さんがうつ状態で部屋に閉じこもり、犬と暮らしていると綴(つづ)られていたことも明かした。
一方で、「料理をふるまってくれたり、下町においしいふぐ屋があるからと連れてってくれたり。いつも関西弁で、京都のざっくばらんな優しいお兄ちゃんだった」と明るい人柄もしのばせた。
05年「パッチギ!」では加藤さんが音楽監督を務め、ヒット曲「あの素晴しい愛をもう一度」を主題歌に、「イムジン河」が劇中全編で使用された。07年、加藤さんが再結成したバンドのドキュメンタリー映画「サディスティック・ミカ・バンド」は井筒監督が監修を務める名コンビぶりだった。
新作映画について井筒監督は「遺作やから、加藤さんのためにも頑張って完成させるわ」と誓っていた。