米財政赤字:初の1兆ドル台、景気悪化で急膨張 09年度

2009年10月17日 10時28分 更新:10月17日 12時49分

米財政収支の推移
米財政収支の推移

 【ワシントン斉藤信宏】米財務省は16日、09会計年度(08年10月~09年9月)の財政赤字が1兆4171億2100万ドル(約128兆9600億円)と史上初めて1兆ドルの大台に乗り、過去最大を記録したと発表した。昨秋以降の金融・経済危機の影響で税収が大幅に減少する一方、危機に対処するための金融安定化法や大型景気対策で歳出が急増。財政赤字は過去最大だった08年度(4548億600万ドル)の3.1倍超に急膨張した。国内総生産(GDP)比でも10%に達し、第二次世界大戦時の1945年以来最悪の水準となった。

 米国の財政赤字膨張は、基軸通貨ドルや米国債への信認を低下させ、金利上昇を誘発する恐れがあり、世界経済の新たな不安定要素になる可能性も出てきた。

 米財務省によると、09年度の歳入は景気の落ち込みを反映して前年度比16.6%減の2兆1046億1300万ドルにとどまった。景気対策の一環で実施された減税措置などもあり所得税が同20.1%減少したほか、法人税も同54.6%減と大幅に落ち込んだ。一方、歳出は同18.2%増の3兆5217億3400万ドルまで膨らんだ。

 財政赤字は、8月に発表した中間見通し(1兆5800億ドル)からは約1629億ドル縮小。米財務省は金融安定化法に基づき金融機関に注入した資本の一部が返済されたことが赤字幅縮小に寄与したと説明した。ガイトナー米財務長官は「将来の赤字見通しは膨大な額にのぼるが、オバマ大統領は経済を回復させることで持続可能な水準に抑えると約束している」との声明を発表した。

 オバマ大統領は既に「任期中に財政赤字を半減させる」と表明しているが、景気の先行きに懸念が残るうえ、医療保険制度改革の行方次第では今後の歳出が想定以上に膨らむ可能性もあり、財政収支改善への道筋は描けていない。

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