政権交代後初となる10年度当初予算の編成に向け、各省庁は15日、概算要求を財務省に提出した。鳩山政権のマニフェスト(政権公約)に掲げた「子ども手当」などの政策を盛り込んだ結果、一般会計の要求総額は過去最大の90兆円台前半に達した。税収の落ち込みが確実な中、予算編成過程で絞り込めなければ赤字国債の増発は避けられず、財政悪化に拍車がかかる懸念が強まっている。政府は16日に総額を発表する。
この日要求内容を公表した10省庁のうち、農林水産省は農家を支援する「戸別所得補償制度」のモデル事業(関連事業も含め5618億円)創設などを求め、要求額は09年度当初予算比7・5%増の2兆7518億円になった。2・1兆円の「子ども手当」などを追加した厚生労働省は1・8%増の28兆8894億円に。文部科学省は4624億円の「公立高校の実質無償化」などで9・0%増の5兆7562億円だった。
政権公約関連では計4・2兆円要求。このほか、ガソリン税などの暫定税率を公約通り廃止すれば税収減の穴埋めに2・5兆円が必要になる。民主党は、公約実現には10年度予算で7・1兆円かかるとしており、差額は4000億円になるが、子ども手当実施が年度途中からになることなどが理由。事実上の満額要求になった。
一方、公共事業関連の要求は大幅に削減された。国土交通省は、道路やダムなど09年度当初比8157億円(14%)減の4兆9167億円に抑えたほか、農水省も1493億円(15%)減の8459億円まで絞り込んだ。
各省は政権交代前に策定された概算要求基準(シーリング)に基づき、8月末に概算要求を提出したが、鳩山由紀夫首相はシーリングを撤廃。公約に盛り込んだ政策を実現するための経費を除き、09年度当初予算(88兆5480億円)以下に抑えることを前提に、要求を出し直すよう指示していた。だが、要求総額が膨らんだ上、一部の省庁は概算要求以外に、年末までに予算化するかを検討する項目を別途、提出。総務省は地方交付税増額を、厚労省は生活保護の母子加算復活などを求めた。省エネ家電への買い替えを促進するエコポイントは、概算要求に盛り込まれず、環境省が検討課題に挙げるにとどまった。環境対応車(エコカー)買い替えへの補助金も経済産業省が要求を見送った。【平地修、谷川貴史】
毎日新聞 2009年10月16日 東京朝刊