ベテラン芸能記者が島田紳助の恫喝事件に見る「芸人の立場と質の変化」
2009年10月16日15時00分 / 提供:日刊サイゾー
10月3日に放送されたTBS系列恒例の『オールスター感謝祭09』の放送中、司会の島田紳助が、今年の『キングオブコント』で優勝した若手お笑いトリオの東京03にマジ切れして、「お前ら、潰すぞ!」と恫喝したことが話題となった。ネット上では、この紳助の言動を擁護するかのような発言をしたオール巨人のブログが炎上したり、このときの映像がYouTubeにアップされたりするなど、ちょっとした騒ぎになっていた。
この業界に30年以上、身を置いている筆者としてみれば、何をそんなに大騒ぎを、と思っていたが、今回の問題は現在のお笑い業界のひとつの側面を浮き彫りにしているのかもしれない。それは、芸人の立場と質の変化だ。
筆者は、今回の件について、親しい吉本興業の幹部から事情を聞いた。
「普通、若手お笑いタレントは、司会の紳助のところに本番前に挨拶に行くのが常識です。いくら『キングオブコント』で優勝したといっても、紳助は初めて会うんですから、メンバーの顔もわからない。それでは、番組内で彼らに絡みようもなく、司会者としての義務も果たせません。それで、思わず切れたんですが、一部で言われているような暴力は振るってません」
さらに、番組関係者はこう語っている。
「東京03は、本番ギリギリにスタジオに入ってきたんです。『キングオブコント』で優勝して急に売れ出したから、うまくスケジュール調整ができなくなっていたんでしょう。事務所のスケジュールの切り方にも問題はありますが、それにしても、紳助さんに挨拶をしなかったのは、まずいですよ。司会が顔を知らないということは、番組の進行にも影響しますからね」
紳助が、もし「お前ら、潰すぞ!」と本当に言ったなら、その傲慢な言葉はいただけない。しかし、挨拶なしというのは、芸人の世界では許されない。この「たかが挨拶」に対する芸人や事務所側の考え方の変化こそ、前述した芸人の立場や質の変化と関係しているように感じるのだ。
筆者がプロデュースしたビートたけしの著書『下世話な作法』(祥伝社)の中でたけしは、「芸人は社会の底辺にいる」と語っている。
昭和30年代以降、テレビ時代が幕開けしたときも、芸人の地位は役者や歌手よりずっと下だった。よくも悪くも、社会の底辺にいるという疎外感が、常識人には生み出せない言動を生み、常識人を楽しませてきた。そして、その底辺には、底辺なりの、一般社会とは異なるルールがあったのだ。そのルールの一つが、絶対的な上下関係であり、先輩への挨拶であり、何よりも優先して、笑いを貪欲に追求する姿勢だったのだ。
ところが、時代は流れ、番組の変質=視聴者の変質とともに、芸人の地位が向上。特に、素人っぽさをウリにしたとんねるずや吉本のNSC出身のダウンタウンがブレークしてから、芸人自体が大きく変質した。それまで、芸人を目指すものは、憧れる芸人に弟子入りして、修行を積み、その中で底辺で生きるゆえのルールを身につけた。それは、ある意味、社会を捨てる行為でもあった。だが、ダウンタウン以降、お笑い芸人は若者たちの憧れの「職業」になり、タレント養成学校に人々が殺到した。番組側も、一癖も二癖もある昔の芸人とは違い、使い勝手がいい彼らを重用しては、使い捨ててきた。
たけしは『下世話な作法』で「芸のある芸人は、演芸場だったら下足の揃え方から楽屋の入り方、化粧前の片付け方、全部ちゃんとしていて挨拶も出来できる、作法に外れていないから、まわりの人はいい気持ちになる。それに、そういう芸人は必ずといっていいぐらい腰が低いしね。誰にでも頭を下げて"どうも""すいません"と言える」と語っている。
養成学校出身の芸人は、売れない辛さは背負っても、修行の厳しさは知らない。また、ブレークしたお笑いはジャニーズ事務所のアイドル並に騒がれて、芸の稚拙さに気がつかず、勘違いするケースが多い。たけしは「芸人の資質は作法ができるかどうかで決まってくる。作法がまともじゃないやつは出世できない」と言っている。そうした作法は、芸に貪欲に追求する姿勢と重なるのだ。
今回、東京03は、あれだけのタレントや芸人が一同に介する『オールスター感謝祭』で、キングオブコントの優勝者として、それなりに"目立ち"、"笑いを取る"責任があったはずだ。視聴者も番組側も、そんな注目株の彼らと大御所・紳助の絡みを期待していた。しかし、それまで一面識もない両者が番組内で絡むには、事前の挨拶は必須。何よりも最優先すべきだったのだろう。東京03は、自らオイシイ役回りを放棄した形となってしまった。スケジュール的にそれが許されなかったとしたら、事務所にも責任がないとは言えない。
今の芸人は、客から笑われることが平気だ。しかし、芸人は笑われるのではなく、客や視聴者を笑わせないとシャレにならない。今回の事件は双方シャレにならない事態になったが、東京03は、たけしの言葉を肝に銘じることだろう。
(文=本多圭)
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この業界に30年以上、身を置いている筆者としてみれば、何をそんなに大騒ぎを、と思っていたが、今回の問題は現在のお笑い業界のひとつの側面を浮き彫りにしているのかもしれない。それは、芸人の立場と質の変化だ。
筆者は、今回の件について、親しい吉本興業の幹部から事情を聞いた。
「普通、若手お笑いタレントは、司会の紳助のところに本番前に挨拶に行くのが常識です。いくら『キングオブコント』で優勝したといっても、紳助は初めて会うんですから、メンバーの顔もわからない。それでは、番組内で彼らに絡みようもなく、司会者としての義務も果たせません。それで、思わず切れたんですが、一部で言われているような暴力は振るってません」
さらに、番組関係者はこう語っている。
「東京03は、本番ギリギリにスタジオに入ってきたんです。『キングオブコント』で優勝して急に売れ出したから、うまくスケジュール調整ができなくなっていたんでしょう。事務所のスケジュールの切り方にも問題はありますが、それにしても、紳助さんに挨拶をしなかったのは、まずいですよ。司会が顔を知らないということは、番組の進行にも影響しますからね」
紳助が、もし「お前ら、潰すぞ!」と本当に言ったなら、その傲慢な言葉はいただけない。しかし、挨拶なしというのは、芸人の世界では許されない。この「たかが挨拶」に対する芸人や事務所側の考え方の変化こそ、前述した芸人の立場や質の変化と関係しているように感じるのだ。
筆者がプロデュースしたビートたけしの著書『下世話な作法』(祥伝社)の中でたけしは、「芸人は社会の底辺にいる」と語っている。
昭和30年代以降、テレビ時代が幕開けしたときも、芸人の地位は役者や歌手よりずっと下だった。よくも悪くも、社会の底辺にいるという疎外感が、常識人には生み出せない言動を生み、常識人を楽しませてきた。そして、その底辺には、底辺なりの、一般社会とは異なるルールがあったのだ。そのルールの一つが、絶対的な上下関係であり、先輩への挨拶であり、何よりも優先して、笑いを貪欲に追求する姿勢だったのだ。
ところが、時代は流れ、番組の変質=視聴者の変質とともに、芸人の地位が向上。特に、素人っぽさをウリにしたとんねるずや吉本のNSC出身のダウンタウンがブレークしてから、芸人自体が大きく変質した。それまで、芸人を目指すものは、憧れる芸人に弟子入りして、修行を積み、その中で底辺で生きるゆえのルールを身につけた。それは、ある意味、社会を捨てる行為でもあった。だが、ダウンタウン以降、お笑い芸人は若者たちの憧れの「職業」になり、タレント養成学校に人々が殺到した。番組側も、一癖も二癖もある昔の芸人とは違い、使い勝手がいい彼らを重用しては、使い捨ててきた。
たけしは『下世話な作法』で「芸のある芸人は、演芸場だったら下足の揃え方から楽屋の入り方、化粧前の片付け方、全部ちゃんとしていて挨拶も出来できる、作法に外れていないから、まわりの人はいい気持ちになる。それに、そういう芸人は必ずといっていいぐらい腰が低いしね。誰にでも頭を下げて"どうも""すいません"と言える」と語っている。
養成学校出身の芸人は、売れない辛さは背負っても、修行の厳しさは知らない。また、ブレークしたお笑いはジャニーズ事務所のアイドル並に騒がれて、芸の稚拙さに気がつかず、勘違いするケースが多い。たけしは「芸人の資質は作法ができるかどうかで決まってくる。作法がまともじゃないやつは出世できない」と言っている。そうした作法は、芸に貪欲に追求する姿勢と重なるのだ。
今回、東京03は、あれだけのタレントや芸人が一同に介する『オールスター感謝祭』で、キングオブコントの優勝者として、それなりに"目立ち"、"笑いを取る"責任があったはずだ。視聴者も番組側も、そんな注目株の彼らと大御所・紳助の絡みを期待していた。しかし、それまで一面識もない両者が番組内で絡むには、事前の挨拶は必須。何よりも最優先すべきだったのだろう。東京03は、自らオイシイ役回りを放棄した形となってしまった。スケジュール的にそれが許されなかったとしたら、事務所にも責任がないとは言えない。
今の芸人は、客から笑われることが平気だ。しかし、芸人は笑われるのではなく、客や視聴者を笑わせないとシャレにならない。今回の事件は双方シャレにならない事態になったが、東京03は、たけしの言葉を肝に銘じることだろう。
(文=本多圭)
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