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〈09政権選択さが 最前線ルポ〉2区 民主、保守地盤攻める

2009年8月21日

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 20日午後1時前、鹿島市のJAさが鹿島中央支所であった自民前職・今村雅弘氏の街頭演説会。強い日差しの照りつける駐車場に集まった農協役員や職員約100人が、今村氏の選対本部長を務める野口好啓・JAさが組合長の怒声に静まり返った。

 「今村先生の地元・鹿島がこの2区で一番厳しい状況だ。一体何しよっとか。そこにいらっしゃる大塚先生に顔向けできない」。05年衆院選で今村氏に約1万6千票及ばず敗れたものの比例復活し、今村氏の5選を脅かす民主前職の大串博志氏を意識しての発言だ。

 野口組合長が見やったのは、会館玄関わきに立つ故・大塚清次郎参院議員の銅像。鹿島市農協組合長を24年間務め、県内農協の政治組織「県農政協議会」を支持母体に参院選佐賀選挙区で2回当選、95年に任期半ばで急逝した。佐賀の農協が組織内から出した最後の国会議員だ。

 鹿島市は、参院では大塚氏、中選挙区時代の衆院では愛野興一郎氏や父の時一郎氏(いずれも故人)ら、戦後ほぼ絶え間なく保守系国会議員が輩出し続けた。大学進学まで鹿島市で過ごし、96年から4選を重ねる今村氏も、この系譜に連なる。

 藩政時代には鍋島藩の支藩が置かれた地。17日現在の選挙人名簿登録者数が2万5394人と、選挙区内11市町(佐賀市などは一部)では3番目の規模に過ぎないが、今村陣営の土井敏行県議(自民、鹿島市・藤津郡区)は「政治的には人口では計れない重みがある土地」という。

 その鹿島で、今村陣営の弁士らは「かつてない危機だ」と口々に異変を訴えた。

 最後に登壇した今村氏は「民主党は日米FTA(自由貿易協定)の話を持ち出した。これをやったら農業や農村が壊滅する。古里を守るためぜひ私を再び国政に上げて欲しい」と訴えた。自民党鹿島市支部長の橋爪敏・鹿島市議長は、民主党がマニフェスト(政権公約)に盛り込んだFTAの問題点が浸透すれば、優位に立てるとにらむ。

     ◇

 大串陣営も「鹿島を制する者は2区を制す」(藤雅仁・西地区選対責任者)として今村氏と同様に事務所を鹿島市にも構える。公示日の夕も、佐賀市久保田町の事務所とは別に鹿島市の事務所でも出陣式を開き、党員やサポーターら約80人が気勢を上げた。

 鹿島市内では数人単位の集会をこまめに開き、支持を広げてきた大串氏。浸透のきっかけは九州新幹線西九州(長崎)ルート問題だった。鹿島市がルートから外れた場合のJR長崎線存続を危ぶんだ桑原允彦市長は、反対の急先鋒(きゅうせんぽう)に。大串氏も「新幹線不要」と同調し、06年の市長選で桑原氏支援に回った。

 農業でも民主党がマニフェストの柱の一つに掲げる、米などの販売価格が生産に要した費用を下回る場合に差額を農家に支払う「戸別所得補償制度」の導入を説き、農家の支持を取り付けつつある。

 20日、大串氏は佐賀市諸富町で朝立ちの後、選挙カーで「政権交代」を訴えて佐賀市の旧町村部などを回った。24日には再び鹿島市入りする。

 鹿島市では、07年参院選で当選した民主の川崎稔氏が、自民候補に得票率で14ポイントの大差をつけている。このことを引き合いに、鹿島における大串陣営の選対責任者である藤氏は語る。「鹿島で地殻変動はすでに起きた。流れは元に戻らない」(市川雄輝)

■鹿島市の主な選挙での各候補の得票

●03年 衆院選

 今村雅弘 自 12,636

 諸田稔  共  2,138

●04年 参院選

 岩永浩美 自  7,076

 川崎稔  民  6,531

 武藤明美 共  1,209

●05年 衆院選

 今村雅弘 無  9,155

 大串博志 民  4,973

 土開千昭 自  3,054

 石丸泰男 共    557

●06年 鹿島市長選

 桑原允彦 無 10,439

 中西裕司 無  7,830(自推薦)

●07年 参院選

 川崎稔  民  8,430

 川上義幸 自  6,239

 中尾純子 共    830

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