猿も木から落ちる。弘法も筆を誤る。だけど、プロの棋士ではあり得ない。いや、アマチュアでもめったにない“ハプニング”が起こった。
石橋が先勝し、相矢倉の戦いとなった第20期女流王位戦5番勝負の第2局。勢いに乗る石橋の優勢で迎えた午後6時53分だった。
石橋は129手目で6六の角を2二角成とし、“王手”をかけたが、途中の4四には自らの歩。本来は動かせない場所に駒を置いたとして、反則負けとなった。持ち時間各4時間のうち、清水は1分将棋だったが、石橋は20分残しており、まさに痛恨の一手。後手の清水が石橋の反則によって勝ち、1勝1敗のタイとなった。
日本将棋連盟によると、将棋のタイトル戦での反則負けは「男女を通じ、過去20年間では前例がない」(手合課)。また同連盟関係者によると、1954年の第13期名人戦7番勝負第2局で、大山康晴名人に挑戦した升田幸三八段が時間切れで反則負けをしたという。このときの波乱も「第2局」。単なる偶然か、魔物が潜むのか。周囲も思わず目が点になってしまった。
3連覇を目指す石橋に対し、女流王位通算13期の清水が3年ぶりの復位を目指す戦い。今期、男性棋士に3連勝するなど好調を持続する石橋は、15日までに自身のブログを更新、前代未聞の反則負けを語った。
「自分でも何がおこったのかわかりませんでした。(中略)観て応援してくださっていた皆さんにはお詫びよりありません。まぁ悪手以前の問題ですから、気持ちは大丈夫です。また三番勝負になっただけです。来週がんばります!」などと綴っている。
石橋にとっての“仕切り直し”となる第3局は10月21日、福岡県飯塚市の「旧伊藤伝右衛門邸」で行われる。