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きょうの社説 2009年10月16日
◎概算要求再提出 地方に目配りを忘れずに
鳩山内閣が見直し作業を進めていた2010年度政府予算の概算要求額は、過去最大の
90兆円台に達する見通しとなった。今年度一般会計予算の約88兆円を上回り、削減は進まなかったが、本格回復がほど遠い景気動向を考えれば、来年度も一定規模の政府支出は避けられない。予算編成は例年より1カ月半遅れており、年末に間に合わせるためにも作業を加速させる必要がある。これから行政刷新会議や財務省が中心となり、優先度の低い事業を洗い出す作業が本格 化する。概算要求は各省庁で削減基準などが統一されておらず、全体を見渡しての調整は不可欠だが、「削減ありき」の強引な査定では景気の下押し要因になりかねない。地方と景気浮揚への目配りを忘れず、中身をより効果的なものに磨き上げていくという視点が大事である。 見直し対象になっていた北陸など整備新幹線事業費は、国土交通省の公共事業費が軒並 み削減されたなかで今年度と同額が盛り込まれた。一方、金沢ー福井間の新規着工調査費は削減され、年末の予算編成へ向けて楽観は許されない状況である。 鳩山内閣の概算要求やり直しや今年度補正予算の見直し作業では、「政治主導」を意識 するあまり、閣僚のトップダウンによる指示も目立った。時間的な制約もあろうが、現場を十分に見ず、地方の声にも耳を傾けない姿勢では困る。政治主導が「中央主導」に陥らないよう、今後の査定作業のなかでも地方重視の基本路線は維持してほしい。 今年度の税収見込みは数兆円の減少が見込まれ、鳩山由紀夫首相が赤字国債増発にも言 及したのは妥当な判断といえる。数字合わせに汲々として予算編成に手間取らないためにも国債発行については柔軟な判断が求められる。 鳩山首相は年内に2次補正予算案をまとめ、来年の通常国会冒頭で早期成立を図り、来 年度予算と一体的に執行する「15カ月予算」とする考えも表明した。来年度から実施する「子ども手当」など政権公約の一部を前倒しする案にも言及したが、景気刺激策という点では、そうした考え方も選択肢の一つとなろう。
◎給油中止を伝達 代替策の費用対効果は
長島昭久防衛政務官が、インド洋で給油活動を行う海上自衛隊部隊を、新テロ特措法の
期限が切れる来年1月に撤収する方針を米政府に伝えた。米側は「給油活動の是非は基本的に日本側が決めることだ」と理解を示したというが、米国をはじめ「テロとの戦い」に参加する国々が納得する、より効果的なアフガニスタン支援策の実施は、ある意味では給油活動以上の難題といえる。海自の給油活動は、日本が「テロとの戦い」に参加していることを示す象徴的な活動で あり、日本がなし得る効果的な人的貢献策として国際社会の評価を得ている。今後、費用対効果の面から給油活動を検証する必要もあるが、防衛省の資料によると、2001年12月から07年8月までに提供した艦船用燃料は約48万4千キロリットルで、費用は約220億円となっている。また、08年3月から7月の給油実績でみると、1カ月の平均費用は約1億6千万円という。 給油活動を中止するとなれば、費用対効果の面から、給油以上の効果と評価を得られる 支援活動を考えなければならない。 長島政務官の説明に対して米側は、給油の代替策として鳩山政権が考えている民生面の 支援強化に期待を示したという。しかし、アフガンへの増派を検討しているオバマ政権は、自衛隊の人的支援がなくなることで、戦費の負担を求めてくることもあり得る。 ブッシュ前政権の時、アフガン本土への自衛隊派遣を見送る代わりに、湾岸戦争時を上 回る巨額の戦費負担を期待する声が米側から出され、政府を慌てさせたことがある。鳩山政権はアフガンの治安維持費用の分担要求を想定しているのかどうか。 日本は今年夏までに、約1680億円に上るアフガン復興・人道支援事業を行っている 。鳩山政権は農業振興や元タリバン兵士の職業訓練などを検討している。アフガンの再建には長期の民生支援が不可欠ではあるが、給油活動の中止でかえって経費が膨れあがる一方、テロとの戦いからの離脱で国際的な評価が低下するという懸念もぬぐえない。
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