中川昭一氏の死の真相は? 不可解な睡眠薬報道と不眠症患者に与える影響

2009-10-12 00:00:10 Theme: 政治・経済・社会問題・報道

<<第1章 日本の睡眠薬では自殺できない>>



 元衆議院議員で元財務大臣の中川昭一氏が

10月4日、急逝した。筆者は面識やお会いした経験がないが、「本当に残念だ」というのが偽らざる本音である。この場を借りて、ご冥福をお祈りする。



 北海道では、中川昭一氏が日本や北海道に残したプラス面とマイナス面の双方が語られているが、ここでは政策面を抜きにして「報道のあり方」「死の真相」について考えたい。



 まずは、中川昭一氏が死去したという第一報を伝える、地元の北海道新聞を見て欲しい。




ジ・オンライン・プレス北海道



 サブタイトルには「睡眠薬服用、病死か 東京の自宅ベッドで」と書かれてある。



 なにか、「睡眠薬の服用が、中川昭一氏を死へと追いやったのか?」とも取れるタイトルだ。

10月4日に報道された日本テレビの「報道真相バンキシャ!」でも、「衝撃の事実」として睡眠薬服用の件が取り上げられていた。本当に、それが「衝撃の事実」なのだろうか? 筆者は、北海道で長年開業医を勤める、ある心療内科医に話を聞いてみた。



 筆者の「睡眠薬で死に追いやられるようなことは、あるのですか?」との問に、心療内科医「通常、病院で処方される睡眠薬を全部服用してしまっても、それだけで死亡するようなことはない」と、明確に答えた。



 それでは、どのようなケースで死に至ることが考えられるのであろうか?

 心療内科医は、「睡眠薬に限らず、どの薬においても可能性があるのだが」と前置きした上で、こう語った。「お酒と一緒に服用すれば、危険な状態になるケースはある。薬が肝臓で分解されないため、さまざまな症状を引き起こすことも考えられる。筋弛緩(きんしかん)作用が働き、横隔膜の動きを鈍らせることもある。つまり、呼吸ができなくなるということだ」。




<<第2章 不眠症患者への誤解を与えかねないマスコミ報道>>



 現在、日本には不眠症を訴えたり、うつ症状を訴えたりして、心療内科に通院する人が多い。景気の悪化とともに、その患者数が増えているとも言われる。




 北海道新聞のように、「睡眠薬服用、病死か 東京の自宅ベッドで」と報道すると、それらの患者や患者の職場などに、誤解や間違ったメッセージを発信することにならないだろうか? それでなくても、うつ病や不眠症を訴える患者は、その病気を理由にして不当な減給や解雇を経験することもある。



 さらに、これを見て欲しい。同じ北海道新聞が報道している記事だ。


【民間企業の障害者雇用率 「法定」達成は50%以下】
http://www.hokkaido-np.co.jp/cont/kurashi-senka/46024.html



 うつ病や不眠症を訴える患者には、申請をして一定の条件を満たし、本人が希望すれば、障害者手帳が交付される。これらの報道は、ただでさえ厳しい状況におかれた障害者雇用を悪化させ、現場を混乱させることにならないだろうか?




<<第3章 「大量の睡眠薬」という報道が語る意味>>



 それでは、「大量の睡眠薬が寝室の机から発見された」という報道は、どういうことなのだろうか?



 前述の心療内科医に、「もし落選した8月31日に通院を開始した場合、10月4日の死亡時には、どの程度の睡眠薬が処方されていたと考えられますか?」と質問した。そうすると「1週間です。その後、症状や精神状態を診ながら、2週間分を処方することもあります。容態がかなり安定したケースになると、4週間分を出します」と、明確な返事が返ってきた。



 もし本当に「大量の睡眠薬が寝室の机から発見された」のであれば、処方された1週間分の薬が、ほとんど飲み残されていたことになる。つまり、通常の量か、それに準ずる量しか服用していなかったことになるのだ。マスコミ報道に釈然(しゃくぜん)としないのは、筆者だけだろうか?




<<第4章 報道する側の責任>>



 一部マスコミでは、中川昭一氏の自殺説まで出ている。しかし、前述したように、日本の病院で処方された睡眠薬で自殺するのは、不可能なのだ。



 それならば、警視庁の検死でアルコール成分が検出された中川昭一氏は、あえて酒と睡眠薬を混合して自殺したのだろうか? そう考えるのには、無理があるのではないだろうか? なぜなら、「自分の体の場合、どの程度の酒と通常量の睡眠薬で死に至るか?」という、極めて専門的な医学知識を経済学部や法学部で学んだ中川昭一氏が知っている可能性は、極めて低いからだ。




 腑(ふ)に落ちないマスコミ報道は、これだけではない。冒頭で紹介した北海道新聞は、「睡眠薬服用、病死か 東京の自宅ベッドで」と報道しながら、その後は「死と睡眠薬服用の因果関係」をまったく報道していない点だ。




ジ・オンライン・プレス北海道


(写真は、「睡眠薬報道」の翌日(10月6日)の北海道新聞。)




 これでは、「報道する側の責任」を放棄しているとしか思えない。もし仮に睡眠薬だけが死因なのであれば、これは医療事故ということになる。報道した以上は、自らが報道した内容を追跡する責任があるのではないだろうか?




 報道する側が医学的根拠を持たずに報道をしていると感じるのは、筆者だけだろうか? 海外ドラマや海外映画などで時々見かける「睡眠薬で自殺」というストーリーと混同しているように思えて仕方ない。





<<第5章 保守派の論客だったのに…>>



 不思議な巡り合わせとも言うべきか、2012年度に全面施行される新学習指導要領には、「薬の正しい使用」という科目が盛り込まれることになったと、10月9日の毎日新聞が報道した。これは、自民党政権下で作られたものである。




ジ・オンライン・プレス北海道

(2009年10月9日に、毎日新聞が報道した記事。記事は政治面ではなく、「くらしナビ」という健康のページに掲載された。)




 新学習指導要領には、「お酒も薬と一緒に飲めば危険」と盛り込まれるという。



 中川昭一氏と言えば、有名な保守派の論客だ。なぜ、保守派の論客が自民党政権下で作られた新学習指導要領の内容を知らなかったのだろうか? しかも、中学生のような子供たちに教える予定の内容だ。




 遺体からもアルコールが検出されたことから、最期まで飲酒をしていたことが想像できるだけに、残念でならない。



「日本が危ない」と自身のホームページで論じる前に、「自らの健康状態が危ない」と考えて欲しかったと、筆者は悔やんでしまう。




 ご本人は、やり残したことがたくさんあったはずだ。子供たちの成長も、見届けたかったであろう。無念さでいっぱいのはずだが、ただただ「安らかに、お眠りください」としか申し上げられないことは、残念なことだ。




 それと同時に、読者の皆様へは不眠症で睡眠薬を服用する患者へ誤解や偏見、間違った知識を持たないよう、切にお願い申し上げたい。

Comments

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1 ■こんばんは

台風は大丈夫だったみたいですね。


マスコミの影響力、すごいですね。ただそのマスコミのコメントにも責任が無いように感じます。テレビ番組も競争で、インパクトのあるものが必要なんでしょうね。

責任あるものを作る上で、第三者の監査などが今より重要なんですかね。
難しい問題ですね(汗)

2 ■コメありがとうございます。

亀井発言「CIAが私を暗殺するならヤってみろ!」には、中川の死亡があり、その前には植草教授の痴漢事件があるのです。

私はグローバル化が日本経済にダメージを与えるとして大反対でした。

私と同じ意見で専門家が討論する番組が日テレの土曜日にありました。

植草や日本新党の世話人になった紺谷が出演していました。

植草が痴漢で逮捕されると、確か次の放送時にレギュラーコメンテイタ-全員が一度に消えました。

植草が単なる痴漢なら消える必要はありません。

小室直樹の弟子の副島教授も当初から痴漢事件を調べていたようですが、最近雑誌に発表しています。

植草の後ろに、亀井、青木幹雄がいたのでした。

痴漢事件はCIAが関与していたと書いています。

詳しくはプログに書いてみます。

3 ■マスメディア。。。。。

報道や新聞がわれわれに与える影響は非常に大きいですよね。。。。その分無責任な根拠のない書きかたは 極力控えてほしいものですよね。
ただ 自分としては まわりがそーだといっても
おかしいぞと思ったら 流されないタイプでありたいと思っているので・・・・・
また 勉強させていただきます・・・・

4 ■中川氏

ブログを拝見させていただきました。

私もメディアの偏向報道を見るかぎり、「死」について疑問に感じていました。

ジャーナリストさんの検証を読み、死の「真実」に近づくことができました。

私は一部取り沙汰されている「陰謀説」なるものは信じません。
不可解な死であっても陰謀説に逃げるのはよくないと考えています。

一刻も早く死因を究明し、事実を報道してほしいと切に願っています。

無念の思いですが、「お酒と薬」この危険性を我々は感じ取るべきですね。

5 ■コメントありがとうございました

私も睡眠導入剤を服用しています、最初は2週間分でしたが今は4週間処方されます。
報道のいい加減さは今に始まった事ではないと思いますが、中川氏はお酒の飲み過ぎでかなり肝臓を含めた臓器が痛んでいたのではないかと推察します。そこに、普通程度の量の薬とお酒でダメージになったのではないかと。
こういう方の死は真実は報道されないのでしょうね。

6 ■マスコミ報道・・・

コメントいただき、ありがとうございました。
エントリを拝見しましたが、まだ死の真相は不明といったところなのですね・・・

こちらのコメントに、「マスコミ報道を見ていて、納得できない部分」とのことですが、今現在の日本のマスコミは、国民に伝えるべきことを伝えず、偏向や捏造、洗脳に勤しんでいる有様です。

ネットでは、マスコミを一切信用しないユーザーがどんどん増えています。
マスコミが客である視聴者を軽視し続けた“ツケ”を彼らが支払う結果になると予測しています。

7 ■コメントありがとうございます

実は僕も一時期不眠症で心療内科にかかっていました。

そこで睡眠導入剤(睡眠薬ではありません)を処方してもらっていたのですが、現在の導入剤は習慣性も毒性もなく、仮に多量に服用しても死ぬようなことはないと説明されました。

睡眠薬というもの、睡眠薬自殺というものに対する偏見や謝った理解が堂々とマスコミにあがってしまうことに恐怖すら感じます。

8 ■皆様、コメントありがとうございます。

皆様、コメントありがとうございます。皆様の真剣なご意見をありがたく拝見いたしております。


>タコつぼオーナー様

まさに、その通りだと思います。特に、新聞や雑誌も含め、「テレビ番組も競争で、インパクトのあるものが必要なんでしょうね」は、まさにその通りなのです。「売れる記事」に走りすぎているのか、「質の低下」は目に余るものがあります。

北海道新聞のように、地域に1社しかない新聞社は、競争相手がないせいか、緊張感に欠けます。

「第三者の監査」などは、本当に必要なことだと思います。雑誌や新聞社には、それらの団体がまったくありません。テレビ番組であれば「BPO(放送倫理・番組向上機構)」がありますが、このHPのトピックスを見ても分かるとおり、細部にまで目が届いていません。
http://www.bpo.gr.jp/

私たちが、おかしなマスコミには「おかしい」と大きな声を上げることが、今できる大事なことだと思います。


>四次元の私様

植草氏の逮捕に関しては、筆者は北海道在住ということもあり、取材をした経験がありません。そのため、ここでのコメントは差し控えさせていただきますね。

亀井大臣に関しては、筆者もお会いした経験があります。オフレコのときが、一番面白いですね。椅子から転げ落ちそうになるほど、笑わせていただいた経験があります。


>saori様

まったくその通りだと思います。根拠のないニュースは、「報道」ではなく、「うわさ話」でしかないのですよね…。

9 ■その2

>宏記様

「不可解な死であっても陰謀説に逃げるのはよくないと考えています」は、その通りだと思います。

たとえば、北朝鮮による拉致問題でも、金正日が拉致を認めるまで「陰謀説」を唱えていた国会議員が多くいました。その証拠として、現在の内閣にも拉致被害者の原敕晁(はら・ただあき)さんを拉致した実行犯である辛光洙(シン・グァンス)容疑者を解放するように主張していた大臣が2名もいます。

ただ、私たちの「一刻も早く死因を究明し、事実を報道してほしい」という願いは、難しいかもしれません。
なぜなら、現在は私人である中川昭一氏の遺族が「公表しないで」と言えば、それまでとなってしまうからです。


>晴彩(はるさい)様

今のマスコミには、それを報道するだけの「取材力」がないと思われます。
マスコミも会社組織であるため、採用試験の最終面接は「自分の言うことを聞いてくれそうな人」「自分と(主義・思想などの)話しの合う人」という一点に尽きるのですよね。


>特ア・バスター様

「マスコミが客である視聴者を軽視し続けた“ツケ”を彼らが支払う結果になると予測しています」は、その通りです。それどころか、雑誌や新聞などの紙媒体では、それが始まってしまっています。そこを単に「出版不況」で片付けてしまっている経営者たちは、「残念」としか言いようがありません。


>zad37877様

まったくその通りだと思います。マスコミは「心療内科に通う患者の偏見を助長しているのは自分たちだ」と、いつ気が付くのでしょうね?

また、zad37877様がご自身のブログで書いてくださった「一方で自民党が宣伝に使うのも気に入りませんね」も、その通りだと思います。中川氏の死をプロパガンダに使わざるを得ないほど、自民党の質が落ちたのも残念です。これでは、ご遺族がかわいそうです。

10 ■数年前から

中川さんは数年前も国会答弁中にしどろもどろになることがあったそうです。ひどい腰痛もちで鎮痛剤を飲んでいて、その副作用でふらふらになってしまったと。
アルコールをやめるより先に腰の手術をして鎮痛剤が不要な体になったほうが体にかかる負担は少なかったのかなという気がします。
すべて憶測ですが。マスコミも憶測レベルで公共の電波を使うから始末に負えませんね。

11 ■No Title

中川昭一氏が亡くなって茫然自失状態でした。
亡き彼は次期総理として日本の再興を担える第一人者と期待されていた愛国政治家が・・
西村さんが私も発起人になっている会にきていただける事になったので詳しく聞いてみます。
http://aikoku1192.blog68.fc2.com/

12 ■ブログへのコメントありがとうございました。

この世は自己責任で、物事をどのように受け取るのかも自由ですが

マスコミはどの方向へ行きたいのでしょうね。
彼らは目の前の獲物しか目に入れておらず
毎日毎日信頼を失っていっているように思えます。

睡眠薬は医師から処方される時に必ず医師からの説明があるのが普通ですよね。

ご本人が忙しすぎる・・・もしくは自分の事以外に一生懸命過ぎる人だったとしたら
どなたかが守ってあげられたら良かったかもしれませんね。

亡くなられてからも吊るし上げられ、噂され、
または大人なのに無頓着だと言われることは、お気の毒だと私は思いました。

13 ■コメントありがとうございます。

皆様、本当にコメントありがとうございます。

>memotyo様

中川昭一氏と飲酒にまつわるエピソードは、筆者も報道などで伝え聞いております。ただ、それがアルコール依存症という病気なのか、単に酒癖が悪かったのかは、確認が取れていません。
もしアルコール依存症という病気であれば、治療に専念して欲しかったというのが率直な筆者の意見です。

マスコミに関しては、⑧~⑨に書かせていただきましたとおり、質が低下しているとしか言いようがありません。


>sis2400様

改めて、ご冥福をお祈りいたします。そして、勉強会が成功いたしますことを祈念いたします。

>£ala様

マスコミに関してですが、民主党に政権交代したり、コネクションのなかった社民党までも政権に加わったことで、これまでの「人脈ルート」による取材が出来なくなってしまったはずです。それで、あわてているものと思えます。
人脈ルートがなくても原稿の締め切り時間は来る…。そんな中で「行き先」を失っているのでしょう。

中川昭一氏の長女がフジテレビ社会部記者であることを考えれば…。それ以上は、筆者が語る必要もないでしょう。(お嬢様が悪いとか、問題があるという意味ではありません。誤解なさらないでくださいね。お嬢様には、立派な記者になっていただきたいです。)


「どなたかが守ってあげられたら良かった」は、ご遺族が一番悔いているはずです。本当に、気の毒に思えて仕方ありません。

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