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ウの目タカの目・紙面審だより:北九州の男児自殺裁判 体罰の重さ考える記事を

 福岡地裁小倉支部は1日、北九州市の小学5年の男児が自殺したのは、担任の女性教諭の体罰が原因と認め、市に両親への損害賠償の支払いを命じた。男児は教室で棒状に丸めた新聞紙を振り回し女児に当てたとして担任に胸ぐらをつかまれてゆすられ、床に倒れた。その後、教室を飛び出し、自宅で首をつった。

 今年4月に最高裁が、熊本県の小学校教員が2年生男児の胸元をつかんで壁に押し付けた行為を「体罰に当たらない」と判断した後だけに、両親や支援者にとっては画期的な判決となった。

 本紙は1日夕刊で一報を伝え、2日朝刊の1面、社会面で他紙を上回る展開をした。「教師にも親にも影響が大きい判決で、これぐらいの扱いは必要」と紙面審は評価した。

 判決は体罰とともに「精神的衝撃を和らげる安全配慮義務がありながら放置した」と認定した。その中に担任が教室を飛び出した男児を追わなかっただけでなく、戻ってきた男児に「何で戻ってきた」と怒鳴りつけたことも含まれている。男児には胸に突き刺さる言葉であっただろう。男児はこの後、再び教室を飛び出し首をつった。

 本紙には「何で戻ってきた」の記述が抜けていた。紙面審は「精神的に突き放す象徴的な言葉で必要だった」と指摘した。

 体罰に対する司法判断は分かれている。同じ教師の行為でも子供、親によって受け取り方が異なる。

 だが、教師のどんな言動が子供たちを追い詰めるのかを、もう一度見つめ直すことは大切だ。「今回の判決の重みと背景を再度考える記事が欲しい」と紙面審は注文した。

 9月下旬から8日まで「境界を生きる」のタイトルで性分化疾患の問題を朝刊で6回取り上げた。今年8月、ベルリン世界陸上選手権女子八百メートルで優勝した南アフリカのキャスター・セメンヤ選手の性別を疑われる問題が起きた後だけにタイムリーな企画となった。

 人知れず悩み、いじめの対象や自殺に追い込まれた具体例も盛り込んだ。「声を上げづらい患者や家族に代わって、つらい現状を伝え、問題提起するという新聞本来の役目を果たす紙面となった」と評価した。【紙面審査会幹事 松田幸三】(最終版を基に執筆、次回は11月5日)

毎日新聞 2009年10月15日 西部朝刊

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