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パソコンソフト「Winny(ウィニー)」開発者に対する大阪高裁の判決は、「全くおかしい」の一言に尽きる。 10月8日に出たこの事件の判決では、「違法にコピーさせる事を前提にしてはおらず、被告はむしろ『違法目的に使用しないように』と呼びかけている」的な判決理由で、一審とは逆に「無罪」としている。 この理論は、「単純に事実を見れば、そう言えなくもない」と見做せるが、「事実をキチンと見れば、まるっきりおかど違いな判決」だ。 例えば、数年前、Winnyの開発者として、この犯人が逮捕された時に、全国的な大新聞社である朝日新聞には、大々的に「このWinny開発者が『違法コピーの幇助に当たる』というのなら、では、『人が、包丁で殺人』を実行した場合、包丁を作った人が、『殺人の幇助』になるのかと指摘している専門家もいる」−−−(つまり「殺人の幇助には、ならない)−−−という趣旨の記事が載っていた。 つまり、この記事の要点は、「誰かが包丁を使って人を殺しても、『包丁を作った人』は、『法律上殺人の幇助にはならない』」のだから、それと同じで、「誰かがWinnyを使って違法コピーをしたとしても、Winnyの作者は、『違法コピーの幇助には、ならないはず』」というところにある。 現実に、朝日新聞社は、今でもこの考えに捉われているようで、10月8日の大阪高裁判決を支持する「社説」を、10月9日の新聞に掲載している。 だが、「この発想」には、大変な欠陥があり、とても法律理論として、まかり通るものではない。 なぜなら、「そもそも、包丁を作っている者(会社や職人)は、包丁を『人殺しの道具として、造っているのではない』という事が、完全に無視されている」という点だ。 「包丁を作っている者は、包丁を『料理の具等を処理する道具』として造っている」のであり、本来は、料理道具である。 それを、殺人犯が殺人に使っているのは、「たまたま、殺人に使い易いから、使っただけ」であって、殺人者が勝手に「本来の使用目的外に使った」に過ぎない。 同様に、「金属バット」を使ったり、「練炭」を使ったり、「タオル等をクビ締め用」に使ったりして、殺人の道具に使う者は多いが、これらは、「殺人者が勝手に、『本来の使用目的外』に使っている」のである。 だからこそ、「殺人事件の道具として、これらの物が使われた」としても、「これらの道具を作った職人」が、「殺人の幇助罪(幇助罪とは、『手助けする』という意味の罪)」で逮捕される事は、これまで1度もなかったし、これからも多分、半永久的にないだろう。 つまり「包丁が殺人に使われたら、包丁を作った職人が『殺人罪の幇助』になるのか」という発想自体が、トンチンカンで、まるっきり「おかど違いな発想」なのである。 さて、話を元に戻すと、「Winnyの作者は、最初からWinnyを『ファイルコピー用ソフト』として作っている」という点を、まず、重要視しなければならない。 つまり、「Winnyとは、ファイルをコピーさせることが、本来の目的のソフトだ」とも言える。 ところで、わが国では、「コピー実行用のソフトは、一体何に使われるのか」といえば、圧倒的に多いのは、「今流行している音楽のコピーや、今話題になっている映画など映像コピー」だろう。 そして、ここで何より注意しないとならない点は、「それらのコピーの元となっている『原版の音楽』や『原版の映像』は、大抵、コピーしている本人の著作物ではなく、『他人の著作権物』である」という点だ。 無論、「自ら音楽を創って、それを無料で人にコピーさせる者」や「自ら映画や映像を創って、無料でコピーさせるという者」も、世の中に存在はしているが、全体としてみれば、1000人の内、100人いるかいないか程度だろう。しかも、「コピー回数」という量的観点からは、本来は有料の「有名タレントの物」が、99%程度と考えられる。 何百万円もお金をかけてCDを創り、それを無料で一般人にコピーさせている者や、何億円もお金をかけて映画を創り、それを一般人に無料でコピーさせる者は、原則としていないのである。 つまり、コピーしている人の90〜99%程度の人は、「他人の著作物を、有料でコピーしている」か、または「他人の著作物を、違法にコピーしている」という事になる。 、例えば、「モーニング娘のある曲」が、ヒットし、ファンの1人がその曲を原版からコピーしようとすれば、著作権者である作曲家や所属事務所或いは音楽著作権協会などから、何らかの許可を得て、はじめて合法的にコピー出来る仕組みとなっている。もっと具体的に言えば、「代価を払う」という手段で、CDを買ったり、パソコンにダウンロードしたり出来るという事になる。 この時、「代価を払いたくない者」や「お金に余裕の無い者」は、それを得ようとすれば、盗んだり違法コピーする事になってしまう。 そして、Winnyの如く、「コピー実行用の無料ソフト」が出回るとしたら、「違法とは知りつつも、Winnyを使って違法にコピーしよう」と考える国民が出現するのは、当然である。 つまり、「違法コピー行為の容易化」をWinnyが手助けしている訳であり、法律用語で言えば「違法コピー行為を、幇助している」に他ならない。 これは、「本来なら、自ら違法コピーを実行出来ない者に、違法コピー行為可能なソフトを与えて、違法コピーの実行を可能とさせているのがWinnyだ」とも言える。 だとすれば、「Winnyの開発公開者が、違法コピー行為の幇助罪に問われる」事こそが、法律の理念に合致した扱いだとも見做せよう。 Winny事件で、大阪高裁の判決では、「Winnyの開発者は、違法に使う事を薦めたわけではない」としているが、「他人の著作物を違法コピー可能なソフト」を、安易に公開し、「一般国民が自由に使用可能」な状態にしたら、「それを悪用して、違法コピーする者が出てくる」というのは、当然の成り行きであり、予見可能な「極めて必然的帰結」だ。 「他人の著作権物をコピーする」のが、そもそも、コピー可能ソフト使用者の目的だからだ。 その点からは、Winnyというソフトは、「違法コピーに使うのが、むしろ一般的な使用方法」とさえ言える。 Winny開発者でありこの事件の被告となっている金子氏は、パソコン社会に精通していて、「パソコンで人々がコピーしたがるその対象物が、映画や音楽の様な『有料で且つ第三者の著作権物』である」というパソコン社会の常識を、最初から認識していた筈だと判断出来る。 仮に、ソフト使用者に対して、「違法に使用しないで下さい」と明示していたとしても、それはあくまで、形式上の注意書きに過ぎず、「シリアルナンバーで利用者の特定や停止を可能とする」等、著作権侵害等の悪用行為を、「本気で予防する防止策」は、実行していない。 要するに、「『違法コピー用に悪用するのが、通常の使い方』となりかねないソフト」を、「フリーソフトとして、自由公開する」という事は、結局「違法コピー行為の幇助行為そのもの」と見做せるのであり、「有罪」とするのが、法律上当然である。 よって、これらの事から、「無罪」とした大阪高裁の判決は、全くおかしいと言える。 |
10月5日〜10月10日
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