2009-10-15 20:07:03 gataro-cloneの投稿

<一から考える>必要なの?八ツ場ダム/その2/中止はムダか/生活再建の道は【しんぶん赤旗】

テーマ:電子版にない「しんぶん赤旗記事」

6面からつづく)

一から考える八ツ場ダム問題/その2/中止はムダか/生活再建の道は
2009.10.10 日刊紙 7頁 一般 (全1,958字) 


中止はムダか

 八ツ場ダム建設中止をめぐっては「継続するより中止の方が高くつく」「事業費の7割も使ったのだから、完成させた方がいい」という議論が起きています。

 しかし、「7割」というのは使った金額のことで、ダム本体工事は未着工なうえ、事業費の大幅な増額も予想されています。

 国交省が説明する同ダムの総事業費は4600億円(03年に2110億円から増額)です。しかしこのほかにも「周辺地域対策特別措置法」と「利根川・荒川基金事業」から約1300億円の支出が加わります。その利息を合わせると約8700億円という膨大な支出が見込まれます。

 工事費は、今年3月末までに3210億円を支出。残り1390億円で、ダム完成にこぎつけるのが困難なことは同省自身も認めています。

 2004年5月に行った市民団体との意見交換会。同省の出席者は「できるだけコスト縮減に努めるということであって、4600億円は最終目標を示したものではない」と発言。さらなる増額の可能性を示唆しました。

 また同ダムが完成すると近隣の東京電力の水力発電所に減産する電力分の補償をしなければなりません。

 補償額がどれくらいになるのか、同省は「どれくらいの規模、期間を補償の対象にするのか、協議はこれから」とのべており、まったく未知数です。日本共産党の伊藤祐司前群馬県議の試算では、東電への影響額は1年分だけで17億円、30年分では510億円となっています。予算超過は必至です。 ダムの完成予定は2015年。現在、付け替え道路の工事が70%(3月末時点)まで進んだと同省は説明しています。

 しかし、その多くは未完成部分で、国道で完成しているのは600㍍分、わずか6%。県道は2%にすぎません。代替地の完成も遅れています。こうした状況をみれば、さらなる工期延長と増額は必至です。

生活再建の道は



 前原誠司国交相が建設中止を表明したことに、地元の住民は複雑な思いを口にしています。

 こうした思いの背景には、地元住民が30年近く反対の意思表示をしてきたのに、国と県の圧力で押し切られた経過と生活再建の道がいっこうに見えてこないことにあります。

 ダムに水没する川原湯地区や川原畑地区では、「現地ずり上がり方式」として、現在地より標高の高い場所に地域ごと移転する方法がとられました。

 ところが2001年に完成するはずの代替地が10年に延期。さらに15年へと再延期となりました。

 こうした中で、水没予定地の住民の7割ほどが町外へ転居し、地域は衰退。地元に生鮮食品の店がなく、温泉旅館では、移転を前提にしているため建物の建て替えができず、修理でしのぐ状況です。

 川原湯温泉街で働く男性(57)は「代替地で隣近所のある共同体を作り直したい」といいます。ダム計画が地域を壊してきた影響ははかりしれません。

 ダム建設を推進してきた国と県の地域再建策の柱は、ダム湖を中心にした観光です。

 しかし国の名勝、吾妻渓谷の一部を破壊してつくるダム湖で、観光客が増えるかは疑問です。ダム上流部には草津や嬬恋(つまごい)などの観光地も多く、牧畜がさかんです。こうした排水が流れ込むダム湖では、藻の異常繁殖や水質悪化の恐れが指摘されています。

 いま国に求められるのは、地元の要望に真摯(しんし)に耳をかたむけ、関係者への補償措置と生活再建・地域振興策の具体化をすすめることです。





吾妻渓谷の自然/特別天然記念物も生息

 八ツ場ダム建設予定地の吾妻渓谷では四季折々の美しい渓谷を見ることができます。周辺には国の特別天然記念物のニホンカモシカ、絶滅危惧(きぐ)種のイヌワシ、クマタカ、危急種のオオタカが生息しています。こうした希少生物への影響が懸念されます。

 同ダム建設にあたっては1985年に環境アセスメントを行っていますが、環境予測や保全対策に割いた記述はわずか11㌻分。データ不足が指摘されています。

 国交省は専門家による環境評価委員会を開催。しかしこの委員会の出席者のほとんどが名前も肩書もわからない匿名の「専門家」によるもの。その公正さに疑問の声があがっています。




「暫定水利権」とは

 暫定水利権とはダムを造る前提で一時的に許可された取水権のこと。八ツ場ダム事業に参加する県には、すでに開発された農業用水を冬期だけ転用しているところがあります。

 群馬県の大沢正明知事は「暫定水利権は終わる」と発言。同ダム建設を中止すると、暫定水利権が取り消され、水不足が起きるかのように主張しています。

 しかし同ダム建設を中止してもこうした水源が存在していることに変わりはありません。しかも冬期の農業用水は農閑期で余裕があります。

 今ある十分な水源をいかし、水利権の運用を改めれば、同ダムを中止しても解決可能な問題です。



しんぶん赤旗

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一から考える八ツ場ダム問題/塩川鉄也議員にきく/住民の疑問にこたえ合意づくりの仕組みを
2009.10.10 日刊紙 7頁 一般 (全1,027字) 


 八ツ場ダム問題解決の先頭に立ち、この間も現地調査を行ってきた日本共産党の塩川鉄也衆院議員にききました。

 ◇ -日本共産党は国会の論戦でどんな主張をしてきたのですか。

 2005年2月25日の衆院予算委員会第8分科会では、八ツ場ダム建設の根拠となっていた「利水」と「治水」についてただしました。国土交通省の河川局長から「カスリーン台風のときのような雨の降り方にはダムの効果は期待できない」という答弁を引き出しました。

 この答弁は、早くから八ツ場ダムに反対してきた水源開発問題全国連絡会などの運動を大きく励ましたと聞いています。

 この間、川辺川ダムや淀川水系ダムなど全国で住民参加の徹底や環境優先、ダムに頼らない治水など、河川行政の転換を求める流域住民の運動が大きく前進しました。

 国会議員団として08年10月に、金子一義国交相(当時)に「ダム建設ありき」を改め、「流域住民が主人公」への河川行政へ転換するよう申し入れ、その中で八ツ場ダム建設を直ちに中止するよう求めました。

 申し入れでは、地元住民の生活支援の問題を重視し、ダム建設が中止された場合、国が住民の生活再建と地域振興に責任を持って取り組むよう求めました。

 民主党が国会では「八ツ場ダム中止」を主張しながら、茨城などの県議会で建設工事費の負担金増額の議案には賛成して、「民主本部と県連ねじれ」(茨城新聞8月9日付)と報じられるなかで、日本共産党だけが、国会でも地方議会でも八ツ場ダム中止の論戦をすすめてきました。中止を求める市民団体とも交流を重ね、住民と一体の運動をつくり、その力が新政権による建設中止表明に結びついたと思います。

 -今の時点で政治に何が求められるのでしょうか。

 現地の住民にとっての一番の願いは「とにかく問題を早く終わらせてほしい」と言うことです。長い反対運動の末、ダム受け入れを決断し、またもや国の政策変更で暮らしが左右されることへの怒りは当然です。そのことを理解し、真摯(しんし)な謝罪が必要です。 その上で、事業に関する情報をすべて公開することとあわせ、ダム建設を中止する理由をきちんと説明することです。最も重要なのは、住民への補償措置と地域振興策が必要です。予算措置で行えるものはただちに具体化し、地元の住民も参加した協議会をつくって、早期の合意をつくっていく仕組みづくりも必要です。

 日本共産党は、住民の疑問にも答えつつ、こうしたことを新政権に提案していきたいと思います。

しんぶん赤旗





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