山田洋次監督(78)が客員教授を務める立命館大学映像学部と松竹の共同製作による映画「京都太秦恋物語」の製作発表会見が14日、京都・松竹京都撮影所で行われた。学生とプロのスタッフが一緒に、35ミリの長編劇場公開用の映画を作るという史上まれなる挑戦。山田監督は「学生の卒業映画とは格が違う。商業として、僕が作ったものと同じでなければならない」と厳しい顔つきで、22人の学生スタッフに自ら“プロの現場”を教え込んだ。
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山田監督の最新作は、映画の撮影所の街として知られる、京都・太秦の商店街を舞台にしたラブストーリー。5、6年前から構想を温めていたという大切な作品で、学生たちはプロへの第一歩を踏み出すことになった。
この日は京都・鴨川での撮影リハーサルも行われた。山田監督は主演の京都出身の女優・海老瀬はな(23)のセリフの発音に、「弱い!弱い!!」と何度もダメ出しをしながら演技指導。現場の厳しさ、緊張感を学生たちに伝えた。
山田監督は2008年、立命館大学映像学部の客員教授に就任。その際「この映画が失敗したら腹を切る。(ヒットする)商業映画を作らないと意味がない」と宣言し、本作の製作はスタートした。
学生たちは1年間、山田監督の授業でシナリオ創作に携わり、今年9月22日のクランクインから撮影に参加。この日の会見に立ち会った、監督助手を務める3年生の古寺綾香さん(21)は「いろんな人の思いをしっかりかみしめて、良い作品にしたい」と、感極まって涙を流した。
学生たちのほとんどが将来は映画、テレビ界への進路を望む。山田監督は「学生諸君には『自分たちから、スタッフに質問の雨を降らせるように』と言っている。技術だけでなく映画作りの精神を学んで欲しい」と映像界の未来を担う学生たちに期待を寄せた。
出演はほかにEXILEのUSA(32)、劇団俳優座の田中壮太郎(39)。11月下旬にクランクアップ。来年春ごろ京都を皮切りに全国公開を予定している。