オバマ大統領へのノーベル平和賞授与に対して、アメリカでは複雑な反応が渦巻き、とくに反オバマ勢力といえる保守派や共和党支持層からの揶揄や批判はきわめて広範でした。
しかし日本のマスコミでほとん報じられていない事実は、実はこの授賞に元来のオバマ支持層からもきわめて強い反発や非難があったことです。
そういう批判に光りをあてた記事を書きました。
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米大統領ノーベル賞授賞 “身内”から批判噴出
「米国政治への干渉」
〔ワシントン=古森義久]米国ではオバマ大統領へのノーベル平和賞授与に対し本来のオバマ支持層の民主党系やリベラル派からも批判や当惑が噴出した。
授賞の理由が不当だとか、大統領をかえって傷つけ、政治的に不利にするという負の反応だが、今回の選考は批判が反オバマ陣営だけに留まらない点にも異端さを露呈したといえる。
民主党元上院議員で昨年の大統領選ではオバマ候補を支持したボブ・ケリー氏はウォールストリート・ジャーナル11日付への寄稿で「ノーベル委員会はオバマ氏への授賞でアフガニスタンについての米国の政策議論に影響を及ぼそうと意図したのだろうが、この議論が終わるまで待つべきだった」と批判的に論評した。
ケリー氏はノルウェーの同委員会がこの授賞でオバマ大統領にアフガン放棄をうながすのだろうと示唆し、この種の動きによって同大統領がアフガン民主化の誓約を破る恐れが生まれた、と論じた。
もっと率直な反対論者はリベラル派の女性コラムニストのルース・マーカス記者だった。
ワシントン・ポスト10日付コラムに「この授章はばかげている。恥ずかしい」と書いた。
同記者はオバマ氏を礼賛し、選挙では投票したことを明記したうえで「この賞はなにかを達成したことに与えられるはずなのに、オバマ大統領はまだなにも達成していない。『各国の国民の協力を強化―?』 おお、やめてほしい。こんな受賞はノーベル賞を参加者の全員を勝者とする、ちびっ子サッカーにしてしまう」とまで批判した。
マーカス記者は「反オバマ派はこの授賞を利用して『オバマを救世主とみる信者たち』への攻撃をうまく強めるだろう」との懸念をも表明した。
ワシントン・ポストの民主党系の外交コラムニスト、ジム・ホーグランド氏も11日の記事でこの授賞を「米国の政治への干渉」と評し、善意からでも「意図しない不測の結果をもたらす」として、「この早計な授賞がオバマ氏を過信させ、こんごのアフガニスタン作戦などで強硬すぎる行動をとらせかねない」という懸念を述べた。
同記者はオバマ大統領が「中国の独裁者の機嫌を損なうことを恐れて」チベットのダライ・ラマとの会談を避けたことをも平和賞にそぐわない行動として批判した。
ニューヨーク・タイムズのリベラル派の外交コラムニスト、トーマス・フリードマン記者は12日付の同紙で「ノーベル委員会はオバマ大統領に早まって平和賞を与えることで同大統領に害を及ぼした」と書き、「世界で最重要な賞がこのように価値を落とすことには私も落胆した」と述べて、オバマ氏が受賞にふさわしい行為はまだしていないと批判的に論じた。
昨年の大統領選でオバマ候補支援を打ち出したワシントン・ポストは10日社説で「この奇妙なノーベル賞は受賞者にとって恥ずかしい」と述べ、「オバマ大統領は就任9カ月でも依然、目標は目標のままだからだ」として受賞にふさわしい業績がないことを提起した。
by 西田三郎
オバマ大統領へのノーベル賞を…