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きょうの社説 2009年10月15日
◎大和の店舗削除 生き残り賭けた苦渋の選択
大和(金沢市)が展開する百貨店7店のうち、小松店など4店の閉鎖方針を打ち出した
のは、生き残るために、ぜい肉をそぎ落とす覚悟を固めたということだろう。繁華街の「顔」を失い、途方に暮れる地元を思うと、まさに苦渋の選択と言うほかないが、大和を取り巻く経営環境の厳しさを見れば、血を流す荒療治なしに展望が開けるとは思えない。不採算部門を整理し、将来展望が描ける部門に持てるすべての経営資源を集中するのは 、理にかなった選択である。ただ、郊外の大型ショッピングセンターなどにどう対抗していくのか、道筋が見えているわけではなく、再生の道は長く険しいと思わねばならない。小松市にとってもコマツ小松工場の閉鎖決定に続く衝撃であり、空洞化が進む駅前の再生計画に新たな課題が突き付けられた。 長引く消費不況の影響で、地方都市のデパートが続々と店をたたみ始めている。売り場 を増床し、仕入れはメーカーや問屋任せという「殿様商売」を続けているうち、売れ筋の商品を探すノウハウまで失い、時代に取り残されてしまった感がある。消費者の百貨店離れをくい止めるために何をすべきか、原点に戻って見直す必要があるのではないか。 地盤沈下が進んだとはいえ、それでも繁華街にあって、百貨店の存在感は際立っている 。単にモノを売るだけの物販の場ではなく、流行を機敏にとらえた品ぞろえや一歩先を行くライフスタイルの提案、イベント・催事を通じて、情報発信や交流の場を提供する総合的な文化施設の一面を持つからだろう。 かつて大和のショーウインドーには、見る者にため息をつかせる夢が詰まっていた。大 和の包装紙に、顧客の夢や憧(あこが)れが包まれていた時代をもう一度思い出してほしい。時代は変わっても、量販店などが足元に及ばぬ百貨店の強みが必ずあるはずだ。 百貨店が元気のない都市の将来は厳しい。ぽっかり開いた穴を埋めるのは容易ではなく 、中心市街地がそっくり空洞化していく危険もはらむ。小松はもとより、店舗が残る金沢、富山、高岡の各市にとっても正念場である。
◎「普天間」移設問題 沖縄知事の意見も民意
鳩山政権が見直し方針を打ち出した沖縄・米軍普天間飛行場の移設計画について、仲井
真弘多沖縄県知事は、移転に伴う環境影響評価準備書に対する「知事意見」の中で、沖合への移動などを条件に現行計画を容認する考えを示した。市街地の真ん中にある普天間飛行場の危険性を一日も早く除去したいという切実な願いと、長い協議を経た政府間合意であることを踏まえた、苦悩の末の判断と言える。鳩山由紀夫首相は「沖縄県民の総意」を聞いて最終判断をするというが、知事判断も県 民の意思を表すものであり、重く受け止めなければなるまい。 仲井真知事も「県外移設がベスト」と述べている。しかし、自ら米軍飛行場を受け入れ る県外自治体の出現は考えられず、一内閣で実現できることではない。 米政府が計画見直しに難色を示し、国外移設や嘉手納基地との統合の展望もない中での 移設計画反対は、事実上、普天間飛行場の固定化を図ることになる。そうした事態を回避する「次善の策」として現計画を条件付きで受け入れざるを得ない、というのが仲井真知事の判断であろう。 鳩山政権にとって、もう一つの大きな課題は、沖縄経済の自立を図るという長年の問題 をどう解決するかである。普天間飛行場移設問題がどのようなかたちで決着するにしろ、基地依存経済からの脱却の道筋を示す必要がある。 基地従業員の給与や軍用地料など米軍基地関係の収入は、2005年度で約2000億 円に上る。県民総所得に占める割合は、本土復帰時の15%台から5%台に低下し、基地依存構造は改善されたかにみえるが、金額は大幅に増えており、沖縄経済の大きな支えであることに変わりはない。 民主党は昨年「沖縄ビジョン2008」をまとめ、さまざまな沖縄振興策を提示してい る。これをどのように具体化していくのか。自民党政権下で策定された現在の沖縄振興計画は11年度に期限が切れる。当面この計画を踏襲するのか、すぐに新計画をつくるのかの判断も迫られる。
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