Dexter Roberts (BusinessWeek誌北京支局長、アジアニュース担当エディター)
米国時間2009年3月2日更新 「In China, Bracing for More Tibet Trouble」
3月5日、中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)会議が開幕。今大会の最大の懸案事項は景気後退問題に違いないが、憂慮されるのはそれだけではない。全国から北京に集結する約3000人の代表は、再燃が懸念されるチベットの騒乱への対応について、非公式に話し合うことになりそうだ(BusinessWeek.comの記事を参照:2009年2月25日「China, Dalai Lama at Odds as Tibet Anniversary Approaches」)。
全人代会議が開催される3月は、戦略上の要衝であるチベットに対する中国統治の歴史を刻むデリケートな記念日が相次ぐ。例えば昨年の3月には、チベット人による抗議行動が流血の惨事へと発展し、少なくとも19人のチベット人と漢民族(中国系住民)が犠牲となった。
再びこのような社会不安を招く騒乱が起これば、中国政府が再度弾圧に乗り出すことはほぼ確実だ。政府は数千人規模の軍隊をチベット地域に派遣したとも伝えられるが、不穏な情勢はさらに悪化しているようにも見える。
人権団体「自由チベット学生運動(SFT)」(本部:米ニューヨーク)によると、チベット自治区に隣接し、チベット人居住区を擁する四川省と青海省では、ここ2週間、チベット人数百人が中国支配に対する抗議を続けているという。2月27日には、手製のチベットの旗と仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の肖像を掲げて、抗議のため焼身自殺を図ろうとした僧侶が、警官に銃撃されたと複数の人権団体が報じている。
「軍隊の増強という極めて挑発的な行為を受け、チベット人による抗議の姿勢が強まるとともに、昨年の流血の惨事が繰り返される危険性が高まっている」と、英ロンドンを活動拠点とする人権団体「フリー・チベット・キャンペーン」のステファニー・ブリッゲン理事は、2月27日に発表した声明の中で警告している。
殺害の脅迫状も
少なくとも一部の多国籍企業にとっては、そうした可能性は憂慮すべきものだ。昨年は国粋主義的な中国の若者がインターネットを使って、チベット独立を支援していると判断した外国企業に対する不買運動を展開するなど、多国籍企業への反発が強まった(BusinessWeek.comの記事を参照:2008年4月24日「Behind China's Anti-Foreigner Fever」)。
フランスの政治家が中国のチベット政策を批判する声明を出した際には、怒りの矛先が仏小売り大手カルフールに向けられ、数千人が抗議のために全国6都市の同社店舗を取り囲んだ。また仏高級ブランド最大手LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン製品の不買運動も活発化した。
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