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千葉景子法務大臣の大胆な政治決断に期待します

山崎康彦2009/10/14
 歴史的な政権交代で誕生した鳩山由紀夫内閣が民主党千葉景子参議院議員を法務大臣に任命してから今日で約一ヵ月ですが、新大臣は10月9日に最高裁判所が中国残留孤児と血縁関係がないと判断し大阪入国管理局から国外退去を命じられていた中国人姉妹に対し法務大臣の権限で在留特別許可を認めました。

 また民主党の政権公約としてマニフェストに掲げた「容疑者の取り調べの録音・録画(可視化)」に向けたワーキンググループを法務省内に設置することを発表しました。

 前原国交相や原口総務相のような派手な記者発表はしませんが、千葉景子法務大臣は民主党の政権公約と自己の信念に基づいた政治決断を静かに下し始めた印象です。

 鳩山由紀夫首相は、日本の人権状況を最悪にしている元凶の「法務省」のトップに意見対立が先鋭化する危険性のある男性大臣を任命せずに、ソフトでしなやかで冷静な女性大臣を就任させました。この絶妙な人事で狡猾で悪知恵の発達している法務官僚の機先を完全に制したのです。

 法務官僚がたかをくくって見下していた女性大臣が就任間もなく、しかも相談もなく大胆な政治決断を国民に向かって投げかけ始めたのです。

 千葉景子法務大臣は9月30日付け毎日新聞の「新閣僚に聞く」の記事の中で「可視化」と「死刑廃止」に関する記者の質問に以下のように答えています。

― ― マニフェスト(政権公約)に掲げる、取り調べ全過程の録画・録音(可視化)の法案化をどう進めるか。

 「確実な歩みで、実現に向けて取り組みたい。骨格は(党内で)打ち合わせており、それをどういう形で現実のものとするか、多くの人の意見をいただき、開かれた議論を行いたい。これまでに議員立法で提案した法案を土台に、どこまで対象を含めるか、最初から全部にするか、一歩目、二歩目と段階的にいくか、詰めていきたい。」

― ― 「死刑廃止を推進する議員連盟」のメンバーだが、死刑執行の命令書にサインする考えはあるか。

 「規定があり、法相に職務が課せられていることは承知している。政府の一員となったので、議連とはいったん距離を置いてメンバーから外れる。ただ、いろいろな議論があり、最後には命を奪う刑罰であるから、慎重に対処したい。裁判員制度が始まり、国民の皆さんが死刑を選択することもあり得る。それを考えると、皆さんに目を向けて考えていただくことを願っており、何らかの議論の場を作れたらと念じている。情報公開、刑場の公開も含め、何らかの形で少しずつ開いていけたらと思う。何の現実も分からないままでは議論になりにくいと承知している。」


 法務省はこれまで「行刑密行主義」という何の法的根拠もない難解な法務官僚造語を使って、現行の死刑制度や死刑囚の状況や死刑執行の実態などの情報を一切秘密にして国民に知らせないで来ました。

 「死刑制度」に関して極端に少ない情報しか与えられない日本国民は、「死刑があるから凶悪犯罪が抑止されている」という根拠のない説明や「人を殺せば自分の命で償うのは当然」という「復讐の論理」に納得して「死刑制度賛成95%」という世界に例のないほど死刑容認が多い世論をつくってきたのです。

 千葉景子法務大臣は「刑場の公開も含めて現行の死刑制度の実体を広く国民に情報公開することで議論の場をつくっていきたい」と答えていますので、法務官僚のつくった「行刑密行主義」の厚い壁が壊れるのは時間の問題だと思います。

 千葉景子法務大臣が中央大学法学部の学生だった1967−70年当時は、全国の大学や高校にベトナム反戦闘争、全共闘運動、70年安保粉砕闘争の嵐が吹き荒れた時期にあたり、彼女も運動に参加していたと言われています。

 彼女が神奈川県選出の参議院議員時代に掲げた公約と政策は以下の通りです。(wikipediaより引用)

(1)公約

* 横須賀港の原子力空母の母港化に反対

* 厚木基地のNLPは硫黄島に移転

* 政府から独立した人権擁護機関を都道府県毎に設置

* 外国籍県民と共生できる社会

(2)政策

* 二重国籍を推進

* 人権侵害救済法を推進

* 国籍法改正を推進

* 外国人参政権の賛成派

* 夫婦別姓の賛成派

* 死刑制度に反対しており死刑廃止を目指す議員連盟に名を連ねている(法務大臣就任後は退会)

* 定住している不法滞在者への温かい目

 鳩山政権と千葉景子法務大臣は、官僚支配最後の砦である「最高裁事務総局」とともに「法務省」の法務官僚組織を完全に解体して、国民のための法務、国民のための司法に根本から変えていかなければなりません。

 全共闘世代の千葉景子法務大臣の大胆な政治決断に期待します。

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[52354] JANJANでは中核派の情報を書くと消される
名前:明石晶
日時:2009/10/14 20:09
で、山崎さんは、中核派が目指すプロレタリアート独裁という思
想、
テロリズムによる政権奪取についてどう総括しましたか?


人権弾圧とか平和とか口にする人に限って、実態は過激派だった
りするのでこれらの言葉の価値がすっかりなくなってしまいました。


編集部に苦情電話をかけて中核派の情報を消すように依頼した
りする前に、ご自分で中核派との繋がりを見つめなおすべきでは
ないですか?



※編集部の削除担当者の方へ
JANJANでは、中核派という情報を書くとことごとく消され
ますが、ネット時代の双方向性という利点を自ら捨てているよう
なものです。中核派という指摘が事実無根ならともかく、事実の
指摘を消すと言うことはネットメディアの自殺行為ではないです
か?このコメントも消される可能性が高いのでWEB魚拓を取っ
ておきますが、安易な削除は経営危機という火災に油を注ぐよう
な行為だと自覚してください。
[返信する]
[52349] コメントありがとうございます。
名前:山崎康彦
日時:2009/10/14 19:06
ドイツでは死刑廃止のみならず終身刑や無期懲役刑も違憲判決が出されたために廃止して、どんな凶悪犯も最長20年で社会に復帰させるという、日本から見ると信じられないほどの性善説に基づいた矯正・教育システムをもっています。

日本では犯罪を犯した者に実刑を課して刑務所に送り非人間的な生活を強制して懲らしめる「懲罰」の意味合いが強く、社会復帰のための「再教育」の意味合いはほとんどありません。

ドイツ司法はもちろん懲罰の意味合いもありますが、それよりも犯罪者が二度と犯罪を犯さないよう、社会に再適合できるように矯正し教育して社会に送り返す司法になっています。

この違いはどこから来るかといえば、戦前のドイツ司法がナチスファシズム体制に加担して人権弾圧の機関に成り下がってしまったという深刻な反省と総括と加担した司法関係者の追放を徹底して行ったことからきています。

日本は戦前の天皇制軍事独裁政権へ司法が加担して弾圧したことへの反省も総括も追放もしませんでした。

ドイツ連邦憲法裁判所はこれまでに500件以上の違憲判決を出しています。

日本の最高裁は一度も出していません。10件ほどの違憲判決はすべて下級審のものです。

違憲判決を決して出さない日本の裁判所は、権力を持つ政治家と官僚と財界のやりたい放題を追認し無法地帯をつくってきたのです。




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[52344] 誇りを失った日本人、女性の千葉法務大臣に大いに期待!
名前:田村時郎
日時:2009/10/14 17:29
山崎さんが言うように、”絶妙な人事”かもしれません。
小生も鳩山内閣の閣僚人事で一番興味を持ってたのは「法務大臣」で、当然のように最初は”衆院の男性大臣で誰だろう”と思ってたので、意外だったのです。
然し、却ってこの選択は弱者・国民の側にとってより良く優しい、そして”この国の確実な『政権交代』を世界に発信できる”メッセージとなることを期待します。

”官僚支配最後の砦である「最高裁事務総局」とともに「法務省」の法務官僚組織を完全に解体して、国民のための法務、国民のための司法に根本から変えて”欲しいと思います。
”取り調べ全過程の録画・録音(可視化)の法案化”も、一歩ずつでも良いですから、確実にその目標に向かっていった政治のリーダーシップを発揮していってもらいたい。
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[52337] 秘密主義廃止に賛成
名前:中北宏八
日時:2009/10/14 15:41
先日、「サルバドールの朝」という映画をセルバンテス文化センターで見ました。「70年代フランコ政権末期のスペインを舞台に、不当な裁きにより死刑を宣告された青年と周囲の人々の闘いの日々を描く衝撃のストーリー。カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品。」という映画ですが、死刑執行直前まで家族が面会して抱擁しながら執行停止に期待をかける姿、最後まで努力を続ける弁護士、絞首刑の装置の非常さなどが印象的でした。死刑とはどういうことかを、国民が知ることは必要ですね。
[返信する]

10月5日〜10月10日 

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