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困った会社見本市

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組織の一体感を高めたら業績が持ち直した件

2009 / 10 / 9

 5月から6月にかけては、投資先やグループ企業の決算書が次々と上がってくる季節です。会社の良い面・悪い面、浮き沈みがあれこれと見えてきます。

 業績の悪い会社の決算書や報告の内容は、できの悪い反省文のようなものです。成功すると思ったのですが、この点が思惑ハズレでした、次はこうします、だからもっとお金出してねといった論法で来られるとげんなりします。

 まあ苦労に直面しているのは当の経営者ですから、なるだけ資金でも知恵でも融通してあげたいとは思うのですが、資金があれば解決するからとにかく金を出せという姿勢は経営者としていかがなものかと思います。

 金がなくてもアイデア一つでどうにかなることだってたくさんあるのです。例えば社員同士で勉強会や共同作業を定期的にやる、というのは、資金がかからず意外と業績回復に効く方法の一つです。

 よく販売不振の顧問先や投資先で「営業成績が上がらないんですよ」と相談されることがあります。そのとき、社員に社会人の自覚を促し、幅広い知識を持たせるために、まずは新聞を輪読させてみてはどうですか、といった話をします。

 新聞輪読会であれば、みなで時事的な報道を10個ほど読んで各々が数分間ほど話し合う程度だから気軽に実行できます。

 実際、経営不振の企業が営業社員のノルマを増やす代わりに、毎週2回、40分ほど始業前に新聞の輪読会を実施してみたら、平均以下の営業社員の成績が3カ月後ぐらいから目に見えて上がってきた、というようなケースもありました。

 結構、効果あるんですよ、こういうの。もっとも経営者がしゃべると独演会となってしまうので、話したいのを我慢するのも肝要ではあります。

 経営者は独特の才能や孤独に耐える強い精神力が必要で、ある種スーパーマンなのですが、そこに勤める社員は必ずしもそうではありません。日々何となく過ごしてたりもします。

 それでも、会社として全体の成績を上げるには彼らのモチベーションを高める必要があります。その方法の一つが、こうした取り組みを通じて、社員それぞれが会社や引いては日本社会の一員なんだという自覚を促すことだったりするわけです。

 他にも、毎月1回必ず社員全員で大掃除をするとか、取引銀行の支店長を呼んでミニ講演会をしてもらうとか、お金をかけずに組織の一体感を高める方法はたくさんあります。

 ここで重要なのは「経営者が社員に気を配っていると理解してもらうこと」「継続すること」です。ささいに見えますが、資金をそう簡単に融通できない今日このごろ。

 やってみる価値、ありますよ。

(注:本コラムは日経トップリーダー2009年6月号からの転載です)

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プロフィール

山本 一郎 やまもと いちろう

イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。父親が抱えた負債を返済するため学生時代から株の個人投資を始め、ゲーム制作や投資事業などを手掛ける会社を起業。ブログなどで経済・時事問題に関する批評を展開し、インターネットでは「切込隊長」と呼ばれるカリスマ的存在。著書に『ニッポン経営者列伝 嗚呼、香ばしき人々』(扶桑社)、『けなす技術』(ソフトバンククリエイティブ)など。


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