きょうの社説 2009年10月14日

◎羽田ハブ空港化 北陸にとっても最良の選択
 羽田空港を24時間運用の国際ハブ(拠点)空港として優先整備する構想は、国家戦略 として国際競争力のある空港をつくる狙いがはっきりしている。都心に近く、来年秋に4本の滑走路がそろう羽田空港は、アジアを代表する空港の実力を備えている。羽田が国内便、成田が国際便というすみ分けは、もはや利用者に不便を強いるものでしかない。

 小松空港や能登空港、富山空港を抱える北陸にとっても羽田のハブ空港化は最良の選択 だ。成田が東京都心から遠く、使いにくいために、多くの利用者がソウル・仁川空港や上海空港をハブ空港代りに使っている。これは日本全体から見れば大きな損失だ。地方空港から羽田経由で国際線に乗り換えられるようになれば、海外渡航の利便性は格段に向上するだろう。

 日本の航空行政は、成田、中部、関西を国際線の拠点空港と位置づけてきた。今さら「 内際分離」の原則を変えることには根強い反発もある。激しい建設反対運動が展開され、血を流してきた過去を持つ成田の場合は特にそうである。

 しかし、ソウルの仁川空港は、小松や富山をはじめ、多くの地方都市と路線を結び、日 本人客を呼び込んで欧州や米国に送り出している。これに対抗しようにも、成田は多くの未買収地を抱え、滑走路の新設・拡張が難しい。騒音問題で24時間運航もできない。07年の成田の旅客数は世界24位、貨物取扱量は6位にとどまり、今後ますます世界との差は広がるだろう。日本航空の経営難はこの成田の地盤沈下と表裏一体の関係にある。

 これまでの航空行政の失敗を認めるような原則変更は、自民党政権では難しかったはず だ。民主党主体の政権になった今がチャンスである。国際競争を勝ち抜くために、より航空需要の高い羽田空港を集中的に整備し、国際線の乗り入れを大幅に増やしたい。

 羽田のハブ化で、小松空港や富山空港の国際便については、マイナスの影響があるかも しれない。羽田空港経由の渡航が増えれば、地方発の国際便が縮小に向かう可能性があるからだ。だが、日本全体の利益を考えれば、羽田のハブ化は正しい選択である。

◎金澤きもの小町 「和装」復権の足がかりに
 金沢市内で3連休に行われたイベントで、とりわけ県都に華やかさを広げたのは、振り 袖などで約1100人がそぞろ歩きを楽んだ「金澤きもの小町」である。着物で散策する催しはこれまでも行われてきたが、千人を超す規模は例がなく、市民に着物の良さを伝えるとともに、訪れた観光客にも「着物が似合う街」を強く印象づけたことだろう。

 「お楽しみ大抽選会」をはじめ、さまざまな催しに参加できる特典も魅力の一つだが、 着物離れが言われて久しいなかで、これだけ多くの人が集まったのは、機会があれば着物を着たいという潜在的なニーズの表れともいえる。

 茶道、生け花、舞踊など、伝統的な習い事の盛んな金沢には、他の地域に比べれば着物 を着る土壌が広がっている。それに加え、「金澤きもの小町」のように着物を楽しめる機会を増やすこともすそ野を広げる大事な視点である。今回の千人規模の発信力を和装文化復権の足がかりにしたい。

 「金沢園遊会」の一環として初めて行われた「金澤きもの小町」は、参加者が大野庄用 水沿いや長町武家屋敷群などを散策し、「金沢城・兼六園大茶会」の会場で一服を満喫したほか、「KATAMACHIホコ天」で開催された加賀友禅きものショーなどを観賞した。

 参加者にとっては、着物姿で歩いて眺める街の風景はふだんと違った印象だったかもし れない。イベントなどを通して着物姿が街に増えれば和装がより身近なものになり、日常的に着ようという機運も高まってくるだろう。

 これだけ多くの人が着物で街に繰り出せば、観光客へのアピール効果も絶大である。城 下町の魅力を発信するにふさわしいイベントといえ、定着すれば着物が着られる「体験観光」として県外の人たちの関心も集めるに違いない。

 金沢市内では「おしゃれメッセ」と題したファッションイベントが展開されている。「 ファッション産業都市」として神戸などとの違いを打ち出すためにも、独自の着物ブランドである加賀友禅をはじめ、金沢に息づく和装文化をさらに活性化させていきたい。