兵庫県尼崎市の大手機械メーカー「クボタ」旧神崎工場の周辺住民にアスベスト(石綿)による健康被害が広がっている問題で、クボタは24日、すでに見舞金を支払った患者3人に加え、中皮腫(ちゅうひしゅ)で死亡した住民6人の遺族と療養中の患者1人の計7人に対し、各200万円の弔慰金、見舞金を支払った。ほかに工場周辺に住んでいたために中皮腫を発症した疑いが強い14人(うち12人が死亡)について本人や遺族の申請を受け、支払いを検討している。
クボタとの交渉窓口になっている「尼崎労働者安全衛生センター」など患者らを支援する3団体が同日、発表した。
クボタがこれまでに弔慰金・見舞金を支払った対象の10人(死亡6人、患者4人)はいずれも同工場から1キロ以内での居住歴があり、88〜04年に発症。職歴は調理師やホテルマンなどで、石綿に直接触れる機会がない人がほとんど。住んでいた時期はクボタが水道管製造のために毒性の強いとされる青石綿を使っていた時期(57〜75年)と重なり、短い人でも15年間居住していた。
死亡した6人は男性5人、女性1人。89年から今年にかけて、33歳から45歳で亡くなっている。中皮腫は発病まで30〜40年かかるといわれており、同センターは、幼少期から生活の中で石綿を吸い込んだ疑いが強いとみている。患者4人は現在53〜73歳で、男女各2人。
見舞金・弔慰金を申請中の14人も、工場周辺に住んでいたこと以外に石綿に触れる機会がなく、工場との関係が強く疑われるという。同センターは、このほか10人以上について請求の準備を進めている。
クボタは弔慰金・見舞金について、石綿関連疾病のうち中皮腫のみを対象とし、▽職業上石綿を取り扱ったことがない▽工場が石綿を扱っていた時期に周辺に居住、勤務していたか、工場に出入りしていた――との社内基準に基づき、同センターを通じて申請した人に各200万円を支払うとしている。ただ、「工場と中皮腫の因果関係は不明」との姿勢は崩していない。
この日、記者会見した患者らは「もはや公害というほかない。一企業まかせでなく、国を挙げての支援を」と訴えた。同センターの飯田浩事務局長は「同工場と健康被害の因果関係が明らかになってきた。クボタは現実を認めてほしい」としている。
クボタ旧神崎工場は水道管を製造する工場で、年間540〜7669トンの青石綿を使っていた。これまでに従業員や出入り業者計78人が石綿関連疾患で死亡。クボタは6月30日、周辺住民の患者3人に対して見舞金を支払っていた。