・裁判所が訴えられた?! |
東京地方裁判所厚生部事件
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これって、どんな事件だったの?
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東京地裁の建物の中に「東京地方裁判所厚生部」という部署がありました。 その「東京地方裁判所厚生部」と取引をした業者が、東京地裁を被告として損害賠償をもとめて訴えをおこしました。
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えーと、どこの裁判所に訴えをおこしたの? |
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東京地裁へ訴えをおこしました。 |
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ということは、その業者は「東京地裁は損害賠償しなさい」と東京地裁に訴えをおこしたの?
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そうです。
この事件では、「東京地方裁判所厚生部」が裁判所の職員が福利厚生のため作った団体で、東京地裁自体とは関係が無かったため問題となりました。 |
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だったら、東京地裁には責任は無いんじゃない。 |
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ところがそうでもなくて、民法や商法には、他人に対して自己の名前等を表示することを許諾した場合、その他人が第三者に対して損害を与えたときは自己もその責任を負うという規定があります。 |
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ええとつまり、東京地裁が他人に対して「東京地方裁判所厚生部」という名称を表示することを許諾したことから、「東京地方裁判所厚生部」が第三者である業者に与えた損害の責任を東京地裁も負うのかが問題になったね。
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そういうことです。 |
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それで裁判はどうなったの。 |
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東京地裁が敗訴しました。 |
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ということは、「東京地裁も『東京地方裁判所厚生部』の責任を負う」と東京地裁が判断したんだ。スゴイね。 |
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さらにスゴイことに、東京地裁は「東京地裁の判断には誤りがある」として東京高裁に控訴しました。
そして東京高裁でも敗訴し、上告して最高裁までいきました。最高裁は以下のように判決しました。 |
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昭和35年10月21日 最高裁判決
最高裁は、「一般に官庁の部局をあらわす文字である『部』と名付けられ、裁判所庁舎の一部を使用し、現職の職員が事務を執つていた『東京地方裁判所厚生部』は、東京地方裁判所の一部局としての表示力を有するものと認めるべき」として、東京地方裁判所厚生部のした取引について東京地裁にも責任があると判断した。 |
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というわけで、裁判所が訴えられるという前代未聞の裁判は、裁判所の敗訴という形で決着がつました。
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でも、裁判所が「敗訴する」というのがどんな気持ちなのか分かったという点ではよかったのかもね。  |