東愛知新聞ロゴ 本日のニュース 平成21年10月12日
2009/10/12
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設楽町長選13日告示

アーシャー、
  早くも人気者

火事で店をなくした
  店主を常連客が励ます

火事で店をなくした店主を常連客が励ます


蔵王山で展望まつり

最後の
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豊橋で
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杉森八幡社祭礼で
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09年10月11日の
  ニュース

焼けた大村屋釣具店。「次はプレハブで」と林さんは語る

(焼けた大村屋釣具店。「次はプレハブで」と
林さんは語る)

 40年前に開業し、地元の釣り愛好家に親しまれてきた豊橋市南栄町空池の大村屋釣具店(林啓司店主)が先月20日、隣家の火災に巻き込まれ焼失、店内の商品もほとんどが灰となった。「もう続けられない。営業をやめよう」と決断しかけたとき、常連客から「辞めないで」の大合唱。林さんは焼け跡にプレハブを建て、もう1度、店を開こうと立ち上がった。

 家族的な雰囲気の店だった。開業は1968(昭和43)年。切り盛りしてきたのは店主の林さん(85)と妻の初子さん(75)で、近くに住む次女の定子さん(50)も「思い出の詰まった店」と手伝い、支えてきた。
 大型釣り具店に比べれば品数こそ少ないが、常連客を大切にし、客の要望に気配りしながらそろえてきた。林さんは豊川のアユ、表浜海岸のキス、浜名湖のカレイなど、地元の釣りに精通し、客には旬の情報も提供。信頼は厚かった。
 火災に襲われたのは9月20日の未明。林さん夫婦は無事だったが、建物は、火の回りが早く大部分が焼け落ちた。釣り具もほとんどを焼失した。「被害は総額で2000万円ぐらい」と啓司さん。直後は、廃業も決意した。
 だが、常連客らが入れ替わり、立ち替わり林さんを励ました。火災直後、多くの常連客が手分けをし、焼け跡から火の手を逃れた疑似エサや仕掛け類を運び出し店近くの林さん宅へ運び入れた。
 客は次々と火事見舞いに訪れ、「僕らも力になる。もう一度、店を開きましょう」と励まし続けた。
 常連の1人で中学時代から店に通う31歳の男性は、「私の青春は、林さんの釣具店抜きには考えられない。林さん夫婦の親しみやすい人柄、あたたかな店の雰囲気。もう一度よみがえってほしい」と営業再開を待ち望む。
 「店がこれほど、愛されていたとは」と林さん。常連客に背中を押され、いま焼け跡にプレハブの簡易な店舗を建て、営業を再開することを計画している。
 林さん自身も釣り好きで、50代の頃は仲間に呼びかけ、静岡県御前崎市までしばしば海釣りに出掛けた。「店を再開したら、また仲間と一緒に釣果を楽しみたい」。いま、その思いで再開に向けてまっしぐらに進もうとしている。(武田康弘)