戦闘ヘリ:富士重工と防衛省、「アパッチ」発注中止で対立

2009年10月13日 15時0分 更新:10月13日 15時40分

陸上自衛隊明野駐屯地に配備された「AH64D」
陸上自衛隊明野駐屯地に配備された「AH64D」

 陸上自衛隊の戦闘ヘリ「アパッチ」の発注中止を巡って、防衛省と発注を受けた富士重工業が対立している。同社は先月、「当初計画の62機を前提に米企業にライセンス料などを支払ったが、10機で発注を中止され回収できなくなった」と、防衛省に500億円弱の支払いを求める文書を提出し、応じなければ民事訴訟も辞さない構えを見せる。これに対し、防衛省は「契約は単年度ごとで、62機すべてを契約したわけではない」と一歩も引かない構えだ。

 防衛省は01年、老朽化した対戦車ヘリ「AH1S(コブラ)」の代替機として、「AH64D(アパッチ)」を導入することを決定、所要機数を62機とした。富士重と関連部品メーカーは、国内生産へ向けて米ボーイング社からライセンスを取得、ライセンス料など初期費用として四百数十億円を支払った。富士重はそれを62分割して1機ごとの代金に上乗せする予定で生産に入ったという。

 ところが、防衛省は02~07年度に計10機を発注後に調達を打ち切った。冷戦終了で防衛費が削減される中、1機約80億円と高額なことに加え、同省によると、富士重側から「ボ社が自社生産を中止するため、うちがライセンス生産を続けるには多額の追加投資が必要になる」との説明があったためという。

 さらに富士重は08~09年度の発注を見込んで3機分の部品をボ社から100億円弱で購入。このため調達の打ち切りで初期費用と合わせ500億円弱が回収できなくなった。

 問題の背景には、国と防衛企業との間の独特の商慣行がある。航空機など高額な装備品を国内でライセンス生産する場合、初期費用は企業側が立て替え、納入予定機数に分割して1機ごとの代金に上乗せして請求するのがこれまでの慣例で、納入予定機数は契約に明示されなかった。

 今回のトラブルを受け、防衛省は08年度以降、初期費用の支払総額を明示し、調達の初年度に一括して支払う方式に変更した。

 同社は毎日新聞の取材に「コメントできない」としている。

【樋岡徹也、高橋昌紀】

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