年金記録問題の全面解決に向け、長妻昭厚生労働相は、原簿の紙台帳記録の8億5千万件とコンピューター上の記録を4年間ですべて照合する方針を固めた。社会保険庁の調査で、紙台帳からコンピューターへの入力ミスが厚生年金で約560万件あると推計されており、受給漏れにつながっている可能性がある。
自公政権は年間7千人程度で照合作業を進め、10年間で終えるとしていた。だが、民主党は最低保障年金などを柱とする新しい年金制度を創設するため関連法の13年度成立を目指していることから、長妻氏はそれまでに記録問題への対応のメドをつける必要があると判断。作業期間を大幅に短縮させるため、来年度からの4年間で延べ6万〜7万人の要員を投入する方向で調整に入った。長妻氏は「初めの1〜2年は、人も集中的に協力いただく態勢をとりたい」としており、最初の2年間は手厚くする考えだ。
8億5千万件の記録は、オンライン化される以前の国民年金や厚生年金のもの。持ち主が分からない「宙に浮いた年金」や保険料の納付記録がない「消えた年金」などの問題は、紙台帳からコンピューターのオンラインシステムに切り替えた際にも生じたとみられる。社保庁の抽出調査では、原簿からコンピューターへの未入力や、加入期間を間違えて入力していたケースが見つかった。支払った保険料の記録が漏れると、受給資格に必要な加入期間を満たさずに無年金となったり、本来もらえる年金より少なくなったりする可能性がある。
作業は、今年度中に作られる紙台帳を画像ファイル化して基礎年金番号で検索できるシステムを使い、コンピューター上の記録と照合する。必要な要員は、来年1月に社保庁の後継組織として発足する日本年金機構で一括採用する。派遣やアルバイトによる臨時職員を想定し、社会保険労務士などの専門知識を持った人も含める。