海中の森と呼ばれる「藻場」の面積が、90年ごろに比べると、日本各地の沿岸で平均で2割も減ったことが、水産庁の委託で財団法人海洋生物環境研究所が行った調査でわかった。藻場の減少は、海の生物多様性の喪失に直結するほか、サザエやアワビ、メバル類などの漁業資源の減少につながると指摘されている。
藻場は、沿岸に広がる海藻や海草の茂み。魚や甲殻類など様々な生物の隠れ家で、産卵や生育のための「ゆりかご」として機能している。
調査は、国や自治体などが00年から08年までに公表した藻場面積に関する最新調査結果を集計。89〜91年度に当時の環境庁が実施した調査のデータと比較した。
その結果、データが集まった北海道から沖縄までの約8万3800ヘクタールの藻場のうち、2割に相当する約1万8500ヘクタールが失われたことが分かった。特に、静岡県以西の太平洋岸から九州西岸にかけての海域では4割近く減っていた。
減少には複数の原因がかかわっているとみられ、海水温の上昇傾向や、ウニなどの生物による食害で起きる磯焼けなどが指摘されている。
調査をまとめた海洋生物環境研究所中央研究所(千葉県)の秋本泰(ゆたか)・主任研究員は「藻場は、干潟と並んで日本の海の豊かさを支えている。2割減という数字は、藻場に暮らす多様な生物に大きな影響を与える恐れがある」と話している。(山本智之)