どうやらあと20年くらい、地球温暖化は進みそうにない
どうやらあと20年くらいは、地球温暖化は進展しなさそうだ。9日のBBC「What happened to global warming? (地球温暖化に何が起きたか?)」(参照)を読んでそう思った。率直に言うと、私としては科学的議論がどうたらということではない。そうではなく、日本で言えばNHKみたいな公共放送であるBBCが気候変動懐疑論者(Climate change sceptics)の話をそれなりに、おちょくりでもなく取り上げてきたのかと驚いたということだ。つまり、このあたりが一般向けの国際ジャーナリズム的な転機の潮時の合図なのかなと思ったのだった。
What happened to global warming?
科学と非科学は厳密に区別ができると言う人々がいるが、私には、地球温暖化の是非について問われるとよくわからなくなる。そのあたりは以前、「極東ブログ:[書評]正しく知る地球温暖化(赤祖父俊一)」(参照)にも書いた。もっとも、これは科学対非科学というより、科学対科学の対立ということでもある。ただし、どっちにしても科学で真実が極まるというものでもなさそうだ。
私としては、赤祖父先生の意見にけっこう説得されている面があるので、地球温暖化は科学的に見て正しいのか保留状態だが、それでも化石燃料に依存した現代文明のあり方は政治的に見て好ましいとは思えないので、まあ、地球温暖化は科学的真実というより宇宙船地球号の合意事項ということでいいんじゃないか、と納得している。日本の鳩山政権もがんばれと思っている。日本国民はみんな年間30万円以上の生活費をその阻止に当てると痛みを覚悟して鳩山さんを支持しているんだよ、と。
BBCの報道だが、ありがちな気候変動懐疑論者のつまみ食いかなと読んでいくと、さらっと書いているわりに、おや、へぇと思うことが数点あった。ので、ちょっとブログのネタにいただこう。
This headline may come as a bit of a surprise, so too might that fact that the warmest year recorded globally was not in 2008 or 2007, but in 1998.見出しにちょっとビックリした人もいるかもしれないが、記録が付けられてからこのかた、もっとも暑かった年はというと、2008年でも2007年でもなくて、1998年だったという事実も、ちょっとビックリ。
But it is true. For the last 11 years we have not observed any increase in global temperatures.
でも、本当なんですよ。過去11年間を振り返ると、地球の気温上昇は観察されていない。
And our climate models did not forecast it, even though man-made carbon dioxide, the gas thought to be responsible for warming our planet, has continued to rise.
しかも人類の気候モデルは予測に失敗している。地球温暖化の原因と見られる二酸化炭素を人類が排出しつづけているのに、予想できていない。
So what on Earth is going on?
地球に何が起きているんだ?
ということで、まず、事実として、この10年間、地球の平均気温は上がっていない。気候変動懐疑論者にしてみると、温暖化の原因は太陽活動だから、それは太陽の問題でしょ、というわけだ。このあたりは、先に紹介した赤祖父先生もそうだった。
しかし、こうした言明はミスリードとも言える。というのは、英国王立学会が二年前に行った調査では、太陽の要因は計算に含まれていて、そしてなおかつ、人類が排出する温暖化ガスによって地表気温が上昇していると結論しているからだ。気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)の学者さんもそのことはすでに考慮の上とのことだ。つまり、地球温暖化の問題を推進してきた学者さんたちにとって、この10年の「異状」はけして異状ではない。
だが、現実として見ると、地球の温暖化はこの10年は進んでいないのも事実。なので、気候変動懐疑論者も徐々に勢いづいてきた。地球温暖化なんてないんじゃないの、というのが証明されれば、革命的じゃないか("If proved correct, this could revolutionise the whole subject.")。
BBCの記事の前半はこのように太陽活動論による気候変動懐疑論者の議論の紹介だが、後半、海洋科学に移る。
結論から言うと、どうも地球の気候変動に大きな影響を与える海の温度だが、これはそれ自体の30年ほどの周期的な特性をもっているらしい。
These cycles in the past have lasted for nearly 30 years.過去の(海温)サイクルはだいたい30年続いた。
So could global temperatures follow? The global cooling from 1945 to 1977 coincided with one of these cold Pacific cycles.
それに地球の気温は追随するのか。1945年から1977年までの地球の寒冷化は、太平洋の寒冷サイクルの一つに一致する。
Professor Easterbrook says: "The PDO cool mode has replaced the warm mode in the Pacific Ocean, virtually assuring us of about 30 years of global cooling."
イーストブルック教授によれば、PDO(the Pacific decadal oscillation:太平洋の10年単位のサイクル変動)による寒冷化モデルは、太平洋の温暖化モデルに置き換わっている。実際、約30年では我々には確実だ、とのこと。
So what does it all mean? Climate change sceptics argue that this is evidence that they have been right all along.
何、それ? 気候変動懐疑論者の議論では、これもまた彼らが正しいことの証拠になる。
もちろん、地球温暖化論では考慮済みの話ではあるらしい。まあ、そうこなくちゃ。とはいえ、向こう20年くらいは寒冷化が続くという予想は認めている。
To confuse the issue even further, last month Mojib Latif, a member of the IPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change) says that we may indeed be in a period of cooling worldwide temperatures that could last another 10-20 years.話がややこしいのは、先月のことだが、IPCCのメンバーであるモジブ・レイティフ氏は、向こう10年から20年の間は、世界的に見て寒冷化の状態にあるだろうと述べた。
温暖化論のIPCCにしてみると、この寒冷化の時代が終われば、その埋め合わせで温暖化ガスの効果が強化され、結局温暖化になるということらしい。
それでも、ようするに、あと20年くらいは、地球は寒冷化するというのは、現状正しい認識として妥当なようだし、それは地球温暖化の議論とも、鳩山イニシアティブとも矛盾しない。
でも、そうは言っても、ねえ。
| 固定リンク
コメント
田舎では焼き芋なんて普通にやってますからね。焼き芋うめえwwwwwwwww
投稿: rabi | 2009.10.12 16:39
僕は余りBBCには行かないのですがNYTなどを読んでみると結構両サイドを紹介したりします(じゃなければpolitically incorrectなので)。AGW懐疑論を報じてるのは全然珍しくはないと思うんですけどねぇ。
この記事もHadleyのデータをcherry pickしたりPiers Corbynみたいな気象予報士を四塔の一角みたいに紹介したりするのもどうかと。メソッドの詳細や論文の提出などしてないみたいですし。まぁ彼の予測が当たれば莫大な資産が入るからオープンにする訳ないか。
温暖化の議論は終わってないと報じてるが1970年代の温暖化議論も1920年代のタバコ-肺がん関係も同じ事言ってたですよね。つまり僕はメディアは懐疑論に時間を与えすぎ派です。2009年、ぁぁ暑い(笑)。
投稿: apeescape | 2009.10.12 17:27