中朝国境でサリン検出 付近に北の化学兵器工場

2009.10.09

 鴨緑江を挟んで北朝鮮と国境を接する中国遼寧省の丹東で昨年11月と今年2月、空気中から猛毒のサリンが検出されたことが分かった。丹東の対岸にある新義州には北の化学兵器製造工場があり、脱北者の証言によると政治犯などの囚人を使って化学兵器の人体実験を行うこともあるといい、中国当局は監視を強めている。

 9日付朝日新聞によると、サリンは中国軍の特殊部隊が国境付近で検出した。北朝鮮側から風が吹く際に調べたところ、1立方メートルあたり0.015−0.03マイクログラムのサリンが検出された。中国軍が、無毒化する薬品を航空機で散布したとの情報もあるという。

 サリンは有機リン系の神経ガスで戦前にナチスドイツが開発した。日本ではオウム真理教が1994年6月に長野県松本市、95年3月に東京都の地下鉄で使用し、多数の死傷者を出した。毒性が強いため、化学兵器以外に使用されるケースは少ない。新義州は北朝鮮を代表する化学工場が集まる工業地帯で、化学兵器プラントや研究開発施設の存在が専門家の間で指摘されている。

 北は80年代までにサリンなどの生物・化学兵器の量産体制に入ったとみられている。実際、北の貿易会社は96年にサリン原料のフッ化ナトリウムとフッ化水素を兵庫県の貿易会社から輸入したほか、韓国、ドイツからも原料を第三国を経由して輸入したことが判明している。また、囚人を対象にサリンの投与実験を行った可能性も出ている。サリンはミサイルの弾頭に搭載可能だが、実戦配備は確認されていない。