人員不足が招くのは職員の過剰な負担だけではない。「業務がこなせなくなることを恐れ、ケースワーカーが新規の受給を抑制するようになる」と岡部教授。
専門家の試算では、生活保護を必要とする生活困窮世帯のうち、実際に受給をしている世帯数の割合は10~20%。昨年秋からの大量派遣切り以降、新規受給のハードルはやや低くなったものの、申請拒否や受給の打ち切りによる餓死・孤独死が後を絶たない。今年4月には北九州市で福祉事務所に相談に訪れていた30代の男性が孤独死。三重県桑名市でも生活保護を打ち切られた50代の男性が餓死した。
*
こうした状況を受け、ケースワーカーの人員や財源確保を国に求める動きが出ている。日本弁護士連合会(日弁連)は昨年11月、生活保護法の改正要綱案をまとめた。市町村負担のケースワーカーの人件費を国の負担にすることや、ケースワーカーの人員数を、受給者60人(郡部は40人)に1人と義務化することなどを盛り込んでいる。
一方、貧困問題の解決に意欲を見せる鳩山新政権は発足直後、今年3月末で廃止された生活保護のひとり親世帯への上乗せ支給「母子加算」を復活すると宣言した。だが、制度の担い手であるケースワーカー不足をどう解消していくのかは、見えてこない。
毎日新聞 2009年10月12日 東京朝刊