エコナ、6年前から「危険性」指摘 国や花王は迅速な情報提供を
10月11日23時9分配信 産経新聞
国から特定保健用食品(特保)の表示許可を受けながら、発がん性が懸念される成分が検出された花王の人気食用油「エコナ」シリーズ。6年前にも同シリーズのマヨネーズに含まれる別の成分に、がんを促進させる可能性があると指摘され、現在、食品安全委員会が調査中だ。その結論も出ていない段階で、新たなリスクが明らかになった。花王や国はこうした状況を消費者に伝えておらず、消費者団体などは適切な情報提供や迅速な対応を求めている。(今泉有美子)
■欧州で議論に
エコナは「体に脂肪がつきにくい」ことをうたい厚生労働省から特保の“お墨付き”を得て、平成11年に発売された。缶詰やペットフードなど59商品あり、年間約200億円を売り上げるヒット商品に成長した。
今回、問題になっているのはエコナに含まれる成分「グリシドール脂肪酸エステル(エステル)」。油のにおいを抜く過程で出る不純物で、海外では乳幼児用粉ミルクなどにも含まれている。
今年3月、ドイツの研究機関が体内で分解されると、発がん性物質の「グリシドール」になる危険性があると指摘し、欧州で波紋が広がっている。
厚労省はエコナにもエステルが含まれている可能性があるため、花王に調査を指示。その結果、他の食用油に比べ、10〜182倍も含まれていることが6月に判明した。
ただ、エステルが体内で発がん性物質に変化することを示すデータはなく、危険性は定かではない。
■6年前に疑問の声
エコナの安全性を疑問視する声は以前からあった。
15年にシリーズのマヨネーズが特保に認められた際、専門家から「エコナの主成分、ジアシルグリセロール(DAG)にがんの進行を促進させる可能性がある」と指摘があったのだ。
厚労省は同年、がんの促進作用を調査。がんになりやすいラットを使った動物実験で、普通の油に比べてがんが増える傾向が出たため、17年に食品安全委員会に審査を依頼した。
「動物実験の結果、危険性は少ない」「十分なデータがそろっておらず、安全とは言い切れない」。委員の意見は分かれ、現在も結論には至っていない。
そんな状況のところに、今回、新たにエステルの問題が浮上した。
消費者団体、主婦連合会の佐野真理子事務局長は「安全性に疑問が残る食品に国がお墨付きを与えるなんておかしい。危険性があるならば国は消費者に警告するべき」と指摘する。
■長期化の懸念
エステルの問題発覚後、厚労省は「明らかな健康被害が出なければ、食品衛生法に基づく販売中止などの指示はできない」と静観してきた。一方、危険性を指摘する消費者団体の声に押される形で花王は9月16日、エコナの販売自粛に踏み切った。
さらに、エコナの特保について消費者庁が再審査手続きに入る方針を明らかにした今月8日、花王は自ら特保の失効届を提出した。
花王は「想定以上の反響があり、今の状況を打破したかった」と説明。エステルの含有量を減らした新商品を開発予定という。
もし、花王が自ら特保を返上せず、再審査となっていたら−。もう一度、食品安全委の審査を経る必要があるため、事態は長期化していた可能性がある。
消費者の「特保」への信頼を損なう結果となった「エコナ問題」。早稲田大スポーツ科学学術院の鈴木正成教授(運動栄養学)は「企業が都合のよいデータばかり選んで提出するなど、特保の審査には問題点が多かった。消費者庁には思い切った制度の見直しを図ってほしい」と指摘している。
◇
■特定保健用食品(特保) 国の審査を受け、「おなかの調子を整える」「歯の健康維持に役立つ」など効果を具体的に表示することを許可された食品。科学的根拠なしに効果をうたう「健康食品」の氾濫(はんらん)を防ぐために平成3年に始まり、現在は約890品目が指定を受けている。厚生労働省が所管していたが、9月から消費者庁に移った。
【関連記事】
・ 花王が「エコナ」の特保失効届
・ 「特保取り消し手続きも」花王「エコナ」で消費者庁政務官
・ 「エコナ」問題、消費者庁“後ろ向き”対応に批判
・ エコナで消費者庁に「食品SOS対応プロジェクト」発足 福島瑞穂担当相が公表
・ 花王、「エコナ」全製品を販売自粛
■欧州で議論に
エコナは「体に脂肪がつきにくい」ことをうたい厚生労働省から特保の“お墨付き”を得て、平成11年に発売された。缶詰やペットフードなど59商品あり、年間約200億円を売り上げるヒット商品に成長した。
今回、問題になっているのはエコナに含まれる成分「グリシドール脂肪酸エステル(エステル)」。油のにおいを抜く過程で出る不純物で、海外では乳幼児用粉ミルクなどにも含まれている。
今年3月、ドイツの研究機関が体内で分解されると、発がん性物質の「グリシドール」になる危険性があると指摘し、欧州で波紋が広がっている。
厚労省はエコナにもエステルが含まれている可能性があるため、花王に調査を指示。その結果、他の食用油に比べ、10〜182倍も含まれていることが6月に判明した。
ただ、エステルが体内で発がん性物質に変化することを示すデータはなく、危険性は定かではない。
■6年前に疑問の声
エコナの安全性を疑問視する声は以前からあった。
15年にシリーズのマヨネーズが特保に認められた際、専門家から「エコナの主成分、ジアシルグリセロール(DAG)にがんの進行を促進させる可能性がある」と指摘があったのだ。
厚労省は同年、がんの促進作用を調査。がんになりやすいラットを使った動物実験で、普通の油に比べてがんが増える傾向が出たため、17年に食品安全委員会に審査を依頼した。
「動物実験の結果、危険性は少ない」「十分なデータがそろっておらず、安全とは言い切れない」。委員の意見は分かれ、現在も結論には至っていない。
そんな状況のところに、今回、新たにエステルの問題が浮上した。
消費者団体、主婦連合会の佐野真理子事務局長は「安全性に疑問が残る食品に国がお墨付きを与えるなんておかしい。危険性があるならば国は消費者に警告するべき」と指摘する。
■長期化の懸念
エステルの問題発覚後、厚労省は「明らかな健康被害が出なければ、食品衛生法に基づく販売中止などの指示はできない」と静観してきた。一方、危険性を指摘する消費者団体の声に押される形で花王は9月16日、エコナの販売自粛に踏み切った。
さらに、エコナの特保について消費者庁が再審査手続きに入る方針を明らかにした今月8日、花王は自ら特保の失効届を提出した。
花王は「想定以上の反響があり、今の状況を打破したかった」と説明。エステルの含有量を減らした新商品を開発予定という。
もし、花王が自ら特保を返上せず、再審査となっていたら−。もう一度、食品安全委の審査を経る必要があるため、事態は長期化していた可能性がある。
消費者の「特保」への信頼を損なう結果となった「エコナ問題」。早稲田大スポーツ科学学術院の鈴木正成教授(運動栄養学)は「企業が都合のよいデータばかり選んで提出するなど、特保の審査には問題点が多かった。消費者庁には思い切った制度の見直しを図ってほしい」と指摘している。
◇
■特定保健用食品(特保) 国の審査を受け、「おなかの調子を整える」「歯の健康維持に役立つ」など効果を具体的に表示することを許可された食品。科学的根拠なしに効果をうたう「健康食品」の氾濫(はんらん)を防ぐために平成3年に始まり、現在は約890品目が指定を受けている。厚生労働省が所管していたが、9月から消費者庁に移った。
【関連記事】
・ 花王が「エコナ」の特保失効届
・ 「特保取り消し手続きも」花王「エコナ」で消費者庁政務官
・ 「エコナ」問題、消費者庁“後ろ向き”対応に批判
・ エコナで消費者庁に「食品SOS対応プロジェクト」発足 福島瑞穂担当相が公表
・ 花王、「エコナ」全製品を販売自粛
最終更新:10月12日0時0分
Yahoo!ニュース関連記事
- エコナ「国は迅速な情報提供を」 6年前から「安全性」疑問視の声[photo](産経新聞) 10月12日 7時56分
- エコナ、6年前から「危険性」指摘 国や花王は迅速な情報提供を(産経新聞) 10月11日23時 9分
- 「エコナ」の特保許可失効届け出(フジサンケイ ビジネスアイ) 10月 9日 8時15分
- エコナ、特保取り下げ 消費者庁、再審査を停止(産経新聞) 10月 9日 7時56分
- 花王が「エコナ」の特保失効届(産経新聞) 10月 8日22時44分
ソーシャルブックマークへ投稿 1件
関連トピックス
主なニュースサイトで グリシドール脂肪酸エステル の記事を読む
この記事を読んでいる人はこんな記事も読んでいます
- 「無料で遊べる」携帯ゲーム高額請求相次ぐ(読売新聞) 10日(土)14時44分
- 20代女性「年の差婚」が増加 不況が影響「収入安定志向」強まる(J-CASTニュース) 11日(日)18時15分
- 民宿の女子学生に睡眠薬「電気消えたら侵入」(読売新聞) 10日(土)7時16分