両者は自社製品のアピールに躍起だ。
アップルは、米国サンフランシスコでのiPodの製品発表会において、療養中だったスティーブ・ジョブズCEO自らが新製品を説明。米国において、アップルが73.8%のシェアを獲得していることを示しながら、ソニーを「その他」のなかに入れてみせた。
また、iPod nanoにビデオ機能や歩数計などを搭載した特徴を示しながら、「他社の携帯音楽プレーヤーとは戦う土俵が違ってきた」とも語った。特にiPod touchは、「優れたiPodとしての機能だけにとどまらず、優れたポケットコンピュータであり、優れたゲーム機である」(ジョブズCEO)と述べ、単なる携帯音楽プレーヤーでないことを強調した。
BCNの調べによると、ウォークマンの平均単価が1万3000円前後であるのに対して、iPodは1万8000円前後と高く、付加機能モデルが中心となっていることが分かる。
これに対して、ソニーは「高音質および長時間バッテリーという点では絶対に負けない。ウォークマン専用売り場の拡充にも乗り出している。中学生や高校生は、かつてはiPod一辺倒だったメイージが崩れ、ウォークマンを指名購入する例が増えている」(広報)とみる。年末商戦にかけてのさらに激しいシェア争いは必至だ。
そんななか、量販店店頭ではこんな声も出ている。
「ソニーが首位になったという報道の影響や、iPodの新製品が登場した効果もあり、携帯音楽プレーヤーに対する注目度が高まっている。土日に売り場に足を運ぶ来店客が増えており、両社の相乗効果によって、携帯音楽プレーヤー市場全体に活気が出はじめている」(ヨドバシカメラマチルメディアAkiba)というのだ。
携帯音楽プレーヤーの市場は、この半年間にわたって、台数、金額ともに前年割れが続いている。BCNの調べによると、8月の販売台数は前年同月比7.1%減、販売金額では13.5%減となっている。
だが、iPodが発売された最新週では、10.6%増と前年同週を上回っており、ソニーのウォークマンも、トップシェアだった前週並の販売実績を維持している。両社の激しい競合が携帯音楽プレーヤー市場全体の拡大につながっているのは確かだ。