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松田喬和の首相番日誌:得意分野で失敗する

 鳩山由紀夫首相のぶら下がり会見に出るようになって4週間が過ぎようとしている。鳩山首相は麻生太郎前首相を反面教師に、ぶら下がりに関して二つの鉄則を立てたという。華美な絵画や生け花をバックにしない。そしてもう一つは、ぶら下がりを途中で打ち切り、テレビカメラに後ろ姿を見せないことだ。

 8日も「『村山(富市元首相)談話』を踏襲するのか」と聞かれ、帰りがけの足を止めて「踏襲したい」と答えていた。鳩山首相の言い回しの癖に少しは慣れたと思うが、オヤと感じた発言も幾つかあった。

 民主党の役員体制が決まった7日、こんな質問が出された。「新シフトの狙いを教えてください」。対する首相の答弁は「それは小沢(一郎)幹事長に聞いてください。私の知るところではありません。いいシフトを作っていただいたと、そのように感謝しています」だった。

 確かに党務は小沢幹事長に全面委任している。しかし、わが国は議院内閣制で、鳩山首相は民主党の代表だ。「小沢幹事長に聞いてください」では、表の権力と裏の権力とを使い分ける「二重権力」を認めたも同然だ。

 それから首相事務所の政治献金疑惑への答弁だ。以前から、この種の疑惑は献金した事実や金額、氏名、会社名などを秘すことが主な目的だった。ところが、首相事務所の疑惑は献金していない人の名を収支報告書に記したことが、問題視されている。

 「ある意味で逆の問題。あまり発想として(問題意識が)なかったんだと思う」と、5日のぶら下がりでは説明し、「だからこそ国民の皆さんにも納得できないかと思います」と、分析を加えた。少々詭弁(きべん)過ぎる。

 政界でも有数のお金持ちで、クリーンな政治を心掛けてきたはずの鳩山首相が、政治資金で抜かるとは。「ミッチー」の愛称で親しまれた渡辺美智雄元副総理の名言が思わず浮かんだ。「人間、得意分野でよく失敗するもんだ」(専門編集委員、64歳)=毎週土曜日掲載

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 ■若手記者取材帳

 ◇余裕の違い

 「聞くべき相手は党執行部。麻生総裁ではありません。頭の整理できた?」。官邸での記者団の取材で不機嫌になり、数分での打ち切りもあった麻生太郎前首相。一方、鳩山由紀夫首相は丁寧に、時には20分近く話し、一礼までして去る。個人献金問題では「捜査に影響がある」と説明を避けたが、質問打ち切りはなかった。

 バー通いを批判された麻生氏と同様、鳩山氏も高級店に行くことはあるが、ハンバーガー店や近所の小料理屋で夕食を済ませるカジュアルさは麻生氏にはなかった。支持率低下の中、選挙の時期を探り密談にいそしんだ麻生氏の焦りと、国民の信託を受けた鳩山氏の余裕の違いが垣間見える。【影山哲也】

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 ■首相の1週間

 ■10月3日

 IOC総会から帰国。個人献金問題で参考人聴取開始との報道に「私の知る限りはもう話している」。

 ■4日

 終日、東京・田園調布の私邸で疲れを癒やす。IOC総会出席のお礼に石原慎太郎東京都知事が来訪。

 ■5日

 急死した中川昭一元財務相の自宅を弔問。献金問題で「捜査当局が調べる段階。影響がある発言は避ける」。

 ■6日

 日本経団連の御手洗冨士夫会長と初会談。補正予算の削減額積み増しを仙谷由人行政刷新担当相に指示。

 ■7日

 米軍普天間飛行場の移設で「時間というファクターで変化する可能性は否定しない」と発言し波紋を呼ぶ。

 ■8日

 台風の中、連合の定期大会に出席。「辛抱強く民主党に力をお貸しくださった皆さんの努力に心からお礼」

 ■9日

 ソウルで日韓首脳会談。会見で「韓国の皆さんや文化が大好き。近くて近い国に」と語り、北京へ移動。

毎日新聞 2009年10月10日 東京朝刊

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