|
きょうの社説 2009年10月11日
◎自治体の不正経理 私的流用なくても信頼損ねる
昨年の12道府県の不正経理問題に絡み、会計検査院が他の26府県と2政令指定都市
について国土交通、農林水産両省の補助事業経費を同様に調査した結果、石川、富山県を含む全自治体で不正経理が見つかっていたことが分かった。昨年の検査報告では任意で選んだ自治体全てで確認されたことから他でも疑われていたが、「やはり」という思いである。自治体の不正経理では千葉県で総額30億円分が発覚し、プールされた金の一部が職場 の親睦会や卓球台の購入などに使われ、商品券の換金など私的流用が疑われる使途不明金が1億円を超えた。 石川、富山県は私的流用や裏金を否定しているが、検査院は補助金が本来の会計処理か ら離れて使われれば「裏金」と判断している。過去の事例をみても国補助金を経理操作すれば私的流用や無駄遣いの温床になりやすく、業務上必要な使途であってもルールに反すれば行政の信頼を損ねる。監査の在り方を含め、予算の管理、執行には一段の厳格さを求めたい。 会計検査院が問題視しているのは▽架空発注などで業者に現金をプールする「預け」▽ 随時納入した後で別名目でまとめて払う「一括払い」▽契約と異なる物品を納入する「差し替え」▽年度内の物品調達を装い翌年度に納入する「翌年度納入」―などの処理である。 石川県では2007年度までの5年間で2億数千万円分を指摘された。物品購入では「 一括払い」や「翌年度納入」が大半を占めるという。石川、富山県の詳細は明らかになっていないが、自治体のチェック機能を示すために自らの判断で結果を公表することがあっていい。 不適切な処理の背景には、国の補助金は余ったら使い切るという意識があることは確か だろう。それが「予算のやり繰り」として慣行になっていた面は否めない。 一方で、自治体が物品の納入年度をずらしたりするのは、予算の使い切り主義の弊害と の指摘がある。むろん不正経理を正当化する理由にはならないが、民主党政権が国と地方の予算の在り方を見直すなかで、不正の余地をなくし、地方が使い勝手のよい効率的な仕組みを整えていく必要がある。
◎日中韓首脳会談 経済連携の前進が試金石
鳩山由紀夫首相が初めて参加した日中韓首脳会談で、首相が提唱する東アジア共同体構
想の実現の検討や、経済成長と環境保護が両立する「持続可能な開発」に関する共同声明が発表された。6カ国協議の早期開催でも一致し、鳩山首相のアジア重視外交が一歩前進したといえる。東アジア共同体創設の意義について、鳩山首相は先の国連演説で「アジア太平洋地域の 安全保障上のリスクを減らし、経済上のダイナミズムを共有し合うことは大きな利益になる」と述べた。 アジアでは中国とインドが経済、軍事で台頭しており、新しい外交ビジョンを示すこと で、アジアにおける日本の存在感を高める外交戦略でもあるのだろう。しかし、まだ夢物語のような段階で、岡田克也外相が共同体に米国を加えないなどと発言し、日米同盟に波風を起こすのは、決して賢明な外交とは言えない。 アジア経済のダイナミズムを共有するという点では、当面の課題である経済連携協定( EPA)の実現が先決である。日韓のEPA交渉は2003年に始まったが、農産物の開放をめぐる対立や、韓国産業界の対日貿易赤字拡大の不安などから、翌04年に中断されたまま現在に至っている。 日中韓のEPAについては、投資の枠組みに関する政府間協議が05年に開始され、今 回の首脳会談でようやく、EPAの前段である投資協定を来年成立させることで一致したところである。 また、経済成長と環境保護の問題では、温室効果ガス削減の新しい国際枠組みに中国を 引き込むことが、日本の外交課題でもある。これら眼前の問題をクリアできない限り、共同体構想は幻想に等しいと言わなければならない。 鳩山首相の提案に中韓両国は表向き歓迎の意向を示している。ただ、同床異夢の面も否 めず、たとえば、韓国側には首相提案を支持することで、永住外国人への地方参政権付与の実現や、歴史教科書問題の前進を図りたい思惑もあるとみられる。共同体構想に対する中韓の「本音」をつかんで対応する必要もある。
|