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【暮らし】

<どう変わる>消費者団体訴訟制度 損害回復にも期待

2009年10月8日

情報収集のためCOJが今年2月に開設した110番=東京都内で

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 事業者による不当な契約や勧誘行為を、個人に代わって消費者団体が差し止め請求できる消費者団体訴訟制度(団体訴権)。導入から二年余がたち、不当な契約条項が改善されるなど、効果は表れつつあるが、認知度はいまひとつだ。消費者被害の回復がしにくいなど課題が残る中、政権交代を機に損害賠償請求制度導入への期待が高まっている。 (境田未緒)

 「以前は事業者に無視されたこともある。適格消費者団体に認定されてからは対応してもらえるようになった」。消費者支援機構関西(ケーシーズ)の西島秀向事務局長は、二年間の変化をこう振り返る。

 団体訴権は、国が認めた適格消費者団体だけが行使できる。二〇〇七年六月の制度開始以降、認定されたのは全国で七団体。あいち消費者被害防止ネットワーク(ACネット)が近く申請を予定しており、消費者支援ネット北海道も本年度中の申請を目指す。

 不当な契約や勧誘の情報を得た適格団体は、弁護士や相談員などのグループで検討し、事業者に改善を申し入れる。受け入れられない場合は差し止めの提訴もでき、これまでに六件が提訴に至っている。

 ケーシーズは、借金を返済期限前完済する客に「早期完済違約金」を支払わせる消費者金融会社の契約条項と、英会話教室の不当な勧誘行為の差し止めを求めて提訴。違約金のケースは一審で差し止めが認められた。

 英会話教室とも、今後、虚偽説明などで勧誘した場合は全額返還し、ケーシーズにも違約金を支払うことで和解が成立。西島事務局長は「勝訴以上の和解内容。消費者、特に被害が多い大学生に広く知らせたい」と話し、消費者庁、文部科学省が大学生などに和解内容を周知することで若者の啓発や消費者教育に生かせればと願う。

     ◇

 差し止め請求など適格団体の活動は消費者被害の未然防止、拡大防止につながる。ことし八月までに計二十四件の是正の成果を挙げた消費者機構日本(COJ)は、年間約八千万円の被害を抑止したと推計している。

 ただ実際に被害に遭った人の損害回復は、事業者が応じなければ個人で提訴するしかなく、少額の場合は泣き寝入りがほとんど。COJの磯辺浩一事務局長は「事業者の不当な収益をはく奪するためにも損害賠償請求権が必要」と語る。

 不当な収益のはく奪については、消費者庁関連三法の付則でも三年以内の検討が盛り込まれた。民主党は野党だった今年三月、消費者団体訴訟法案を国会に提出。違法収益のはく奪と、消費者の被害回復の仕組みづくりに意欲を見せており、磯辺事務局長は「損害賠償請求制度を早期に検討する流れになるのでは」と期待している。

 COJでは二十三日午後六時半から、東京都千代田区のプラザエフで、セミナー「適格消費者団体による、消費者被害防止の到達点と損害金等の請求制度の導入」(全国消費者団体連絡会共催)を開催。請求制度の必要性などを考える。参加費五百円。(問)COJ=電03(5212)3066

 <消費者団体訴訟制度> 消費者に代わり適格消費者団体が原告となって、不当な契約条項の使用や勧誘行為の差し止めを請求する制度。消費者契約にかかわる不当行為だけだった差し止め請求の対象に4月、不当表示が加わった。12月からは、訪問販売の不当勧誘など、特定商取引法上の不当行為も差し止めできる。適格団体になるには、法人格や消費者支援の活動実績があることが条件で、内閣総理大臣が認定する。

 

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