特定扶養控除とは、納税者が16歳以上23歳未満の子どもを持つ場合に適用される控除です。控除額は所得税で年63万円、住民税で年45万円。一般の扶養控除(所得税38万円、住民税33万円)よりも大きい控除となっています。
ところが、政府は、この控除を一般の扶養控除と同じ扱いにすることを提言しました。高校や大学、専門学校などに通学する子どもを持つ親にとって負担増となるだけでなく、これから子どもを持つ世代にとっても税制上のメリットがなくなる内容です。
OECD(経済協力開発機構)の統計によれば、日本の教育費支出(高等教育)は、他の先進諸国に比べて私的支出の割合が高いのです。増税によって家計に占める教育費の割合が高まることで、経済力の強弱が子どもの学歴・学力に影響を与え、ひいては格差の拡大を助長することにつながります。
控除を縮小するのであれば、その代わりにどんな配慮をするのかをセットで提起するのが筋であり、十分な手当がないのであれば、控除の縮小は認められません。
政府税調の提言は、税制の問題を専門に議論する場である以上、他の政策との整合性に欠くものになりがちです。しかし、教育政策の面から教育費支出のあり方をどうするのかという議論がないまま、一方的に控除を縮小するというのは、少子化対策に逆行することにもなるのではないでしょうか。
特定扶養控除は維持すべきです。その上で、高所得者ほど恩恵が大きい今の控除の仕組みを改めること、低中所得層の教育費負担を軽減する政策を求めます。