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「準備間に合わない」 新型インフルワクチン接種、自治体悲鳴 '09/10/10

 新型インフルエンザワクチンの接種開始を前に、地方自治体が態勢整備に追われている。2日に国の基本方針が示されてから19日のスタートまでわずか2週間あまり。準備が間に合わず、実施を遅らせる地域も出てきそうだ。

 「国からの情報があまりに少なく、決まっていないことが多すぎる」。千葉県の担当者は頭を抱える。県の相談窓口には1日300〜400件の電話が殺到。3分の1はワクチンに関する問い合わせだ。

 「どこで」「いつから」との質問が一番多いが「われわれにもまったく分からない」(担当者)。

 厚生労働省が示した標準的なスケジュールでは、19日以降、医療従事者を皮切りに順次、優先対象者への接種を始める。しかし、県側は接種を行う医療機関の取りまとめや対象者の人数把握、卸業者との納入量の調整などの膨大な作業に追われており、日程通り実施するのは難しいという。

 「県民の不安を取り除くために、早く具体的な日程を示したい」。開始までに、住民に情報を周知できるかどうかも大きな課題だ。

 「段取りを現場に丸投げするなら、もっと時間的な余裕がほしい」とぼやくのは大阪府の担当者。大阪府内で接種を行う医療機関は5千以上になる見込み。「すべての医療機関が一斉に始めるのは無理」といい、準備が整ったところから順次スタートする。

 ワクチン接種が1回で有効なのか、2回必要なのかについても国の最終判断はまだ示されていない。スケジュールが確定しない中、現場の医療機関にも混乱が広がっている。

 「うちの子は優先接種の対象なのか」。横浜市港南区の診療所「竹田こどもクリニック」には、保護者からのこんな問い合わせが増えているという。ぜんそくなどの持病がある子どもは優先順位が上がるが、「継続して治療を受けている」などの基準がある。

 竹田弘たけだ・ひろし院長は「基準はあいまいで、最終的にはかかりつけ医が誰に優先して打つかという判断を迫られることになる。保護者が納得してくれるかどうか」と不安顔だ。

 日本小児科学会の新型インフルエンザ対策室長を務める岡山大の森島恒雄もりしま・つねお教授は「重症化のリスクが高い患者が対象から漏れないよう、かかりつけ医の判断で幅広く打てるようにすることが重要」と説明。「混乱が生じないよう、学会としても具体的な方法を示していきたい」としている。




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