猫を償うに猫をもってせよ

2009-10-30 新刊です このエントリーを含むブックマーク

禁煙ファシズムと断固戦う!

禁煙ファシズムと断固戦う!

 ほれほれー、裁判所から「インチキ文化人」と認定された、とレビューを書くんだ某君、それでイナゴどもの「参考になった」を百集めるのを目指すのだ。

2009-10-10 比較文学研究 このエントリーを含むブックマーク

 今日は駒場で『比較文学研究』の合評会があったので、行くつもりでいたのだが、何だか面倒くさくなって行かなかった。

 巻頭論文千葉一幹の『虞美人草』論なのだが、これがひどいから文句を言いに行くつもりでいたのだが、まず、坪内逍遥は馬琴を否定した、勧善懲悪を否定した、しかるに『虞美人草』は勧善懲悪だから、漱石は反近代的な小説を提示したのだ、と実にバカバカしいことが書いてある。

 私は15年前に『夏目漱石江戸から読む』で、『虞美人草』を歌舞伎お家騒動ものと比較して論じたが、数年後に名古屋飯田祐子さんに会ったら「あれは家庭小説でしょう」と言われ、ぎゃふんとなって、以後調べたが、最初の新聞連載小説ということで、漱石は家庭小説の枠に則って書いたばかりである。菊池幽芳、渡辺霞亭、半井桃水、須藤南翠、武田仰天子といった作家たちが常連で、だいたい女が主人公で、家庭内の騒動やら恋愛やらが重畳する通俗もの、であろうか。

 だいたい千葉さんがそんなことを知っていて書いているとはとても思えないし、カルスタ柄谷行人論文である。しかも、逍遥は、『八犬伝』の八犬士が、人情が描かれていないと批判はしているが、勧善懲悪だからといって批判しただろうか。なら『当世書生気質』は勧善懲悪ではないのか、『マクベス』や『リチャード三世』も勧善懲悪だから反近代的なのか、『或る女』も構造は『虞美人草』と同じだが? 

 というわけで、もう批判などというレベルではなくて、こんな論文を巻頭に置くことに、会員として抗議したいくらいだし、こんなの、日本近代文学のまともな専門家が見たら笑われてしまうぜ。これで査読雑誌だというのだから呆れる。

 だいたい、東大比較に限らず、比較文学会には、日本近代文学に手を出して、碌でもない論を立てる人が多くて困る。諸坂成利なんかもそうだが、それに比べると大東君の立派なこと。

 しかしそんなことを私がいくら言っても、ダメな奴は生涯ダメなのだ。

 

2009-10-09 小林よしのり氏への疑問 このエントリーを含むブックマーク

 小林氏は「国民主権」を言う者は左翼だ、としてこれを批判している。

 しかしそれなら、なぜ、近世の庶民は天皇を知っていたなどということを、力説しなければならないのだろうか。それは「国民主権」への譲歩ではないのか?

 あるいは、近世の日本人が天皇を知らないなどということになったのは、北条義時、足利尊氏といったとんでもない乱臣賊子、あるいは新田の子孫を称しつつ朝廷をないがしろにした徳川幕府が悪いのであり、明治維新によって日本の真の王者が明らかにされたのであり、愚かなる衆庶もその時そのことに目覚めたのだ、と言えばいいではないか。

 西尾幹二となるともっとあれで、国民は天皇を支持してきた、などと言うが、じゃあ支持しなかったら革命が起きてもいいんですか、と言いたくなる。

 「民は依らしむべし、知らしむべからず」が、当為のベシではなく必然のベシだと、呉智英先生は言うのだが、当為でも必然でも、近世庶民などというのは愚かだから天皇を知らなかったのだ、と言えばいいではないか。

 だから愚かな庶民を啓蒙して天皇の存在を知らしめたら、困ったことに庶民は天皇制批判まで学んでしまった、というのが「啓蒙の弁証法」か?

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ああ、栗原さんが、文藝誌から決して声がかからないという、私の道を後から意気揚々とついてくる……。

 村上春樹、これでもうノーベル賞はとれないね。『1Q84』みたいな二流アクション+ポルノ小説が訳されてしまったら、ノーベル賞委員会から見放されるだろうから。あのねノーベル賞委員会ってけっこう「私小説」好きなんだよ。ソール・ベロウだって『ハーツォグ』で貰ったし、ゴールディングにも『自由な転落』があるし、大江だって『個人的な体験』があるでしょ。君の好きなレイモンド・カーヴァーなんて、あっちじゃ通俗作家なのは知ってるでしょ。まあそれを言ったらポール・オースターだってそうだけどね。ヘミングウェイなんか『老人と海』で与える、って言われて、『武器よさらば』だの『誰がために鐘は鳴る』なんて通俗小説に与えるんじゃない、って言われてるしね。通俗作家のモームなんか無視してチャーチルにやったしね。ノーベル賞は、通俗作家は貰えないんだよ。君がとるくらいなら、なんでサリンジャーにやらないんだ、ヴォネガットにやらなかったんだ、って話になるでしょ。アメリカで有力なのはフィリップ・ロスドン・デリーロだよ。君みたいに物語に逃げ込む人には、くれないよ。ま、日本人で次にとるのは、多和田葉子だね。

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佐伯順子さんの新刊を見たら、あとがきに「故・島田謹二」への謝辞まであったが「勤二」と誤記してあった。ヨコタ村上の誤記癖がうつったか。

 (小谷野敦

2009-10-08 東京外国語大学 このエントリーを含むブックマーク

 実は私は、昨年、東大から雇い止め通告を受けたあと、いくらか錯乱状態になって、最近は見ていなかった公募情報を見たら、東京外国語大学で、日本近代文化史の教授、准教授公募していたので、出した。四年ぶりくらいの公募応募であろうか。

 まあ当然落とされたわけだが、金富子という人が今年から教授になっている。この人がその公募の人事かどうかは分からないのだが、確か7,8年前やはり外大の公募比較文学」に出した時は李孝徳が採用されたのだよなあ。外大ってそういう大学か、と何やら納得したのであった。

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大澤真幸先生は何ごともなかったかのように『群像』連載を続け、東浩紀君は『文學界』で、自分は拗ねて、サボっていました、ごめんなさいと反省しているが、今後の予定を見ても、何ひとつ反省していないように見える。まずデリダなんてインチキ学者を本気で論じたことから反省すべきではないかね。

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石上玄一郎が死んだ。これも「まだ生きていたのか」の口だな。しかし文壇最高齢は、今年百歳のまどみちお先生である。いや、それとも102歳の吉行あぐりさんだろうか。

 恐ろしいくらい「70代」は死なない。あいつら化け物だ。

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http://news.nifty.com/cs/topics/detail/091008194012/1.htm

しつこいぞ読売、なんだこの見出しは。「禁煙条例に怒り」とするのが普通だろう。それにしても、「男子の本懐」と言った浜口雄幸と、たかがメールくらいで「怖かった」と言う松沢。政治家になる以上、いつだってそのくらいの覚悟は当然だろう。庶民の怒りを知れ。

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ノーベル文学賞ドイツのヘルタ・ミュラー(1953− )。そんな人知らないが、イェリネクが三年前で、十年前にグラスなんだから、ドイツ語文学多すぎだろう。

 調べたら一つだけ『狙われたキツネ』(三修社)って翻訳があって、訳者は早大准教授山本浩司(1965- )という、『童貞放浪記』の主演俳優と同名の人で、きっと今ごろ新聞社から取材が来ているだろうが当人は知ってか知らずか呑気なブログを書いている。

http://www.f.waseda.jp/hiroyam/

2009-10-07 ミシェル・トゥルニエとか このエントリーを含むブックマーク

 トゥルニエの『フライデーあるいは太平洋の冥界』は、私が大学へ入ったころに翻訳が出て、ちと気になっていた。『ロビンソン・クルーソー』の書き直しだが、原題は「フライデー」ではなくてフランス語だからvendrediである。その頃「クイズダービー」で篠沢教授が『ロビンソン・クルーソー』関係の問題に正答したので、巨泉が「教授、イギリス文学なのに何で分かるんですか」などと訊いていたが、そりゃトゥルニエを読んだからだろうよと私は思った。

 しかし現物はそれから四半世紀、読むことがなく、今回古本を入手して読み始めたが、つまらない。『ロビンソン・クルーソー』をフライデーの視点から描いたというあたりが、いかにもポスコロで、今となっては「ありがち」だが、実際には、筋自体は『ロビンソン』と同じで、フライデーなんて三分の二くらい進まないと出てこない。途中に哲学的思弁が多くて、私は小説というのは哲学を読む場所ではないと思っているからどんどん飛ばしたが、結局面白くも何ともなかった。

 篠沢教授は、ヌーヴォー・ロマンは下らない、と言う人だから、何を言っているかと思って『篠沢フランス文学講義』を見たら、無視されていた。調べたらトゥルニエドゥルーズの友人で、あんなインチキ哲学者の友人では面白いはずがないと思った。

 もう、20世紀のフランス文学というのは、プルースト以降はむやみとつまらないのは、どういうわけであろうか。映画だってそうで、フランスイタリアの恋愛ものなんてのはだいたい男女が出てきて、雰囲気がアンニュイで、それだけである。『旅情』とか、『男と女』とか、みんなそんな感じ。アントニオーニの『情事』だってそうである。マルグリット・デュラスなんてのも、そんなに面白いかね。『愛人』とか、なぜあんなに騒がれたかというと、フランス人の美少女とアジア人、ということで騒がれただけだろう。中身は大したものではない。

 あと映画では『天井桟敷の人びと』とか『大いなる幻影』とかもつまらない。何でこれらが名作扱いされるのであろうか。

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ヨコタ村上孝之は、シラバスに名前がなくなっているが、大学のウェブサイトにはあるから、停職かと思うが、早く発表してほしいものである。「ドラゴン出版」って何だ? 

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石原慎太郎の『わが人生の時の時』を読んでみた。私はスポーツ嫌いだから、違和感はあったが、しかし昨今の芥川賞受賞作などよりはよほど面白い。石原をバカにする人はとりあえずこれを読んでからにしたほうがいいと思う。

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「リトル・ピープル」ってこれのことだよ。

http://homepage1.nifty.com/charbeljapan/

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http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20091007-OYT1T00448.htm?from=main7

その程度のことをいちいちニュースにするなよ読売。通報する奴も通報する奴で、もうナチス的相互監視社会になっているじゃないか。

 (小谷野敦