「医療へのアクセス」でシンポ
財団法人医療科学研究所は10月9日、提供と保障の面から医療へのアクセスに関する問題を考えようと、「医療へのアクセス―その実態と対応」と題した第19回シンポジウムを東京都内で開いた。シンポジウムでは、日本福祉大社会福祉学部の近藤克則教授による基調講演の後、阿部彩氏(国立社会保障・人口問題研究所国際関係部第2室長)ら3人のシンポジストが、医療へのアクセスに関してそれぞれの視点で講演した。
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近藤教授は基調講演の冒頭、シンポジウムの背景と狙いを説明。健康保険証があればどの医療機関でも受診できる「フリーアクセス」を日本の医療の長所とする一方で、医師の偏在や病院の閉鎖など医療を提供する側の問題や、無保険者の存在や医療費の自己負担の増加といった医療保障制度に関する問題など、医療へのアクセスをめぐってさまざまな問題が生じていると指摘した。
その上で、▽医療提供面▽医療保障面▽海外での医療の公平への対応―の3つの側面から医療アクセス問題を考え、原因や対応策を探りたいと述べた。
3人のシンポジストによる講演のうち、貧困や社会保障の分野に詳しい阿部氏は、「医療保障面におけるアクセス問題」と題して、「国民皆保険」の崩壊や受診抑制などを現在の医療保障に関する問題点として指摘した。
阿部氏は、無保険状態の世帯が33万世帯(全世帯の0.7%)、国民健康保険料の滞納世帯数が382万世帯(同0.8%)であることなどを指摘し、「国民皆保険」が崩壊していると主張。また、家計支出が少ない世帯では医療費が低いことや、総家計支出が同じでも家計が苦しいと考えられる母子世帯の方が医療費の支出が少ないことなどを挙げ、低所得層で受診抑制が行われている可能性を示した。
シンポジウムの最後に、近藤教授は「政権交代した今、どういう日本にしたいかを考えるチャンスだ」と述べ、医療へのアクセスを考える今後の論点として、求める医療保障や社会保障の水準、財源の負担のあり方などについて検討する必要性を示した。このほか、医師の養成や配置のあり方に関して、「医療界による提言が問われている」とし、「『これなら納得できる』という制度を医師がつくっていくべき」と強調した。
更新:2009/10/09 22:26 キャリアブレイン
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