チーム医療で救命救急の課題解決を
シンポジウム「救命救急の課題とチーム医療−現場からの発信−」が10月9日、さいたま市で開かれた。第40回日本看護学会「成人看護T 学術集会」(埼玉県看護協会主催)の2日目に開かれたシンポジウムでは、獨協医科大越谷病院副看護部長の浅香えみ子氏を座長に、医師や看護師ら4人のシンポジストが救急医療の課題などについて討論した。【関連記事】
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まず、座長の浅香氏が救急医療の問題点として、救急外来のコンビニ化や救急車の適応外要請などを指摘し、解決策として「チーム実践」の必要性を強調。チームメンバーには医療スタッフのほか患者・家族も含まれるなどとした。
続いて4人のシンポジストがそれぞれのテーマで講演した。
東京消防庁救急部救急指導課長の永井秀明氏は、「病院前救護体制の充実強化について」と題した講演で、市民、医療機関と連携する必要性を強調。医療機関との連携策として、緊急受診の要否や診療可能な医療機関などについてアドバイスを行う「東京消防庁救急相談センターの運営」や、情報共有を目的とした「救急搬送連携パスの確立」を挙げた。
横浜医療センター救命救急看護師長の藤井由美恵氏は、「救急医療の現場におけるチーム医療と看護師の役割」と題して、自身が副看護師長を務めた国立病院機構災害医療センター救命救急病棟の状況を説明。病棟配属後の経験年数が2年以下の看護師が44%を占めるとし、実践能力向上のための教育体制の充実や、「指導的役割ナース(リーダーナース)」の育成などの必要性を指摘した。
獨協医科大越谷病院救命救急センター長の池上敬一氏は、看護師の急性期看護能力を向上させる学習システムの開発について講演。技術・手技などの「テクニカルスキル」だけでなく、チームワークなどの「ノン・テクニカルスキル」の学習が必要だとして、「プロが『本物』と思い込む環境」でのシミュレーション研修を導入し、さらにそれを現場での学びで強化すべきと主張した。
埼玉医科大医学部特任教授の宮山徳司氏は、埼玉県保健医療部長として県の保健医療行政に携わった立場から、行政による救急医療体制の整備状況や取り組みを紹介。今後の方向性として、医師や看護師の養成・確保や、診療実績に応じた診療報酬上の措置などが必要とした。また、行政の大きな役割の一つとして、市民に向けた地域の医療機関の専門性などに関する情報提供や、適切な受診行動に関する積極的な普及・啓発などを挙げた。
その後の討論では、救急医療の限られた資源を有効に使うため、どのように情報共有を行うべきかなどについて、座長がシンポジストに発言を求めた。
永井氏は「東京消防庁救急相談センターでは、勤務後に看護師と救急相談員がカンファレンスをし、情報の共有化を図っている。連携パスで(情報の)データベースができれば、病院側からコメントを頂くなど、互いに情報共有しながら連携していきたい」とした。
また、藤井氏は「(病院での)他部署との連携が大事になると思う。日ごろのコミュニケーションや、治療のアルゴリズムなどがあれば情報共有ができる」と発言。
これに対し池上氏は、「アルゴリズムやガイドラインは山のようにあるが、実際は使われていない。使う訓練をする機会を提供しない限り、パフォーマンスは良くならない」と実践の必要性を指摘した。
宮山氏は「チームの一員としての意識を市民がいかに持てるかに尽きる。市民の皆さんに救急医療の現場や実態を知ってもらえるような情報提供を行っていくことが、一つのキーだと思う」と述べ、座長も「市民を含めて、救急医療が公的なものであり、限りある資源であるということを共通認識することが必要」と同調した。
更新:2009/10/09 22:49 キャリアブレイン
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