お礼とお知らせ
昨晩から今朝にかけて、暖かいコメントを下さった方々、ありがとうございました。
その一方で、誹謗中傷のコメントも多く来るようになりました。掲示板への中傷書き込みのみならず、私に直接攻撃の手が伸びつつあることに恐怖を感じます。
とりあえず暫定的に、コメントの受付を中止させていただきます。暖かいコメントもいただけなくなるのは残念ですが…。
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私のブログを読んで不愉快になるなら、読まなければいいのに…。読んでから不愉快だと言って騒いでいるのがよくわからない。
民事訴訟法1
1(1)まず、裁判所は心証どおりの認定ができるであろうか。
(2)まずYの過失を認定できるであろうか。弁論主義の適用範囲と関連して問題となる。
ア ここで弁論主義とは、事実及び証拠の提出を当事者の権能かつ責任とする建前を言い、当事者の意思尊重の観点から認められ、かつ不意打ち防止の機能を営むものである。
イ そして弁論主義の一環として、「裁判所は当事者の主張しない事実を認定してはならない」とされる(弁論主義の第1テーゼ)。そしてここに言う「事実」とは、主要事実、すなわち権利の発生・変更・消滅という法規の構成要件に該当する事実を指す。なぜなら、上述した①当事者の意思尊重②不意打ち防止という趣旨からすれば、主要事実について認めれば十分だからである。
ウ そうだとすれば、XはYの不法行為(民法709条)に基づく損害賠償を請求していると解されるところ、「過失」は民法709条の構成要件であるから、XがYの「過失」を主張していれば、Yの過失を認定できるようにも思える。
しかし、「過失」は規範的概念であり、当事者が主張する具体的過失と異なる過失が認定された場合には、相手方にとって不意打ちとなる。そこで、「過失」の場合には具体的過失を「準主要事実」として第1テーゼを適用すべきである。
よって、XがYの「過失」のみならず、具体的過失を主張している場合には、裁判所はYの過失を認定できる。
(3)次に裁判所は、Xに5割の過失があること、すなわち過失相殺(民法722条)を認定できるか。
ア ここで過失相殺における「被害者側の過失」は主要事実である(民法722条)。第1テーゼの対象となるのは準主要事実である具体的過失であるが、その前提として主要事実も当然主張を要するところ、Yが過失相殺を明確に主張していない状況で過失相殺を認定できるであろうか。
思うに、当事者が必ずしも法律に精通していないことに鑑みれば、他の主張に過失相殺の主張が含意されていると見られる場合には、裁判所は過失相殺を認定できると解する。
これを本問について見ると、YはXの「赤信号無視」という具体的過失を主張して請求棄却を求めており、これは言わば過失相殺を主張したものと言える。よって、裁判所は過失相殺を認定することは可能である。
イ そうだとしても、本問ではYの主張する具体的過失と裁判所の心証が微妙に食い違っているが、そのような場合でも裁判所は心証どおりの具体的過失を認定し、過失相殺できるであろうか。
思うに、準主要事実が具体的過失である以上、完全な一致は困難である。そこで、両者が不意打ち防止という弁論主義の機能を害しない程度に一致している場合には、裁判所は心証どおりの認定が可能と解する。
本問では、Yの主張するXの具体的過失と裁判所の心証は、「Xが赤信号で飛び出した」という範囲で一致している。そして、Xとしては「赤信号で飛び出したか否か」を中心に攻撃防御を展開したはずであるから、不意打ちはないと考えられる。よって、裁判所は心証どおりのXの過失を認定した上で、過失相殺を認定できる。
2(1)では以上を前提に、裁判所はいかなる判決をすべきか。
具体的には、損害額2,500万円を5割相殺してYに1,250万円の支払いを命ずべきか、それともいわゆる割合的認定によるべきか。
(2)思うに、この点については処分権主義(246条)に基づく当事者(原告)の意思尊重の観点から決すべきである。
(3)そして一部請求の場合、原告は自己の過失相当分をあらかじめ差し引いて請求することが多い。また、原告としては、請求額の範囲内で可能な限り多くの賠償を得たいというのが通常の意思のはずである。
(4)以上より、損害額全額を基準に過失相殺すべきであり、裁判所はYに1,250万円の支払いを命ずる判決を下すべきである。
以 上
まず1(3)アで「第1テーゼの対象となるのは準主要事実である具体的過失であるが、その前提として主要事実も当然主張を要する」とした点については、こういう見解が存在しないわけではないものの(下記URLの(2)説参照)、あまり一般的とは言えない。準主要事実説に立った場合、「過失」等の規範的概念は法的評価の問題となり、弁論主義の対象とならない、というのが現在の圧倒的通説でしょう。むしろ「準主要事実」という言葉を使わなければよかったかも知れない。そうすればあたかも「重要間接事実説」に立っているかのようになり、それなりに一貫した記述に見えたかも…。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1220024367
また、同じく1(3)アにおける「過失相殺」に関する記述もポイントを外してしまった。金銭債務の支払請求訴訟において、たまたま弁論の中に反対債権の存在が現れていても被告が相殺を主張しなければ相殺できないのと同じように、過失相殺の場合も被告の明確な主張を要するかどうかの問題なわけだから…。
以上で今年の再現答案のUPはおしまい。後は煮て食うなり焼いて食うなり好きにしろ!
刑法1
1 Aが路上に倒れ込むまでの甲乙の罪責
(1)まず甲は手拳で、乙は木の棒で、それぞれAを殴打しているので、暴行罪(208条)の構成要件に該当する。
(2)そして、乙は甲に「一緒に反撃しよう」と言われて応じ、甲と共に暴行を加えているので、共同正犯(60条)となりうる。
(3)しかし、甲乙は「殴りかかった」Aに反撃していることから、正当防衛(36条1項)が成立しないか。
ア まず、Aが「殴りかかっ」ていることから、「急迫不正の侵害」はあると言える。
イ 次に甲は「Aに怪我を負わせてやろう」と考えていることから、積極的加害意思が認められるところ、これにより防衛の意思が欠けることにならないか。その要否及び要件と関連して問題となる。
思うに、①条文に「自己…の権利を防衛する『ため』」とあること②刑法が法益保護のみならず、社会倫理秩序維持も目的としており、防衛の意思があって初めて社会倫理秩序の枠内にとどまると言えることから、防衛の意思は必要と解する。そしてその内容としては、緊急状態における反撃であることから攻撃に対応する意思が必要であり、かつそれで足りると解する。
これを本問について見ると、甲にはAの攻撃に対応する意思は認められる。よって防衛の意思に欠けるところは無い。
ウ 次に、36条1項に「やむを得ず」とあることから防衛行為の相当性の要件が必要なところ、この要件は満たされるか。
この点、法益保護のみならず社会倫理秩序維持も刑法の目的とする自説の立場からすれば、防衛行為の相当性は主観面・客観面を総合して判断すべきところ、甲には積極的加害意思があるので主観面で相当性が欠ける。
一方、乙は手拳で殴りかかられて棒で反撃しているので、客観面で相当性が欠ける。
以上より、甲乙とも防衛行為の相当性が欠け、正当防衛は成立しない。
エ ただし、乙の行為は「防衛の程度を超えた行為」と言えるので、過剰防衛(36条2項)となる。
(4)このように乙にのみ過剰防衛が成立することが、共同正犯である甲に影響するか。過剰防衛の法的性質と関連して問題となる。
思うに過剰防衛において刑が任意的に減免されるのは、緊急状態ゆえに責任が減少するからである。そうだとすれば、過剰防衛の成否は各人毎に決すべきであり、他の共同正犯者には影響しないと解すべきである。
(5)以上より、甲乙には暴行罪の共同正犯が成立するが、乙についてのみ刑の任意的減免の余地がある。
2 Aが倒れ込み、丙が加勢した以降について
(1)まず前提として、Aは倒れ込んだもののまた立ち上がる可能性があり、甲乙の「防衛反撃」の状況は継続しているものと解される。
(2)丙は途中から加勢し、乙とともにAに暴行を加えているが、罪責はどうなるか。
この点、丙は加勢前の結果に対しては責任を負わないのが原則である。
しかし共同正犯の本質は相互に利用補充し合って犯罪を実行する点にあるところ、先行する行為の結果を積極的に利用する意思の下に共謀のうえ参加し、現に結果を利用した場合には、相互利用補充関係が認められるので、参加前の行為についても共同正犯が成立すると解する(承継的共同正犯)。
これを本問について見ると、「共同して」とあることから現場共謀があったと思われ、また丙はAが倒れ込んだ状態を利用したと言える。
よって、甲乙丙に共同正犯が成立し、Aが「脳挫傷」を負っていることから、傷害罪(204条)の共同正犯となる。
(3)ここでAに死亡の結果が生じていることから、甲乙丙に致死の結果まで帰責できないか。
この点、甲乙丙の各行為とAの死亡結果との因果関係が不明であることから、帰責できないようにも思える。
しかし、甲乙丙が傷害罪を犯していることから、その結果的加重犯である傷害致死罪(205条)が成立しないか。結果的加重犯の成立要件と関連して問題となる。
私は、基本犯と加重結果との間には相当因果関係があれば足り、過失までは不要と解する。なぜなら、結果的加重犯は基本犯が加重結果発生の類型的危険を有することから定められているものであり、加重結果が発生した以上、結果発生に向けられた過失の有無を問わず結果的加重犯を成立させるべきだからである。
本問では、甲乙丙の傷害結果と致死の結果との間に相当因果関係は認められる。よって傷害致死罪の共同正犯が成立する。
3 まとめ
以上より、甲乙丙には傷害致死罪の共同正犯が成立し、乙についてのみ刑の任意的減免の余地がある。
以 上
まず刑法の答案において罪責を論じる場合、①登場人物毎に罪責を論じる方法と②時系列順に論じる方法とがありますが、99%は①だと思います。今回は、共犯関係が複雑になりそうだったところ、①の方法ではグチャグチャになりそうだったので、敢えて②の方法を採りました。予備校の模範答案でも「甲については、後述のように○○罪の共同正犯が成立する」というような書き方をしているのが多いですが、私は「この書き方は読みにくいなあ」という印象を持っていました。皆さんはどうでしょうか?
あと心残りなのは、2(2)で承継的共同正犯を成立させてしまったところ。最初は「甲乙共同正犯と、乙丙共同正犯が成立し、甲乙集団と乙丙集団のいずれの行為がAの死につながったにせよ、乙は両方に登場するから致死の結果について帰責される可能性があり…」というよう方向で構成しようかと思いましたが、①このような構成の過去問が思い浮かばなかったこともあり、今一歩自信が持てなかったこと②この構成だと書くのに時間がかかり、2問目が途中答案になりかねないと思ったこと③問題文に「丙は、既にAが路上に倒れていることを認識しながら」とあったことから「題意は承継的共同正犯ではないか」という不安がぬぐいきれなかったことから、このような構成にしました。なお「単なる暴行の目的を超え、乙に加勢するという積極的目的があった」とか書こうとも思いましたが、現場ではビビッて書けませんでした(「積極的」という要件についてのあてはめとして正しいかどうか確信が持てなかった)。
昨年の再現者に対する「2ちゃんねる」の評価と、実際の評価が食い違っていたことについて、様々な説明が為されている。①再現が不完全だったから②ショウチャンは低い評価がつく危険性が高く、かつ上位Aがつきにくい答案を書くので評価がズレやすいから③採点ミス④ショウチャンは本当は総合D、などという説明が為されているが、なぜそのような迂遠かつ複雑な説明をする必要があるのか?
単純に昨年の「2ちゃんねる」の評価基準が間違っていたからではないのか?そもそも、「我々の評価基準は絶対に正しく、我々の評価と実際の評価がズレていたとすれば再現が不完全だったからだ」などと言うのであれば、スレを立てて議論する意味が無いのではないか?
まるで古代~中世の天文学者を見ているようだ。地動説を採れば惑星の逆行等を簡単に説明できるのに、それを認めたくないものだから、複雑な周転円理論を発明した古代~中世の天文学者に…。
確かに自分の考えるところの合格答案のイメージと、実際の合格答案のイメージがズレているのを直視するのはつらいかも知れない。そして「天動説」を採ることによってそれを回避できるかもしれない。しかし、つらいことから逃げていたら、毎年同じことの繰り返しではないか?
私自身も、チビチビとしか再現答案をUPできない小心者だ。だが自分の誤り・自分の弱点を直視する程度の勇気なら持ち合わせているつもりだ。
刑事訴訟法2
1 供述調書①について
(1)裁判所は供述調書①を証拠採用することができるか。
(2)ア ここで裁判所が証拠を証拠採用するためには、①事実的関連性②法律的関連性③証拠禁止にあたらない、という条件を満たすことが必要である。
イ そして本問においては、②法律的関連性、すなわち類型的に証拠能力が否定されないという要件が問題となる。すなわち、供述調書①は裁判所の面前での反対尋問を経ていない供述を内容とするので伝聞証拠にあたり、知覚・記憶・表現・叙述の各過程が反対尋問でチェックされていないので原則として証拠能力が否定されるが(320条)、①信用性の情況的保障と②必要性がある場合、すなわち321条以下の例外に該当する場合には証拠能力が肯定される。
ウ 供述調書①の場合、「被告人の供述を録取した書面」(322条1項)であり、「犯行」の「自白」を内容としていることから「被告人に不利益な事実の承認を内容とするもの」(同)と言えるから、証拠能力が肯定されるようにも思える。
しかし、甲は警察官Aが虚偽の事実を告げたことにより自白していることから、「任意にされたものでない疑いがある」場合にあたるとして、証拠能力が否定されないか(同条項但書・319条)。その意義と関連して問題となる。
思うに、322条1項但書・319条の趣旨は、任意でない自白をさせることは人格権の侵害であることから、証拠能力を否定するという点にある。そうだとすれば、「任意にされたものでない疑いがある」場合とは、任意性を失わせるような状況があった場合と解すべきである。
これを本問について見ると、Aは「防犯カメラに甲が写っていた」という虚偽の事実を告げている。このようなことを言われれば、通常はあきらめてしまい、しぶしぶ自白してしまうはずである。従って、「任意にされたものでない疑いがある」場合にあたり、322条1項但書・319条により裁判所は証拠採用できないと解する。
エ また、Aは黙秘権の告知をしておらず、この点からも証拠能力が否定されないか。
ここで、黙秘権不告知は違法なものである(198条2項)。そして人権保障と真実発見の調和の見地から(1条)、①違法性が重大なものであり②再発防止の見地から証拠能力を認めるべきでない場合には、そこから得られた証拠の証拠能力を否定すべきである。
これを本問について見ると、黙秘権が憲法に由来することからすれば、黙秘権不告知は重大な違法といえる(①)。また、かかる重大性に鑑みれば再発防止の必要性は高い(②)。
以上より、この意味からも裁判所は供述調書①を証拠採用することができない。
2 被害品について
(1)裁判所は被害品を証拠採用できるか。
(2)ここで、被害品は二重の意味で違法な供述調書①を端緒として得られたものであるから、供述調書①の違法性を引き継いで証拠能力が否定されないか。
(3)思うに、違法な証拠を端緒として得られた証拠は原則として違法性を引き継いで証拠能力が否定されるが(「毒樹の果実」の法理)、新たな証拠と元の証拠の関連性が薄まっている場合には例外的に証拠能力が認められると解する。
(4)これを本問について見ると、新たに捜索差押許可状が出されていることからすれば(218条1項)、関連が薄まっているようにも思える。しかし、本件差押においては、供述調書①が疎明資料として用いられており(規則156条1項)、また甲の供述に基づき友人宅においてピンポイントで被害品が見つかっており、関連が薄まっているとは言えない。
よって、裁判所は被害品を証拠採用することができない。
3 供述調書②について
(1)裁判所は供述調書②を証拠採用できるか。
(2)この点、供述調書①と異なり、黙秘権を告知して適法に行われたのであるから、証拠採用できるようにも思える。
しかし、供述調書②の内容は、違法な供述調書①の繰り返しである。そして、一旦任意でない自白をしてしまった者は、あきらめて同趣旨の自白を繰り返してしまいがちである。そうだとすれば、新たな自白の証拠能力も否定すべきである。法的根拠としては、322条1項但書に準ずることが考えられる。
(3)以上より、裁判所は供述調書②を証拠採用することはできない。
以 上
まず1(2)で319条ではなく322条1項但書を持ち出したのは間違い。
次に1(2)について。供述の任意性の問題と違法収集証拠排除の問題は両立するという見解はあるが、実際に答案で書かれたのはあまり見たことがない。
ショーコが女だという証拠は無い。
民事訴訟法2
1 小問1について
(1)本問において、Xは同時審判の申出をしている。
ここで同時審判申出訴訟とは、共同被告の一方に対する請求と他方に対するそれとが法律上両立し得ない関係にある場合において、原告の申出に基づき、弁論及び裁判を分離しないで行う訴訟形態を言う(41条)。
共同訴訟は本来別個の訴訟であるから、必要的共同訴訟(40条)でない限り、いつでも分離できるはずである(152条1項)。同時審判申出訴訟は、分離を禁止することにより、可及的に統一的解決を目指すものである。
(2)本問においては、Zは答弁書を提出せずに第1回口頭弁論を欠席している。本来であれば、Xが訴状等に記載の事項を主張できる反面、Zは何らの陳述もできない結果(158条、161条3項)、分離してX勝訴の判決を下すことが可能なはずであるが(159条)、本件が同時審判申出訴訟にあたれば、分離はできない(41条1項)。では本件は同時審判申出訴訟にあたるか。「法律上併存し得ない」の意義と関連して問題となる。
思うに「法律上併存し得ない」とは、その文言から両請求が実体法上両立し得ない場合を指すと解する。このように解すると41条の適用範囲が広くなり分離ができない場合が多くなるが、同一訴訟手続の枠内で最善を尽くすより無い。
これを本問について見ると、Zが代理権を有すると同時に無権代理人であるということは実体法上ありえないから、「法律上併存し得ない」場合にあたる。よって裁判所は、Zについて弁論を分離し、X勝訴の判決を下すことはできない。
2 小問2について
(1)裁判所はどのような判決をすべきか。
(2)まずXY間についてはX勝訴の判決を下すべきである。
(3)ではXZ間についてはどうか。
この点Zが請求棄却を求めていれば、歴史的心証は一個であることから39条にもかかわらず証拠共通が認められ、Z勝訴の判決を下す余地があるところである。
しかしZが何らの主張もしていない状況ではその余地も無く、裁判所はXZ間でもやはりX勝訴の判決を下すべきである。
3 小問3について
(1)41条1項からすれば、YとZを共同被控訴人として判決を下すことができるようにも思える。
(2)しかし、争っていないZを共同被控訴人とするのは酷である。従って、一審で敗訴してそれ以上争わなかった共同被告は被控訴人とならないと解すべきである。このように解しても、Xは一審でZに勝訴しているわけであるから、Xに酷ではない。
(3)以上より、裁判所はYとZを共同被控訴人として判決を下すことができない。
以 上
小問1は最初「同時審判申出訴訟に該当しても実は弁論の分離ができる」という説があるのかと思ってそれをたたく方向で書こうと思ったが、41条1項を読むとそんな解釈の余地があるとは思えなかった。そこで、「法律上併存し得ない」の解釈を巡る「見えない反対説」をたたくような答案にしてしまった…。
次に小問2で、「Zが請求棄却を求めていれば…Z勝訴の判決を下す余地がある」としている点は不正確。「Zが請求棄却を求め、請求を基礎付ける主張(民法117条1項)をしていれば」ですね。
小問3は浪花節だ…。
なぜ私が五月雨式に1通ずつ答案を晒しているかというと、2通同時に晒して両方とも酷評された場合(特に酷評と人格攻撃の「合わせ技」の場合)、私の心の閾値を超えてしまうからです。それでも今年は少しは味方してくれる人がいるから、酷評一辺倒だった昨年よりは大分気が楽ですが…。 今「昨年は酷評一辺倒だった」と言いましたが、昨年の再現者に対する「2ちゃんねる」の評価と、実際の成績の一覧は以下のとおりです(なお、「まちゃりん」さん、「姫」さんについては、成績を公表されなかったので割愛します。)。 上段が「2ちゃんねる」の評価、下段が実際の評価です(憲民商刑民訴刑訴 総合の順。なお、モロさんの商法の「S」は「上位A」の意。)。 なお、科目毎に6段階評価で実際の評価が「2ちゃんねる」の評価を1ポイント上回った場合を「+1」、その逆を「-1」とし、6科目合計のポイントを参考までに示しておきます。 ①顛末さん BBBAAA 合格 DABAAA 合格(-1) ②みつをさん DBBBAE C CAABBB 合格(+7) ③ショウチャン(私) FDECCC D DABACA A(+12) ④モロさん BDSABA 合格 BACBAA A(±0) ⑤NTR401さん EECACC D FDABAB B(+4) ⑥おやじむしさん EEBAAC C AFEBDD D(-5) ⑦起死回生さん CCCAAA 合格 BFCAAA B(-2) 私の評価が上にブレたのは、絶対評価なら低得点の答案が、受験生のレベル低下のために高得点答案に化けてしまったという「ナンチャッテ効果」によるところが大きかったと思います(もっともナンチャッテ効果だけなら全員一律に上にブレるはずで、それだけでは説明できない部分もあると思いますが…)。
刑法2
1 乙の罪責
(1)乙は甲乙間に宝石売買契約が存在するかのように偽装し、信販会社とクレジット契約を締結し、甲に20万円を振り込ませているが、この点につき詐欺罪(246条1項)が成立しないか。
(2)ここで詐欺罪が成立するためには、①他人を「欺」いたこと(欺罔行為)②錯誤③処分行為④財産上の損害が必要であり、また①ないし④が故意と因果関係で結び付けられていることが必要である。
ア まず、欺罔行為はありと言えるか。甲乙間の売買契約の存在は信販会社にとってクレジット契約締結の動機に過ぎないことから、類型的に処分行為を促すような欺罔があったと言えるのか問題となる。
思うに、動機に関するものであっても、それが処分行為を行うか否かを決定するにあたり重要なものであれば、欺罔行為ありと言えると解する。
本問では、信販会社において商品購入を仮装したクレジット契約が禁止されており、乙はそれを知っていたというのであるから、重要部分に関する欺罔行為があったと言える。
イ 次に錯誤(②)と処分行為(20万円の振り込み、③)はあったと言える。
ウ では④財産上の損害はあったと言えるか。翌月に乙が20万円を支払っていることから問題となる。
思うに、詐欺罪が個別財産に関する罪であることからすれば、財物の交付自体が損害であり、その後に損害の填補があったとしても無関係と解する。
よって、20万円の振り込みがあった以上、財産上の損害が認められる(④)。
(3)以上より、乙には詐欺罪が成立する。
2 甲の罪責
(1)まず、甲は乙に信販会社に対する詐欺を勧めている。
甲は乙に手口の詳細を伝えたうえ、振り込み金の受領役を務めていることから、単なる教唆(61条)を超え、共同正犯(60条)となる。
(2)次に、甲が偽の国際運転免許証を作成した点につき、有印私文書偽造罪(159条)が成立しないか。
ア まず、甲は真正な国際運転免許証として乙に交付する目的を有するので、「行使の目的」が認められる。
イ また、国際運転免許証は国境を超えて自動車を運転する資格を有するという「事実証明」に関する文書と言える。
ウ では「偽造」と言えるか。「偽造」とは名義人と作成者の人格の同一性を偽ることを言うところ、本問では名義人・作成者ともにAITであり、「偽造」とは言えないようにも思えるので問題となる。
思うに、文書偽造罪の保護法益が文書に対する公共の信用であることからすれば、名義人と作成者の同一性は、公共の信用がどこに置かれるかという観点から決すべきである。
本問では、公共の信用の基礎はAITが国際運転免許証を発行できるという点にあり、「名義人」は「国際運転免許証を発行できるAIT」、「作成者」は「AITそのもの」である。よって人格の同一性の偽りが認められ、「偽造」ありと言える。
エ 以上より、甲には有印私文書偽造罪が成立する。
(3)次に甲は、偽の国際運転免許証を真正なものとして乙に交付しているので、偽造私文書行使罪(161条)が成立する。
(4)また、甲は偽の国際運転免許証を真正なものと偽り、20万円を交付させているので、別の1項詐欺罪が成立する。
(5)以上より、甲には①詐欺罪②別の詐欺罪③有印私文書偽造罪④同行使罪が成立し、③④は牽連犯(54条)となり、①②③④が併合罪(45条)となる。①②は同一に帰すようにも思えるが、別個のものと解すべきである。
以 上
ご覧のとおりスカスカの答案です。約30分で書きました。それでも私の平成20年の刑法2よりはましだと思うのですが、どうでしょう?
「2ちゃんねる」の雰囲気が悪いので晒すのがおっくうになっていましたが、(少数ながら)私の再現を期待してくれている人もいるようなので、もう少し頑張ってみます。
刑事訴訟法1
1 Aの撮影行為について
(1)Aの撮影行為は適法か。
(2)まず、Aの行為は強制処分にあたるか。強制処分には法律上の根拠が必要なところ(197条1項但書)、写真撮影については218条2項以外に根拠が無いので違法とならないか。強制処分の意義と関連して問題となる。
この点、かつては直接間接の物理的強制を伴うものが強制処分とされた。しかし科学技術が発達した現代においては、物理的強制を伴わなくとも人権を侵害することが可能となっており、物理的強制を伴うものに限るのは人権保障(1条)の観点から妥当でない。
かと言って、多少なりとも人権侵害を伴う処分を全て強制処分とするのは、真実発見(1条)の見地から妥当でない。そこで、強制処分とは、被処分者の意思に反して重要な人権を侵害する処分と解すべきである。
そして写真撮影については、プライバシー権(憲法13条)という重要な人権を侵害する処分であるので、プライバシーが放棄されているといった特段の事情が無い限り、強制処分にあたる。
(3)では、Aによる本件撮影も強制処分にあたるのか。
この点、自宅の居室ではプライバシーが保護されるべきであり、カーテンを開けたという一事をもって直ちにプライバシー放棄とすべきではない(閉め忘れ等の場合もある)。しかし本件のようにカーテンを開けて積極的に窓越しに顔を出したところを撮影したような場合については、辛うじてプライバシーの放棄があったとみてよい。よって、本件撮影は任意処分と解すべきである。
(4)では、Aによる本件撮影は任意処分として適法なのか。
思うに、任意処分と強制処分の限界は微妙であり、やりようによっては人権侵害のおそれがある。そこで、適正法定手続(憲法31条)の要請に基づく比例原則を任意処分についても妥当させるべきである。具体的には、撮影の必要性・緊急性があることを前提として、具体的状況に照らして手段が相当と言える場合に適法となると解する。
これを本問について見ると、防犯カメラの映像と照合する必要があるので、必要性は認められる。また振り込め詐欺事件が頻発している状況に鑑みれば、緊急性も認められる。また方法についても、窓から顔を見せたところを公道から撮影するという穏当なもので、相当性の範囲内に留まっていると解される。
以上より、Aの撮影行為は適法である。
2 Bの撮影行為について
(1)Bの撮影行為は適法か。
(2)まず、本件処分は強制処分か任意処分か。
前述の基準に照らして検討すると、公衆が集まるレストランにおいては一般にプライバシーが放棄されていると解されるので、任意処分と解すべきである。
(3)ではBの撮影行為は任意処分として適法か。
前述の基準に照らして検討すると、まず必要性・緊急性については設問前段同様認められる。
では相当性はどうか。この点、本問ではかばん内の小型ビデオカメラで撮影するという手法が採られているが、このような手法では右手首のあざのような小さなものをピンポイントで撮影するのは難しく、全身を細かく撮影せざるを得ない。いかにプライバシーが放棄されているレストランでのこととは言え、食事の様子を細かに観察・撮影されるのは通常不快に思うはずである。また、他の客を写してしまう可能性も高い。
その点は措くとしても、「客を装って」とあることから撮影は店に無断で行われたと考えられるところ、通常飲食店では店の雰囲気が重視されることからすれば、この点でも相当性を欠くといえる。
(4)以上より、Bの撮影行為は違法である。
以 上
まず総論ですが、普通は「在宅時の撮影=違法」「人が集まるところでの撮影=適法」という筋なんでしょうが、後者について「客を装って」「小型ビデオカメラ(隠しカメラ)」で撮影したという、いかにもあやしい事情が付加されていて「ねじれ」が生じているのがやっかいなところ。
次に各論ですが、まず設問前段については、具体的事情に対する評価を1(3)(任意処分か緊急処分かの判断)の部分と1(4)(任意処分であることを前提として、適法か否かの判断)の部分とに分けて出してしまったのはあまり良くなかったかも。あと適法という結論も、自分なりに筋は通したつもりだが、果たして良かったのかどうか。
後段については、あてはめに凝ったわりには成功していないかも。
今日の未明、「2ちゃんねる」で「知り合いでは…」というレスを書いた方、その心当たりの方に問い合わせてみてください。別人のはずです。
民法2
1 小問1について
(1)まず本問を論ずる前提として、相続の時点でBに対する債務がどうなるか論ずる。
思うに、嫡出子の間では相続分は均等であり(900条4号)、債務は相続分に応じ て分割されると解すべきである(427条)。
従って、相続の時点ではCDEがBに対する債務を1000万円ずつ均等に負っている。
(2)しかしその後遺産分割が為されたことから、遺産分割の遡及効により(909条)、Cが単独債務者となるはずである。
(3)しかしこれでは、資力の無い相続人が単独債務者になった場合に債権者に酷である。そこで、D・Eに対して支払いを請求する余地は無いか。Bが909条但書の「第三者」として保護されないか問題となる。
思うに、909条の趣旨は、法律関係安定のため遺産分割の遡及効を原則としつつも、分割前の状態を前提に法律関係に入り込んだ者を遡及効を制限して保護するという点にある。そうだとすれば、同条但書の「第三者」とは、単に事実上の利害関係を持っただけでは足りず、法律上の利害関係を持つに至った者を指すと解すべきである。
従って、Bが分割前の遺産の状態を前提としてDEに対して差押をしていたというような事情の無い本問においては、BはDEに対して債務の支払を請求することはできない。
2 小問2について
(1)まず、DはGより先に登記を得ていることから、Gに対してマンションの所有権の確認を請求することはできないか。177条の「第三者」の意義と関連して問題となる。
思うに、177条の趣旨は、不動産取引に登記という公示を要求することによって、自由競争を促進するという点にある。そうだとすれば、177の「第三者」とは、当事者及びその包括承継人以外の者であって、登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者と解すべきである。
本問においては、DとGは前主・後主の関係にあり、Gは「第三者」にあたらない。よってDはGに対してマンション所有権の確認を求めることはできない。
(2)このようにDがGにマンション所有権取得を対抗できない結果、Dはマンション所有権を失い、共同相続人間に不公平が生ずることになる。
しかし、合同行為であって双務契約ではない遺産分割を解除(541条)することはできない。
ただしDは担保責任(911条)の追及により、CEに対して一定の金銭の支払を求める余地はある。
以 上
2問目の方はご覧のとおりひどい出来です(でも仲間はいっぱいいそう)。
小問1は「当然分割説」のあと何を書けばいいのかわからなかった。債権者取消権については、そりゃ大展開したら悪かろうが、触れるだけなら死因というほどのこともないのではないかと思う。
小問2については、「遺産分割の債務不履行解除→×」「合意解除→○」という判例は択一レベルの知識として知っていたので、最初それを書こうかと思ったが、ここで「この2つの判例は矛盾してないか?」という疑念が頭をよぎった(前者の判例においては、「遺産分割の遡及効により、遺産は最初からそういう状態だったことになるから、解除はあり得ない」と言っていたはずだが、その理屈で言ったら合意解除も駄目では?)。それで結局再現答案のような書きぶりになった。なお、遺産分割は「合同行為」ではないですね。この点は誤りです。
あと、結局「預金」はどう使えばいいのかわからなかったし…。
ともかく、これで1日目の分UP終了!
8月16日(日)夜、再現UPを再開しようと決めたら、興奮してよく眠れなかった(わがイーグルスが大逆転勝ちしたせいで興奮した、という面もあったが)。
朝3時ごろ目が覚め、憲法再現答案をブログにUPし、仕事に行った。夕方仕事から戻ると、「きっと酷評されているだろうな」と思いながらおそるおそる「2ちゃんねる」を見てみた。ところが、意外に好意的な反応だった(あくまでも17日(月)午後7時時点での話であるが…)。
民法1
1 小問1について
(1)BはCから甲を取り戻せるか。
(2)まず、BはAに甲売却にかかる代理権(99条以下)を付与しているものと解される。
(3)しかし、Bは「甲を売るのはやめた」と言ってAに委任状の破棄を指示している。これにより代理権はどうなるか。
ここで、代理権授与を単独行為と解すれば、代理権は遡及的に消滅する。
しかし、現行法が委任と代理を明確に区別していないことを考えれば(104条)、代理権授与もまた契約の一種と解するのが妥当である(無名契約)。そうだとすれば、少なくとも代理権がAの同意なくして遡及的に消滅することはない。
(4)しかし、本問でAは「バイクを買うため」であるのに借金返済と称している。そこで、Bが詐欺(96条)を理由として代理権授与契約を取り消すことが考えられる。その場合には代理権が遡及的に消滅するのでAは無権代理となり、BはCから甲を取り戻すことができるのが原則である。
(5)では、Cは一切保護されないか。
まず、Cは96条3項の「第三者」として保護される余地がないか。この点96条3項の趣旨は、取り消され得べき法律関係を信頼して法律関係に入った者を、遡及効を制限して保護するという点にある。そうだとすれば、96条3項の「第三者」とは、取消前に出現したことを要すると解すべきである。本問のCは、取消後に出現しているので、96条第3項の第三者として保護されることはない。
では、112条の「第三者」として保護されないか。この点、CがBの「旧知の画商」であることからすれば、CはBに確認すべきであり、Cには少なくとも「過失」があると言える。よって、Cは112条の「第三者」としても保護されない。
以上より、BはCから甲を取り戻すことができる。
(6)なお、取り消された行為の相手方から目的物を取り戻すには公平の見地から同時に対価の返還が必要であるが(533条類推)、本問では取戻権者と取り消し得べき行為の当事者が異なるので、50万円を返還する必要はない(以下同じ)。
2 小問2前段について
(1)AはDから乙を取り戻せるか。
(2)ここで親権者Bは、包括的代表権を有する(824条)。
しかし、Bが代金を株式購入に充てる目的で乙を売却していることから、利益相反行為(826条)として無権代表にならないか。
思うに、取引の安全の見地から、利益相反行為にあたるか否かは客観的・外形的に決すべきである。本問の場合、客観的・外形的に見れば利益相反行為にはあたらない。
(3)そうだとしても、代表権濫用として効果不帰属とならないか。
思うに、親権者は広範な裁量権を有することから、専ら自己または第三者の利益のために行為したというような例外的な場合で無い限り、代表権濫用とはならないと解すべきである。本問のBは、自己の利益を図る目的で乙を売却しており、代表権濫用にあたる。
ではそれをCに対抗できるか。思うに、この場合本人の利益を図るという外観と、自己の利益を図るという内心との間に食い違いがあり、93条類似の状況がある。よって、同条の類推適用により、相手方が真意を知り、または知り得べかりしときは、効果不帰属と解すべきである。よって、CがBの真意につき悪意有過失であれば、Aは乙を取り戻すことができる。
3 小問2後段について
(1)AはDから乙を取り戻せるか。
(2)ここで親権には財産管理権と監護権が含まれるところ、「子の親族」である伯母の申立に基づき親権喪失が宣告されれば(834条)、財産管理権を喪失して無権代表となり、Aに効果は帰属せずAはDから乙を取り戻せるのが原則である。
(3)しかし、Dは112条によって保護されないか。
思うに、112条の趣旨は、代理権喪失の周知を怠った本人の犠牲の下に、相手方を保護するという点にある。そうだとすれば、法定代理の場合には本人に非は無いから、112条は法定代理には適用がないと解すべきである。
よってDは112条により保護されず、AはDから乙を取り戻すことができる。
以 上
この答案に関しては、特にコメントはありません。見てのとおりです。
憲法2の答案を晒す前に一言。
「スリーナイン判例」(私は勝手にそう呼んでいる)を素材にした予備校の答練を受ける度、私は釈然としないものを感じていました。「憲法17条は自己責任か代位責任か」の論点を書いたら「余事記載です」などと言って減点される等々…。
そんな折、甲斐素直先生のHPの記事を見て、心の中のモヤモヤが消えていく感覚を覚えました。
http://www5a.biglobe.ne.jp/~kaisunao/seminar/826exemption_from_responsibility.htm
本答案は、甲斐先生のHPの記事を多分に参考にさせて頂いております。
憲法2
1 国とAを相手取った損害賠償請求について
(1)Bは、公務員たるAの「不法行為」により名誉を毀損された(「損害を受けた」)として、国家賠償請求しているものと思われる(17条)。
(2)では、Bが国のみならずA個人も相手取っている点は妥当か。17条に「国…に、その賠償を求めることができる」とあることから問題となる。
思うに、17条の問言に加え、①公務員の活動は国の活動とみなすべきであること②公務員の活動の自由を保障すべきことから、17条は国の自己責任を定めたものと解すべきであり、公務員個人への賠償請求は否定すべきである。
よって、BがA個人を相手取った点は不当である。
(3)では、国は賠償責任を負うか。
ア まず、17条における「行為」は公務員の職務上の行為であることを要する。
この点、公聴会での活動は国会での活動の延長と言え、職務上の行為と言える。
またホームページへの掲載は原則として職務上の行為とは言えないが、本問のように公的活動の一場面を切り取って載せた場合は、職務上の行為とみてよい。
イ そうだとしても、民事責任を含む法的責任を否定した51条の趣旨からすれば賠償責任を否定すべきではないか。
この点、国民の代表者(41条)たる議員の活動を最大限保障するという51条の趣旨からすれば、同条の「議院」とは場所的・地理的意味に限定されず、広く議院の活動と見られるものを含むところ、公聴会もこれにあたる。また、ホームページでの発言は原則としてこれにあたらないが、本問の場合のように公聴会での活動の様子を切り取って載せた場合はこれに含めてよい。
しかし、議員が51条により免責されるからといって、被害者が常に損害を甘受しなければならないというのは妥当でない。また、議員の活動の自由を保障するという51条の趣旨は、求償(国家賠償法1条2項参照)を避ければ達成される。
よって、51条により議員が免責される場合であっても、国家賠償の余地はあると解する。
ウ では、本件において国に賠償責任は生ずるか。その要件が問題となる。
思うに、議員の活動の自由を最大限に保障するためには、議員の裁量を広範に認める必要がある。そこで、議員が職務と無関係に殊更に事実を摘示した場合や、虚偽と知りつつ敢えて事実を摘示した場合など、極めて例外的な場合に初めて国家賠償上違法の評価を受けると解すべきである。
本問では、場所の面からも内容の面からも職務と無関係とは言えないので、Aが虚偽と知りつつ敢えて事実を摘示した場合に限り、国は賠償責任を負う。
2 弁護士会に対する懲戒請求について
(1)Bの懲戒請求は認められるか。
(2)この点、51条による免責の対象はあらゆる法的責任であり、弁護士会による懲戒も含まれる。なお、Aの発言には弁護士としての経験に基づくものも含まれるが、議員としての発言部分と区別できないし、また議員活動の保障という51条の趣旨からすれば、区別すべきでもない。
(4)以上より、Bの懲戒請求は認められない。
以 上
私が気になっている点をいくつか。
まず冒頭の部分。17条の性質に触れることの是非はともかくとして、一般には「代位責任説=公務員個人への請求否定」「自己責任説=公務員個人への請求肯定」と解されているところ、私は敢えて少数説を採りました(甲斐先生の説)。しかし、「わかってない」とみなされてしまうかも知れません。
あと、私はHPへの掲載も本件のようなケースでは公務・議員活動にあたるという立場ですが、その是非はともかくとして、仮に書くとすれば「17条の性質論」より先に、冒頭で書くべきでした。
実は再現はとっくにできあがっていたのですが、ひどい中傷をする人がいるので晒すのがおっくうになっていました。私の答案を批評するのは自由だが、人格攻撃をするのは理解し難い。
ところでここ数年間、特に19年・20年・21年と論文を受け続けてきた私の実感では、実力のある方が旧司を撤退したりローに流れたりしたことによる影響は予想以上に大きいように思います。私の20年の答案の出来は19年のと比較して決して良くなかったと思われますが、ランクは逆に上がってしまった。20年の憲法・民法・商法(特に憲法1)は絶対評価ならEかFでもおかしくなかったように思いますが、あの程度で止まっている。
そして、そうした「撤退効果」は今年も続いている可能性が高い、ということは念頭に置いておく必要があると思います。
憲法1
1 カメラマン撮影にかかるディスクの差押について
(1)司法警察員による差押により、テレビ局の報道の自由が侵害される可能性がある。
また、本件ディスクはテレビ局のカメラマンが撮影した映像を収めたものではあるが、テレビ局内部とは言え取材の過程を経たものと考えられ(報道部門から芸能部門への取材)、取材の自由への侵害も一応問題となり得る。
(2)では、報道の自由・取材の自由は保障されるか。
私は、21条により保障されると解する。なぜなら、表現の自由は国民の自己実現・自己統治の観点から重要な権利であるが、その前提となる正しい情報を得るためにマスコミの報道の自由が保障される必要があり、さらに報道を組み立てるためにその前提たる取材の自由が保障される必要があるからである。
(3)では、報道の自由・取材の自由が保障されるとして、テレビ局のような法人にも保障されるか。憲法の人権条項は自然人を念頭に置いていると思われるので問題となる。
私は、現代社会において法人が自然人と並んで重要な役割を果たしていることから、その性質上自然人に特有のもの以外は保障されると解する。この点、報道の自由・取材の自由は自然人に特有のものとは言えないから、テレビ局のような法人にも保障される。
(4)もっとも、報道の自由・取材の自由も無制約ではなく、公共の福祉(13条)による制約を受ける。具体的には、公平な裁判を受ける権利(37条・32条)、適正手続(31条)の要請の下、無実の者は処罰せず、有罪の者は確実に処罰しなければならないから、報道・取材に用いたものが刑事事件の証拠となり得るような場合には、提出を甘受しなければならない場合もある。
(5)では本件ディスクの差押は合憲か。審査基準が問題となる。
思うに、報道の自由・取材の自由も、公平な裁判を受ける権利も、どちらも重要であるから、基本的には等価的利益衡量によるべきである。具体的には、①事件の重大性②証拠の重要性③報道の自由・取材の自由に与える影響を総合的に衡量して決すべきである。ただし捜査は公平な裁判の不可欠の前提ではあるが、裁判への影響は間接的であり、また刑事訴訟の一方当事者である捜査・訴追側によって行われることから、人権侵害の可能性も否定できない。そこで、等価的とは言いつつも、やや報道の自由・取材の自由の側に配慮し、④証拠の非代替性を要求すべきである。
これを本問について見ると、多数の死傷者が出ているので、事件の重大性は認められる(①)。また交通事故の証拠としては現場写真、特に動画に勝るものはなく、証拠の重要性も認められる(②)。また本件ディスクの内容が報道済みであること、本件撮影が偶然であったこと、取材対象がテレビ局内部のカメラマンであったことなどからすれば、報道の自由・取材の自由への影響は大きいとは言えない(③)。また本件ディスクの内容は偶然撮影されたもので非代替的である(④)。
以上より、本件差押は合憲である。
2 裁判所によるディスク差押について
(1)この場合、テレビ局は一般人から取材しており取材の自由が正面から問題となる点、及び差押の主体が中立的な裁判所である点が設問前段と異なる。
(2)では本件差押は合憲か。審査基準が問題となる。
この点、①事件の重大性②証拠の重要性③報道・取材の自由への影響は同じであるが、主体が中立的な裁判所であることから、④非代替性は不要と解すべきである。
本件の場合、①②については設問前段と同じである。しかし③については、前段同様放送済みとは言え、テレビ局は交通事故について取材していたのであってディスクを入手したのは偶然ではないこと、また取材対象が外部の一般人であることからすれば、設問前段の場合よりは報道の自由・取材の自由に与える影響が大きいと言える。一方、本件ディスクは外部の一般人がオリジナルを保有しており、非代替性は無いが、上述のように非代替性までは必要ではない。以上を総合すると、本件差押は辛うじて合憲と言える。
3 まとめ
以上のように結論はいずれも合憲となったが、これは司法警察員による差押の場合は主体が中立でない反面で証拠が非代替的であった一方、裁判所による差押は証拠が非代替的ではない反面で主体が中立だったからであり、結論に至る思考過程は異なる。
もちろんツッコミどころ満載とは思いますが、私自身気になっている点をいくつか。
まず1(4)で「公共の福祉」を出したのはどうか。「公平な裁判を受ける権利」等を対立利益に掲げているから一応「人権対人権」にはなっているが…。
次に、一般には「裁判所主体→合憲」「捜査機関主体→違憲」という流れなんでしょうが、本問では「裁判所主体のケースでは外部取材」「捜査機関主体のケースでは内部取材」という「ねじれ」があるのがやっかいなところ。私なりに悩みは見せてみましたが、「一般には取材で得たものが第三者の手に渡るとなれば将来の取材対象者が協力に躊躇するようになると言えるが、『その人しか知らない話』をインタビューするような場合とは異なり、機械的に録画したものが第三者の手に渡っても、将来の取材対象者が協力を躊躇するようになる度合いはそれほど大きくない」といったようなことを書いた方が良かったかも知れません。
1 小問1について
(1)Aは売買契約を解除できるか。
(2)まず、本件取引は商人間の取引であるから、商法が適用される。
そして、本件衣料品は染色ムラ等により「販売に適さない」、すなわち取引上通常有すべき性質を備えていないのであるから、「瑕疵」(526条2項)ありと言える。そこで、526条2項により解除する余地は無いか。
ア まず、Bが瑕疵につき悪意だった場合には、Aは解除できる(526条3項)。
また、取引通念上悪意と同視すべき重過失があった場合も、Aは解除できると解すべきである。
イ では、Bが善意無重過失だった場合はどうか。
この点、本件衣料品の受領は4月30日であり、6月下旬の時点では約2か月が経過しているので、解除できないのが原則である(526条2項前段)。
しかし、当該瑕疵が「直ちに発見することのできない」ものにあたるとして、解除を求める余地が無いか(同条項後段)。その意義と関連して問題となる。
思うに、526条が商人間の取引を規律するものであることからすれば、「直ちに発見することのでき」るものか否かは、通常の能力を有する商人を基準として決すべきである。
これを本問について見ると、本件瑕疵は素人である「消費者」が気付くほどであるから、商人であれば当然気付くべきものである。よって、「直ちに発見することのできない瑕疵」にはあたらない。
(4)以上より、Bが悪意重過失の場合に限り、Aは本件売買契約を解除できる。
2 小問2(1)について
(1)AはCの支払請求を拒むことができるか。
(2)まず、AB間で原因関係が解除されているが、これによって手形関係は影響を受けない(手形の無因性)。
(3)もっとも原因関係の解除はAB間で人的抗弁となるが、人的抗弁の個別性により人的抗弁は承継されず(17条本文、77条1項1号)、AはCの請求を拒めないのが原則である。
(4)しかしAはCが17条但書の場合に該当し人的抗弁が承継されるとして、支払を拒むことができないか。「害スルコトヲ知リテ」の意義と関連して問題となる。
思うに17条但書の趣旨は、手形流通促進のため原則として人的抗弁を切断するが(民法468条2項の修正)、取得者が「満期において振出人が抗弁を行使するのが確実」と認識していた場合にまで動的安全を保護する必要は無いから、人的抗弁を承継させる、という点にある。
そうだとすれば、「害スルコトヲ知リテ」とは、満期において抗弁を行使することが確実であると知っていたことを意味すると解する。
これを本問について見ると、契約が合意解除されていた場合には、満期において抗弁を行使するのが確実と言える。よって、Cが合意解除の事実を知っていた場合には、Aは支払を拒むことができる。
3 小問2(2)について
(1)この場合も、Aは小問2(1)の場合と同様の条件で支払を拒めるということになるのであろうか。
(2)しかし、Cは割引代金を支払わず割引契約を解除されており、かかるCに手形金を取得させるのは妥当でない。また、無用な求償の循環は避けるべきである。
思うに、割引契約が解除された以上、手形所持人は前所持人に対し手形を返還すべき地位にある。にもかかわらず、たまたま手形を所持していることを奇貨として、振出人に手形金を請求するのは権利濫用(民法1条3項)と言うべきである。
よってAは、権利濫用の抗弁により支払を拒むことができる。
以 上
商法1よりもさらに問題が多いのがこの2問目。
まず1(2)の最初の1行目は、自分的には書いた記憶があるが、書いてなかったとしたらヤバイ。
あと2(4)は結論先取りで論証になっていませんね。なぜ抗弁の存在を単に知っているだけでは害意にならないかというと、単に抗弁が存在するだけの場合、満期までに解消されるかも知れないから(例えば債務不履行が発生していても、満期までに履行されるかも知れない)。実は1問目に時間をかけ過ぎてこの部分を書いている段階で残り時間10分を切っており、こんな単純な論証も思いつかなかった。
最後に、小問2(2)が求める答えは、Cが「所持人」(17条本文、77条1項1号)にあたらないとするもの((1)は「害スルコトヲ知リテ」の解釈で、(2)は「所持人」の解釈で切る)。権利濫用でも間違いではないと思いますが、一般条項の使用を「最後の手段」ととらえ、抗弁の承継で処理できる限りはそれで処理しようという判例の苦心を察すべきだったでしょう。
色々悩みましたが、再現をUPすることにしました。皆さんの評価を通じて答案の客観的な出来を把握することなく、ただおびえているだけでは前に進めませんから。それに「昨年上位A(合格者除く)でもこの程度だ」とわかれば、皆さんの励みになるかも知れませんし…(もっとも私は真の実力者ではなく「ナンチャッテA」なので皆さんの励みになるかどうか…)。
今年は五月雨式にUPしたいと思います。私の記憶、私の精神状態、それから「2ちゃんねる」の空気などを総合的に考慮して、順不同でUPしていきます。
もっとも、あまり評判が悪いようだったら途中でやめようかとも思っています。
商法1
1 小問1について
(1)XがAを取得する手続のうち、反対株主に株式買取請求を認める手続にはどのようなものがあるか。
この点、本問では「YがX社の株式を取得する」という前提があることから、新設合併(753条以下、定義は2条28号)・新設分割(762条以下、定義は2条30号)ではなく、吸収分割(757条以下、定義は2条31号)の方法が考えられる。すなわち、YからAを分離した上で、Xが吸収するのである。
(2)具体的には、吸収分割契約締結の上で(757条以下)、備置き及び閲覧(782条以下)、承認手続(783条以下)、反対株主の株式買取手続(785条以下)、債権者保護手続(789条以下)を経ることになる。
(3)この方法には、反対株主の株式買取手続、債権者保護手続等、繁雑な手続を要するという欠点がある。
2 小問2について
(1)そこで、反対株主の株式買取請求を認めないでAを取得する方法が無いか問題となる。
(2)まず、「重要な財産…の譲受け」(362条4項1号)の方法によることが考えられる(「全部」ではないので467条1項4号の場合にはあたらない)。Xは公開会社なので取締役会設置会社であり(327条1項1号)、この措置は取締役会決議で可能である。ただし本問の状況下においては、Xが大量の自己株式を有している場合に限られる。
(3)次に、株式の第三者割当(204条)の方法が考えられる。
この方法の難点は、①時価から言っても、一株あたりの会社資産から言っても、X株1株の価値は1000円が妥当であり、60万株は6億円に相当するところ、Aの価値は5億円であるから有利発行にあたる可能性があり、その場合取締役の説明及び株主総会決議を要し繁雑であること(199条3項、200条、201条1項、309条)②検査役の検査を要し繁雑であること(207条1項、199条1項3号)、である。
(4)次に新株予約権発行によるという方法が考えられるが、第三者割当の場合と同様の問題がある(238条2項、240条1項、238条3項)。
(5)また、Yが市場でX株を調達し、Xがその資金を提供するという方法もあるが、迂遠である。
3 まとめ
以上のように、各方法には一長一短あり、Xとしては長短を総合的に考慮して方法を選択すべきことになる。
以 上
問題点は色々ありますが…。
まず1(1)の「新設合併(753条以下、定義は2条28号)・新設分割(762条以下、定義は2条30号)ではなく」という部分は唐突感があると思いますが、これは最初吸収分割以外の組織再編手段も可能かな、と思って検討していた名残です。途中で吸収分割以外は本問の条件、すなわち①Yの法人格が存続する②YがX株を取得する…に合わないということに気付き、つじつまの合うように即席で加除訂正した結果がこれです。
次に1(2)では条文の引用を間違えてますね。最初は題意を「複数の手続を挙げて比較する」だと思っていて、1(2)は書かない予定だったのですが、書いている途中で「もしそれぞれの手続を細かく書くのが題意だったらどうしよう?」と思い直し、急きょ入れました。正直あまり時間をかけて勉強する暇のない分野でしたが、782条以下が「合併・吸収される側」、794条以下が「する側」の条文だということぐらいは頭に入れておくべきでした。
あと、まとめでは他のネット再現者「ずーかー」さんのように「株式買取請求の有無が何に由来するか」(権利義務の包括承継の有無に由来する)を書いた方がよかったですね。それにしても「ずーかー」さんすごいわ…。有利発行を落とした点を除けば、おそらく題意にバッチリかつコンパクトに答えた答案と言えるんではないでしょうか。
2日目は難しかった。「2ちゃんねる」では簡単だったと言ってる人が多いけどすごいな…。
再現はUPするか否か迷ってます。ところで先日コメントを下さった方、「UPしない方がいい」とのことですが、それはどういう趣旨でしょうか?私の精神衛生のため?それとも再現を端緒として私が特定されるから?
今年は昨年と異なり、試験直前に風邪をひいたわけでもなければ、試験直前2か月間ぐらい仕事に忙殺されたわけでもない。昨年よりは充実した勉強ができた。昨年より悪い成績を取る要素は無いはず。
でも怖い…。
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