事件・事故・裁判

文字サイズ変更
はてなブックマークに登録
Yahoo!ブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

ウィニー:「正当に評価」開発者、逆転無罪に笑顔

逆転無罪判決を受け、無罪と書かれた紙を掲げる金子勇被告=大阪市北区で2009年10月8日午前10時57分、竹内紀臣撮影
逆転無罪判決を受け、無罪と書かれた紙を掲げる金子勇被告=大阪市北区で2009年10月8日午前10時57分、竹内紀臣撮影

 ファイル共有ソフト「ウィニー」の開発者に、逆転無罪を言い渡した8日の大阪高裁判決。1審・京都地裁とは逆に、著作権法違反のほう助罪に問われた元東京大助手、金子勇被告(39)に「著作権侵害を勧めておらず、ほう助にあたらない」と結論付けた。しかし、事件後もインターネット上では著作権侵害の拡大に歯止めがかからず、一方で、ウィニー技術を応用したビジネスソフトも登場した。事件を置き去りにしたまま、ネット社会は進み続けている。

 04年5月に逮捕され、保釈中の金子被告はスーツ姿で法廷に入り、背筋を伸ばして判決主文を聞いた。「原判決を破棄する。被告人は無罪」。小倉正三裁判長の言葉が響くと、傍聴席の支援者らにどよめきが起きた。金子被告は時折目を閉じたり、手を体の前に組んだりしながら判決理由に聴き入った。

 判決後、金子被告は大阪市内で記者会見。弁護団や支援者約10人の拍手を受け「よかった。非常にいい判断だ。技術の価値を正当に評価していただいた」と顔をほころばせた。

 「1審判決であいまいだった点に明快に答えてくれた。5年間、何がほう助なのか分からず、何もできなかったが、判決は他のソフト開発者にもいい影響を与えると思う」と興奮気味に語った。

 一方、ネット上で著作権侵害行為が続いている状況について「開発者は万能ではない。ユーザーは迷惑をかけずにソフトを使ってほしい」と呼びかけた。

 公判は、金子被告を支援するIT関連の技術者でつくるNPO法人「ソフトウェア技術者連盟」(大阪市)のメンバーらも傍聴。連盟理事でプログラマーの佐野義彰さん(34)=東京都三鷹市=は「事件を機に開発者は萎縮(いしゅく)させられていたので、自由に開発できると思うとほっとしている。判決が確定すれば開発熱がまた上がってくると思うが、既に技術開発で海外から後れをとっているのでどれだけ取り戻せるかは疑問だ」と話した。

 ファイル共有ソフトは、ウィニー流行後も「Share(シェア)」などが開発され、現在もゲームソフトや映画などの違法コピーに悪用されている。

 一方、金子被告は逮捕後、支援者らが05年に設立したIT企業の技術顧問に就任。ウィニー技術を応用し、大型サーバーなしに映像やビジネスのデータを効率的に送信するシステムの開発に携わった。システムは、テレビ局などで動画配信などに活用されている。

毎日新聞 2009年10月8日 13時32分(最終更新 10月8日 15時19分)

事件・事故・裁判 アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド