2009-10-07
■[magazine][web]Corseka騒動まとめ

この記事は、私がtwitterの私のTL上と社内とで見聞きたり、考えたりしたことを元に、エニグモの雑誌販売サイト「Corseka(コルシカ)」についてのまとめです。ただし、twitterの発言へのリンクはあえて貼りません*1。
第1章「謎の会社、出版業界を変える?」
まず、
NIKKEI NETのIT PLUSの、インターネット:最新ニュースの10月7日 07:00更新分にニュースが掲載される。これを見つけたのは、twitterの私のTL上。
雑誌、ネットで購入・閲覧 エニグモが新サービス
マーケティング支援のエニグモ(東京・渋谷、須田将啓・田中禎人共同社長)は7日、インターネットで雑誌を販売し、内容をそのままオンラインで閲覧できるサービスを始める。利用者は好きなページを簡単に切り抜いてネット上に保存でき、送料以外の追加料金なしで雑誌の現物も入手可能。1年で20万人の利用者獲得を目指す。
新サービス「コルシカ」は開始時に約100誌の雑誌をそろえ、10月中旬までに250誌に増やす。雑誌の電子データと紙媒体の両方を定価で販売する。12月には購入した雑誌の内容を検索できる機能を追加する。
[2009年10月7日/日本経済新聞 朝刊]
サイトでは、こんな風にサービスを紹介している。
コルシカは、
デジタルデータ付きの雑誌を
取り揃えたオンラインストアです。
使い捨てメディアから、いつでも読み返せるメディアへ。
1 買ってすぐに、デジタルデータをビューわーで読める
2 デジタルデータをスクラップし、フォルダで管理できる
3 デジタルも実物も。コンテンツをフル活用できる
確かに、実物とデジタルと一緒に売ってくれたらなーというニーズはあるはず。このサービスが知れ渡った時には、私のtwitterのTL上で歓迎の声も多くみられた。
今までなかった新しいサービスを、また、あのエニグモがはじめたぞーという期待に満ちた感じで。
第2章 ユーザーメリットは低い?
しかし、サイトをよく見ていくと、ユーザーのメリットがあまりないような気が。
まず、
・実物は配送手配の手続きを自らして、配送料を支払わなければならない。
ただ、この「配送」に対するスタンスが、トップページでは、実物にデジタルデータが付いてくるという「実物が先」を主張しているのに対して、Q&Aでは、
Q 配送ってなんですか?
A コルシカは、雑誌のデジタルデータをオンライン上で閲覧することができるサービスです。
ただ、配送料をお支払いただければ商品を配送いたしますので、ご希望されるお客様はMyページの【 配送依頼 】より手続きしてください。
とある。
あれれ? 急に雑誌のデジタルデータをオンラインで閲覧させるサービスに変わっちゃってるよ?
しかも、雑誌(現物)も欲しい人にとって、あまりメリットがないことが発覚。配送料*2はかかるわ、届くのに時間がかかる*3わ。
・雑誌の内容がよくわからない。
前ページのデータを持っているのに、実は立ち読み機能は実装していない。さらに、本のページは表紙画像と雑誌名、表紙に書いてある特集名*4しか書いていない。
第3章 スキャンサービスなのでは?
この辺までは「なーんだ、あんまり使えないな」という単なるがっかりしたといだけの感想だったけれど、実際に購入してみると、デジタルデータというものが、なんとスキャン。KeyringFLASH*5をビューアで閲覧するものは、たくさんあるけれど、それと比べると画像が汚いったら、もう。しかも、広告もすべてそのまま。丸ごと。この辺から、キナ臭さが増してきた。
版元が、データを提供する場合、まずそんなスキャンデータを使うことはないのだ。「怪しいなぁ」と思っていると、販売タイトルを扱う雑誌社の担当者が「聞いてない」と言っているという声があちこちから聞こえだしてきたので、私も社内で状況を把握することに。
そのあとは、もう各方面大騒ぎだった模様。社内での報告に追われたり、いろんな方面に確認の電話を入れたり、エニグモに電凸したり、社長につい凸*6したり… ちょうどkindleが日本にも配送されるというニュースも飛び込んできたので、私のtwitterのTLはもうめちゃくちゃでした。
そうこうしているうちに、日本雑誌協会のデジタルコンテンツ推進委員会からの一報が入ったとの社内連絡を受ける。
コルシカの件に関して、各社に確認を取ったところ、出版社、権利者にデジタル化に関する許諾はとられていなかったある。権利許諾の観点から、明らかに問題があるので、雑誌協会として対応するという。
やっぱり!
しかし、出版業界の誰かが協力しなければ、このサイトは成立しない。本を仕入れないければいけないのだから。そこで、関係してくるのが取次。取次は太洋社。どうやら、販売部には「こういうサイトで売るから」との連絡はあったとか。
ここで、コルシカの規約を見る。
【コルシカ(corseka)特約】
第3条 当社の役割
1. 本サービスは、商品の仕入れおよび会員に対する商品販売をいたします。また、会員のご依頼に基づき、WEB上で閲覧用の電子データを作成およびWEBサイト上での掲載をいたします。
ここでは、あくまでも雑誌の販売が「主」。会員のニーズがあるから、閲覧用のデータを作って、webで見られるようにしているんですと表現されている。そう言われれば、取次だって協力するだろう。ただ、複写権を侵害しているが、そこに取次が気付くとも思えない。
そして、在庫の管理もどうやら1冊にごとに1件の販売というシステムを作っているよう*8だけれど、これっていくらでも在庫なんて嘘つけるのではという疑問もわく。
まとめ エニグモは確信犯? 本当に出版界を変える?
規約での表現から察すると、エニグモは実は、雑誌のデジタル化コンテンツの販売において許諾が必要なことはわかっていて、しかしそれをうまく避けるべく、このサービスを考えたのではないかと思う。とにかく、雑誌は関わる権利者が多く、その許諾をとっているだけで大変だ。*9
雑誌の立ち読みサイトが百花繚乱の中、コルシカはサイト上では、表紙しか見せていない。表紙だけなら、販促として使われるので、許諾はグレーゾーン*10。
デジタルデータへの複製に関しても、決済が済んだ時点で雑誌は購入者のものとなる。その個人だけが使うものであれば、複写権もクリアすると考えたんじゃないか。
個人的には、このことが、雑誌のデジタルコンテンツの扱いに関して、何らかの突破口となればいいのにと思う。もちろん、雑誌作りを支えてくれる多くの人の権利を守らなければならないけれど、雑誌の部数がどんどん落ち込む中で、別の形で読者に届くならば、それでもいいと思えなければ、もうどうにもならないんじゃないかとも思っている。
そういう意味で、この件はとても気になるし、雑誌協会がどういう対応をとるのかも注目していきたいと思う。
って、うまくまとまってないな。
*1:出版業界勤務の知人、友人たちの立場を考えると、この話はそれぞれ発言することが微妙なんだろ思う。ていうか、このまとめを私が作るのもどうかなーとちょっと及び腰だったり
*2:amazonでも、1500円に満たない注文の場合は、300円かかるけれど。
*3:配送依頼から5営業日以内発送とあります
*4:しかも、それも適当なんだよねー。マガジンハウスのサイトで確認するとわかる。http://magazineworld.jp/anan/1678/
*5:改訂前:KeyringPDF
*6:twitterで突撃
*7:著作権、いまだに勉強ちゃんとしてなくて、手落ちあるかも。ごめんなさい
*9:現場にいるので、この作業がなくなったら、どんなに楽だろうというのは身にしみている。
*10:一部、とても厳しいプロダクションもありあますが
デザインの現場、明日会社で読んでみよう。
ご指摘ありがとうございます。まず、スペルミス失礼しました。
確かに、“閲覧”ってストリーミングを感じさせる表現になっているので、FLASHのほうがいいかもしれませんね。私は業務ではアイ・ドックの製品は使用していないので、その辺、乱暴でしたね。
素早い対応ありがとうございます。
今回の騒動?で
エニグモのやり方はまずいとは思いますが、じゃあ雑誌社に予めネゴして出来たかと言うと、おそらく出来なかっただろうとも思います。
そういう意味でエニグモは挑戦したんだと評価しています。
まとめ記事ありがとうございます。
規約とか法律とかの“解釈”って、今まであまり縁がなくて申し訳ないのです。規約も読んでみたのですが、そこまで考えが至りませんでした。
権利保持者で訴訟しそうなのは、芸能プロダクションでしょうかねぇ…
現場の温度感からは、そんな気がします。カメラマンとかが何か言うとは思えない。だって、仕事受けるのだって未だに口約束の世界ですから。