千葉景子法相は、残留孤児の子孫として両親と来日した後に在留資格を取り消され、国外退去を命じられていた奈良市在住の中国人姉妹に対し、在留特別許可を出す方針を固めた。9日中にも本人に通達する見通し。姉妹は最高裁で退去命令の取り消し請求訴訟の敗訴が確定している。支援団体によると、敗訴確定後に在留を認めるのは、埼玉県蕨市のフィリピン人、カルデロン・のり子さん(14)のケースぐらいしかなく、極めて異例という。
姉妹は、帝塚山大1年、北浦加奈さん(本名・焦春柳)さん(21)と、大阪経済法科大1年、陽子さん(同・焦春陽)さん(19)。
姉妹は97年、母親(47)が「長崎県出身の中国残留孤児(故人)の四女」として、家族で中国・黒竜江省から正規に入国。その後、大阪入国管理局が「残留孤児とは血縁がないことが判明した」として一家の上陸許可を取り消し、03年9月に国外退去を命じられた。
父親(42)が強制収容され、一家は同年12月、退去処分の取り消しを求めて大阪地裁に提訴したが、1、2審で敗訴し、最高裁も上告を棄却。父親は06年5月に収容を解かれ、大阪府内の高校に通う姉妹を日本に残し、夫婦と来日後に生まれた三女の3人で中国に強制送還された。
姉妹は高校卒業後、大学に進学。国外退去しない場合、西日本入国管理センターに収容されるため、大阪入管で毎月、収容措置を停止する「仮放免」手続きをしていた。
カルデロン・のり子さんのケースは、フィリピン人の両親が他人名義のパスポートで来日。母親が出入国管理法違反罪で執行猶予付き有罪判決を受け、一家に退去強制命令が出た。命令取り消し訴訟の敗訴が08年9月に最高裁で確定し、今年3月にのり子さんだけに在留特別許可が出て、両親は4月に帰国している。【田中龍士】
毎日新聞 2009年10月9日 大阪夕刊