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ミュージカル『明成皇后』、熊本で公演

明成皇后殺害事件の実行犯の孫も観覧

 『どうして朝はこんなにゆっくりとやって来るのか/この胸はどうしてこんなに冷たいのか/誰かわたしに光を当てておくれ/暗い闇を照らしておくれ』

 8日夜、熊本県にある熊本学園大学。女優イ・テウォンがミュージカル『明成皇后』の挿入歌を歌った。明成皇后(日本での呼称:閔妃(びんぴ))が死を予感する歌『暗い闇を照らしておくれ』が会場に響き渡った。

 そのとき、客席にいた一人の老紳士の目に涙があふれた。明成皇后殺害事件の実行犯の孫に当たる河野竜巳さん(88)だった。1895年、景福宮に乱入し明成皇后を殺害した実行犯の一人、国友重章は河野さんの母方の祖父だ。

 ミュージカル『明成皇后』が初めて上演されてから14年にして、初めて日本での公演が実現した。8日はまさに明成皇后が殺害された日だ。事件に関与した日本人48人のうち21人の故郷がここ熊本県だった。2004年にはこの地で、学校の教職員やOBらが「明成皇后を考える会」を結成した。この日、公演を実現させる上で中心的な役割を果たした「考える会」のメンバーをはじめ、日本人の観客約700人が会場を埋め尽くした。

写真提供=エイコム

 「歌を聴いて涙が出た」。公演終了後、楽屋を訪れた河野氏がこう述べたのに対し、明成皇后役を演じたイ・テウォンが「わたしも歌っている最中、涙が出そうになった」と答えた。河野氏がプレゼントとして用意したブレスレットをイ・テウォンの腕にはめ、短いながらも温かい対話が実現した。「日本へ来て公演したら、心が温まった」というイ・テウォンに対し、河野氏は「堂々と公演に臨んでほしい。次の公演は東京でやるべきだ。わたしも必ず行くから」と答えた。

 「理解と和解のときの流れの中へ」というサブタイトルが付けられた今回の公演では、『明成皇后』のハイライトシーンを編集した映像を1時間上映しながら、イ・テウォンのほか、パク・ワン(朝鮮王朝第26代国王・高宗役)、チ・ヘグン(洪啓薫〈ホン・ゲフン〉将軍役)といった出演者が5曲の挿入歌を熱唱した。明成皇后が殺害される緊迫した場面に続き、壮大な合唱で公演が終わるや、客席からは盛大な拍手が巻き起こった。

 大学生の中川ヨシミさん(18)は「今回の公演まで、明成皇后殺害事件についてはまったく知らなかった。ミュージカルそのものを上演するときには、必ず見に行きたい」と話した。また、演出を担当したユン・ホジンは「韓日両国の真の理解と和解のために、民間レベルの交流という観点で実現した公演だ。今回の機会を通じ、双方のわだかまりが解消されることに期待している」と話している。

 ミュージカル『明成皇后』は、明成皇后殺害事件から100年を迎えた1995年に初めて上演されて以来、これまでに120万人の観客を動員し、来月28日から12月29日まで国立劇場で再び上演される。97年から出演してきたイ・テウォンと、新たに合流したチョ・アンナが明成皇后役を演じる。

許允僖(ホ・ユンヒ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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